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1815/1997

レオからおねだりされました



「はっはっは、タクミ殿と一緒にいるクレアは、色んな表情を見せてくれるからな。今はそれが一番の楽しみだぞ」

「そんな事を楽しみにしないで下さい! まったくもう!」


 頬を膨らませて、本気ではないがプンプンとしている可愛いクレアを、ライラさんやアルフレットさん達と微笑ましく眺めつつ、全員で執務室を出た。

 とりあえず昼食前に俺がやる仕事も今はないし、リーザもそろそろデリアさんとのお勉強が終わる頃だろうからな――。



「ワフ、ワッフワフ」

「ん、どうしたレオ?」


 昼食後、できる限り欠かさないようにしている日課の鍛錬を終えて、汗をタオルで拭いていると何やらレオが主張するように鳴く。

 何かをねだるように、前足を俺の肩に乗せたり、クイクイと動かしているな。

 これは……。


「ワッフワフ。キューン?」

「やっぱりそうか。うーん、散歩なぁ……」


 マルチーズだった頃は、俺と一緒にいる時はいつも同じ時間になると散歩用のリードを咥えてきたり、今もやっているように前足や鳴き声でおねだりしていた賢いレオ。

 さすがにここではレオが咥えて来るようなリードが近くにないため、前足と鳴き声でのおねだりなんだろう。


「何やら訴えているようだが、レオ様はどうされたのだタクミ殿?」

「エルケリッヒさん」


 レオの様子が気になったのか、昼はよくマリエッタさんと庭で一緒に過ごしている事の多いエルケリッヒさんがこちらに来た。

 基本的に、公爵家としてやるべき事はエッケンハルトさんに全て受け継がせているからか、結構暇らしく、よく庭でお茶を飲みながらのんびりとフェンリルや、ティルラちゃんとラーレなどを眺めている。

 エルケリッヒさんとマリエッタさんは行動力もあり、まだまだ現役で通じそうなくらい若々しいけど、椅子に座って日向ぼっこよろしくお茶をすすっている二人の姿は、縁側のお爺ちゃんお婆ちゃんを彷彿とさせる平和な光景として評判だったりも……。

 ちょっとだけ、そんな二人を見て何十年後かに俺とクレアが同じようにしているという想像をしたり……。


「ワフゥ?」

「おっと、すまんすまん」


 気が早すぎる想像をしていると、レオが首を傾げて鳴いた。


「えっとですね、レオが散歩に行きたいそうで……庭でさっきも駆け回っていたから、十分だと思っていたんですけど」


 俺やティルラちゃんの鍛錬には、走り込みもある。

 レオにとっては大した事のない速度だろうけど、それでもほとんどいつも一緒に走っている。

 シェリーや他のフェンリルなども一緒だったりする事も多いが。

 だから散歩しなくても運動はある程度できていると思っていたし、これまではねだられる事はなかったんだけど……いやそうか、少し前のあれが原因か。


「散歩?」

「あぁ、そうでした。レオはですね……」


 とりあえずエルケリッヒさんに、レオと散歩について大まかに話す。

 まぁ要は、マルチーズだった頃から運動のために家の外を歩かせる、または走らせて運動不足にならないようにするって事だな。

 犬にとっては、ストレス解消と共に外の環境で色んな物を見て、音を聞いて、匂いを嗅いで色々と学ぶ経験にもなる。

 場合によっては、ドッグランも含めて社会性を身につけさせたり、みたいな事もあるかな。


 ただ別邸にいる頃からだけど、俺の鍛錬以外でもよく庭を走り回っていたから、体が大きくなったとはいえある程度の運動にはなっていた。

 それに、時折街や森に行くために俺達を乗せて走ってくれたし、運動不足ではないから改めて散歩が必要という程ではない……と思う。

 けど、この間レオは新馬車を曳いてくれたからな。

 あれがレオにとって、こちらの世界での散歩替わりみたいな感じで受け入れているんだろうと思う。


「それで、散歩というかレオは馬車を曳いて走りたいんだと思います」

「成る程な。我々人間もそうだが、レオ様も思いっきり体を動かしたい時があるという事か」

「ワフ、ワフ!」

「まぁ、そんなようなものです」


 運動不足はできればならない方がいいけど、さすがに思いっきり体を動かしたいと言う人は、人間全てではないと思うけど……。

 まぁエッケンハルトさんの父親だし、どちらかといえば活動的なエルケリッヒさんだから、体を動かしたい衝動に駆られる事もあるんだろうな。


「レオ様が楽しいと感じられるならば、再び新しい馬車を曳いてもらってもいいのではないか?」

「ワフ!」

「そうなんですけど……うーん」

「クゥーン?」


 エルケリッヒさんの言葉に同意するように頷き、考える俺に駄目なの? と言うように目をつぶらな瞳を向けるレオ。

 行ってやりたいのはやまやまだし、今日は差し当てってやる事がないからそこはいいんだけど……。

 ただ新馬車に関しては、使用後の劣化などの状態を見るため、毎日フェンリル達が曳いて試験を行っている。

 別邸でやっていた、使用人さん達などを背中に乗せて周囲を走る体験会が、新馬車のテストに変わったようなものだ。


 だから、今日はすでに新馬車は使われていたし、今は戻ってきて整備というか点検中だろう。

 新しい物で、一日のうちに必要もないのに何度も使うのはどうなんだろう? と思ったりしている。

 けど……。


「ワッフワフ!」


 何を思ったのか企んだのか、レオはティルラちゃんと一緒にいたリーザを呼んだ。

 仲間を呼ぶとは卑怯な!


「ママ、どうしたのー?」

「ワフワフ……」


 呼ばれて来たリーザに、鼻先を寄せて何やら耳打ちの真似事をするレオ……いや、器用なのはともかくこっちにも聞こえているんだけど。

 さすがに大きさが違い過ぎて、人間がやるような他の誰かに聞こえない耳打ちは、シルバーフェンリル様でも完全に真似はできなかったようだ。

 えーと何々、お散歩をするために俺に甘えて見せて……って言っているようだ。


「キューン、クゥーン……」

「パパ、ママや皆とまた一緒にお散歩したいなぁ……」


 レオと一緒に、上目遣いのリーザによるおねだり。

 リーザの成長著しく、こんなおねだりができるようになっているとは!

 だが、レオが誘導してそうしているのはわかっているし、そんな見え透いたおねだりに俺が陥落するわけが……!!


「うんうん、それじゃあ新しい馬車が使えないか、一緒に聞きに行こうか、リーザ、レオ。使えるようなら、一緒にまた外を走ってもらおうかなー。もちろん、他の皆も一緒だ」

「やったー! ママやパパと一緒ー!」

「ワッフー!」


 まぁ、レオだけでもそうだけどリーザも加えてあんなに可愛くおねだりされたら、陥落するしかないよな、うん。

 レオとリーザのおねだり攻撃に逆らえる存在など、この世にはいないんじゃないだろうか?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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