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1816/1996

新馬車について話しました



「……タクミ殿は、随分とリーザやレオ様に甘いのだな」


 レオ達を連れて移動する俺の後ろで、一緒についてきているエルケリッヒさんの呟きが聞こえた。

 親バカになっているというのは自覚しているが、一ミリも反省する気はない。

 さすがに行き過ぎないように気を付けようと、日々自戒していたりはするけども。

 だけどなぁ……。


「もし、エルケリッヒさんに対して、クレアとティルラちゃんがさっきのリーザみたいにおねだりしてきたら、どうしますか?」

「そんなのは決まっている、万難を排してその願いを叶えるに決まっているだろう!」


 エルケリッヒさんからは、予想通り……いやそれ以上の答えが返って来た。

 そうだよなぁ、可愛い孫娘が相手だもんなぁ、うん、エルケリッヒさん、俺とあまり変わりませんからねそれ?

 さすがに俺は万難を排してとまでは言わないけど。

 まぁエルケリッヒさんの場合は、可愛いかどうか以前にレオがお願いしたらなんとしてでも叶えようとしそうでもあるけどな。


「おや、どうされました、大旦那様。タクミ様方も……?」


 新馬車が置いてある場所、保管場所は日の当たらない小屋に入れるけど、今は点検中なのか外に出してある。

 その場所にエルケリッヒさん達と話しながら行くと、セバスチャンさんがこちらに気付いて首を傾げた。

 ここに来る用があると思い当たらなかったからだろう。


「いえ、レオが散歩……また馬車を曳きたいようなので……」


 セバスチャンさんに、簡単に事情を説明。

 新馬車の使用許可というか、また使って走らせてもいいかもついでに聞く。


「成る程、そうでしたか。様子を見ながらでしたので、日に何度も、長時間走らせる事はなかったのでちょうどよいかと」

「そうですか、ありがとうございます。――良かったなレオ、走れるみたいだぞ?」

「ワッフワフ!」


 期待からか、レオは尻尾を高く上げて左右に振りながら、舌を出して口角を上げている。

 満面の笑みに近い感じだなぁ。


「では、すぐに使用後点検を終わらせます……」


 そう言って、それぞれの新馬車の周囲で点検していた護衛さんや他の使用人さん達に、再度の使用を伝えるセバスチャンさん。

 すぐに、レオに取りつけるハーネスなどの準備などを始めてくれた。

 仕事を増やしてちょっとだけ申し訳ないな。

 エルケリッヒさんは、興味深そうに準備する様子を眺めているリーザやティルラちゃんを、さらに朗らかに眺めていた。


「そうでした、タクミ様。新しい馬車ですが……」

「何か、問題がありましたか?」


 通達を終えたセバスチャンさんが戻って来る。

 何度か走らせて、俺が乗った一度目では気付かなかった問題点なども出てきているかもしれない、と思ったが、セバスチャンさんは首を振る。


「いいえ、問題らしい問題は特にありません。整備された街道ではない場所を走らせて、さらに負荷を掛けてはいますが、大丈夫そうですな」


 最初に俺達が乗った時もそうだけど、整備されていない場所を走らせれば当然揺れも激しくなり、馬車にかかる負荷も高くなる。

 馬だと大きく疲労してしまうため、悪路も関係なく走って疲れないどころかむしろちょうどいい運動、くらいに感じるフェンリル達だからこそ試せる事かもな。

 あと、短期間で耐久テストをする意味もあるのかもしれない。


「あくまであちらの馬車は試作ではありますが、そのままでも使えそうです。もちろん、手入れを欠かさず、消耗した部品などは交換する必要はありますが」

「それはいい報せですね」


 交換する部品というのは車輪や軸の他、細々としたものだ。

 車輪はゴム製のタイヤではなく木製なので、消耗が激しいし形が変わったりもしてしまうから、定期的に交換する必要があるみたいだ。

 ゴム製のタイヤももちろん、消耗するけど交換頻度は木製の車輪の方が頻繁に行わないといけないんだろう。


「交換頻度なども、従来の馬車と共通するものですら回数を減らせる可能性もありますね」

「つまり、維持費というか手入れの費用も減らせられるわけですね」

「そうなります。もっとも、試作の段階でも制作にかかる費用が従来よりもかかってしまうので、どちらが安く済むかと言われると、場合によってとしか言えませんが」


 試作だからというのはあるだろうけど、まだ一般的になっていなくて、さらにこれまでとは違う材質やら仕組みやらを使っているため、制作費用は当然高くなっているって事か。

 部品交換の費用が安く済むとは言っても、元の値段が高くなってしまえば、一概に新馬車ばかり作ればいいという事でもないだろうな。


「ただ今はこうして、毎回使用後は点検しておりますが……その頻度は減らせるのなら、手間もかからないため長距離の移動に向いているとも言えますな」

「フェンリル達用には、ちょうどいいというわけですね」

「はい」


 整備点検の頻度が減るなら、その時間を移動に当てられるし確かに長距離移動にも良さそうだ。

 とはいえ、値段の事だけでなく重さもあるから馬に曳かせるのは、あまり向かないためなんだかんだとフェンリル専用馬車になりそうではあるな。

 馬でも曳けなくはないだろうけど、速度は遅くなるし……ゆっくりした旅路ならいいかもしれないが、結局のところ従来の馬車で良くて、新馬車にする必要性はないってところか。


「ですが馬車の制作に携わった者達によると、他にも新たな馬車に使われている技術は、応用し、改良や転用はできるだろうとの事ですので、これから従来の馬車がさらに改良。または全く別の物ができる可能性もあるようです。馬車とは関係ない物にも使われるかもしれず、なんとも楽しみですな」

「ははは、そうですね……」


 新しい物好き、というかこれまでなかった発展して出てくるのが楽しみなんだろう、セバスチャンさんは進む準備を眺めつつ本当に楽しそうにしているな。


「そういえば、レオ様やフェンリル達に曳かせるのであれば、御者はいらないのだろう?」


 俺とセバスチャンさんの話を聞いていたらしいエルケリッヒさんが、ふと思いついたように言った。


「そうですな。指示は手綱ではなく言葉で伝えればよく、手綱を持つ意味もないようです」

「まぁ一応、言葉よりも先に意思を伝える道具として、手綱が絶対必要ないとまでは言えないとは思いま

(不明な改行)すけど」


 馬と違って、言葉での意思疎通が……まぁこちらからの一方通行的な部分はあるけど、できる利点というわけだ。

 とはいえ、緊急時に言葉が出ない事も考えられるので、手綱を持つ御者が必要ないとまでは言えないからなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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完結しました!
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かなり前から、作品紹介の欄でかなりの幅を取るようになって来てるので、畳んだり作者ページに誘導とかして欲しい。 誤字報告選択場所までかなりスワイプしないとならない。
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