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1820/1997

川の水とシルバーフェンリルの関わりを聞きました



「確かにそうですね」


 エルケリッヒさんの川の話に頷く。

 フェンリルの森は、体の大きなレオが泳げる程度の深さがある……フェンが溺れかけたのはともかくとして。

 人で言うと、胸のあたりまでは簡単に浸かるくらいで、深い場所では多分スッポリ頭まで浸かってしまうくらいの深さがある。

 ランジ村東の川はそこまで確認していないけど、それなりに深さがあるように見えたし、川幅は俺が見た両方ともに少なくとも数十メートル、広い所では数百メートルはあるからな。

 そこに、大量の綺麗な水が変わらず流れているんだから、豊富な水源なのは間違いない。


「一説によるとですね、その水源の多くが実はシルバーフェンリルのおかげではないか、という話もあるんです」

「シルバーフェンリルの?」


 少しだけ楽しそうに切り出したクレア。

 川を作り出し、水を流し続けているのがシルバーフェンリルのやっている事……なのか?


「はい。水を作り出すような魔法を使える存在は多くありません。私達が使うのは、作りだすのではなく集めるですから」

「それはまぁ、確かにそうだね」


 だからこそ、俺達が水を出す魔法を使ってもそれは、周辺の空気中や土中などから水分を集めていて、毒性があってもお構いなしだから、基本的に飲めない。

 一応飲める水を出す魔法というのもあるらしいというのは、以前リーザと出会って別邸に連れて帰る時にエッケンハルトさんに聞いたが、結局それは有害な物質を取り除いて水を集めるようにする、というだけの魔法らしい、とユートさんに聞いた。

 呪文も含めて、結構面倒で複雑になるため上級者というかかなりの熟練した人でやっとらしいが。

 それに対し、シルバーフェンリルであるレオが作り出す水は、文字通り飲めるくらい綺麗な水を作り出すため、根本的に違うものだとか。


「眉唾な説ではあるがな。さすがにシルバーフェンリルが延々と、水を作り出して川に流し続けるなんて事はないだろう」

「それはそうですね。一時作り出す事があっても、ずっとではないでしょうし……そもそも、川の数だけそれぞれの場所にシルバーフェンリルがいる事になります」

「ですね。その説を裏付けるように、随分前に川の上流を調べたようですが、結局湧き出している水だったという事がわかっただけで、シルバーフェンリルはいなかったそうです」


 さすが、シルバーフェンリルを探そうとしていたクレアだ。

 結果的にいなかったとはいえ、調べた話などは知っているんだろう。

 そもそも、川の水は基本的に降った雨で山の内側から沸き出すとかだからなぁ……川の数だけシルバーフェンリルが水を作り出しているなんて、荒唐無稽な話でしかない。

 だから、鉱山近くの川の水は危険だとか聞いた事くらいはある、廃坑だったかもしれないが。


「別の説では、その水が沸き出す際に濾過され、飲めるようにするのがシルバーフェンリルの仕業、という話もあるな。こちらも信憑性はあまりないが」

「ははは、シルバーフェンリルにまつわる話っていうのは、結構あるものなんですね」

「まぁ、公爵領がシルバーフェンリルとゆかりのある場所、という事もあるのだろうな」

「レオ様以外にも実際に存在し、初代当主様と共に活躍したのもあるのでしょうね。ただ公爵家にはそういった噂話に過ぎない内容は、口伝でも伝わっていませんが」

「成る程……」


 シルバーフェンリルゆかりの土地であるがゆえに、荒唐無稽な噂話が出て来るが、公爵家は全てではないにしろ正しい情報を伝えているって事か。

 初代当主様……ジョセフィーヌさんの事だけでなく、ユートさんもいるからその時々の公爵家当主様には、正確な話が伝えられるんだろうし。


「だがまぁ、シルバーフェンリルが公爵領のみならず、国南の川の水に関わっていたというのは間違いないらしいのだがな」

「そうなんですか?」


 水を作り出しているというわけではなくても、何かしらやっていたのだろうか?


「初代当主様は、水にこだわりがあったと伝わっている。そのため、親しくしていたシルバーフェンリルが綺麗な水が流れるようにしたと。漠然とではあるが、そのように伝わっているのだ。おそらくそれが形を変えて、シルバーフェンリルが綺麗な水を作り出し、川になったなどの話になったのだろう」

「水にこだわり……」


 ジョセフィーヌさんは、俺と同じ地球から来た人だから綺麗な水にこだわりというか、望んでもおかしくないか。

 綺麗な水が当たり前に使える水道に慣れる生活をしていたら、自分で濾過するようなサバイバル知識や、煮沸消毒しても飲むのに躊躇ってもおかしくないし……。

 それなら、元から飲めるような水が流れる川をと考えても……多分おかしくないと思う。

 結局川の水という時点で、躊躇う人は躊躇うだろうけど。


「だからという事もあるかもしれんが、それで川の水とシルバーフェンリルにまつわる話というのが、各所で話されていたりもするのだろうな」

「公爵領と公爵家、そこに住む者達にとってはシルバーフェンリルというのは特別な存在ですから」

「そういうものなんだろうね……うん。真偽はどうあれ、悪い方向の話でないなら、レオがこれからも多くの人に見られても大丈夫なんだ、と思えるよ。見世物にする気はないけども」


 子供と遊ぶのが好きなレオだから、集まる子供達と一緒にというのはもちろん歓迎する。

 けど、レオを見世物にして何かを得ようとか、レオを利用するような事はしたいと思えないからな。

 今も昔も、俺の大切な相棒だ。


「ワフ! ワッフ!」

「ははは、興奮しすぎると、走る速度が上がるようだから気を付けるんだぞー!」

「ワッフー!」


 俺の考えている事が伝わった、というわけではないとは思うけど何やら嬉しそうに鳴いたレオが、さらに左右に振る尻尾の速度を上げるのと共に、走る速度も上がった。

 これ以上速く走り過ぎると、馬車の負荷だけでなく御者台に座る俺やリーザへの負担や、キャビンの中の揺れなども大きくなってしまうので、一応落ち着くように注意だけはしておく。

 俺の声ですぐに、速度を落としてこれまで通りになるのは、やはり意思疎通ができるからこそだろうなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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