調査隊配置の会議をしました
「承知いたしました。そちらは第二部隊がよろしいでしょう。衛兵をやっていた者が多いので」
「よろしくお願いします」
ラクトス第二部隊と便宜上呼ぶ事にした隊は、街の衛兵さんが編成されており、捜査や見張りに慣れている人が多いらしい。
適材適所ってところなのかな?
「第二近衛からも、これまでの引継ぎなども含めて二人出します」
「はい、そちらもよろしくお願いします。フェンリルからも、引き続き数体協力をお願いしておきます」
「ワフ」
ルグリアさんからは、これまで見張ってくれていた近衛護衛さんから二人を合流させるようだ。
フェンリル達にも、同じように協力を頼んで合流してもらおう。
レオからも頼もしい頷きの返事が返って来たので、改めて言う必要があるのかはわからないが、後でフェリーにレオと共に話を通すつもりだ。
「続いて、現在調査中……というより近々で異変のあった北西方面には……」
ルグリアさん達が、主に調査をしてくれていた場所だな。
こちらにはラクトス第三部隊を合流させ、フィリップさん以下屋敷の護衛兵士さん達にまとめてもらうようお願いした。
第三部隊は、ラクトスではなく街の周辺を巡回する兵士さんが多いらしく、魔物との遭遇も想定しての調査能力が高いと、プレルスさんの評価だ。
それから第四部隊の半数は、村周辺の調査も含めた警護だ。
こちらはフェンリル達がいてくれるし、見晴らしのいい場所なので半数で十分だろうとなった。
というより、ちょっと離れた場所ならともかく、村のすぐそばは警護の必要すらないという評価だけど。
まぁ、留守番役というか後方支援役だな。
さらに中央、というより屋敷から北に真っ直ぐ森へ入った場所へは、ルグリアさん達近衛護衛さんとプレルスさんのラクトス第一部隊、第四部隊の残り半数が担当してもらう。
ここに一番人数が多く配置させてもらって、フェンリルも多く協力してもらうつもりだ。
中央から森の奥、場合によっては東西に調査を進めてもらうためで、単純な人海戦術でもある。
「奥深く、広範囲に調査すると考えると……やはりもっと人数が欲しい所ではあるが、そちらは到着待ちだな」
「そうですね。ただ、東西にも配置していれば、奥深くはともかく早めに広範囲の調査はできるかと思います」
「うむ」
中央から広がるように調査を進めれば、いずれ東西に配置した部隊と合流する事もあるだろう。
まぁできれば、配置した場所よりさらに西、さらに東の方面にも調査を伸ばしたいけど……魔物のいる森だし、兵士さん達の数に対してフェンリルの数が少ないから、これが限界か。
サニターティムの丸薬がもっと大量に作れて、フェンリルが完全にカナンビスの薬の影響を予防できるのであれば、もっと任せる事はできるかもしれないけど、さすがにそれは頼り過ぎな気もするしな。
以前のようにフェンリルが苦しむ事になっちゃいけないから、対策は万全にしとかないと。
「大まかな配置などはこんな感じですかね。ただ、森の中は皆さんもわかっていると思いますが、魔物がいます。調査も大事ですが、危険もあるという事を忘れないよう注意して下さい」
「「「「「はっ!!」」」」」
やっぱり、俺が言えるのはこれくらいで、エッケンハルトさんみたいに気の利いたことは言えそうにないな。
まぁ無駄に格好つけようとせず、背伸びしない今の俺の言葉って事でなんとか納得してもおう。
「それから、クレアからも……」
「はい」
俺が促すと、全員の注目がクレアに向いた。
そんな中でも頷いて、悠然と立ち上がって平静を持っていられるのはさすがだ。
俺だったら、多少なりとも緊張が表に出ていただろうし、実際この会議が始まってから今まで緊張しっぱなしだったからな。
声が上ずっていなかっただけでも、自分を褒めてやりたい。
「タクミさんからも言われた通り、魔物には最大限の注意を。それと共に、魔物にも異変がないかもよく見ていて欲しいの」
クレアから話すのは、昨日プレルスさん達がランジ村に向かう途中で遭遇した魔物の様子に関して。
そこから、やけに興奮していたり、不自然な行動などがないかを観察するといった事だ。
匂いを気にしていたら、カナンビスの薬と関係している可能性が高いかもしれないという、クレアが昨日気付いた事でもある。
調査の指針みたいなものだな。
それらが伝えられて、会議は解散になった。
早速各部隊に伝達をするため、ルグリアさんやフィリップさん、プレルスさん達各隊長さん達が退室する。
残ったのは、俺とクレアとエッケンハルトさん、それから一息つくためのお茶を入れてくれている、ライラさんとアルフレットさん、エルミーネさんだ。
おっと、レオも忘れちゃいけないな。
必ずしもレオが会議にいる必要はないんだけど、なんとなく聞いておきたい、一緒にいたいという意思を感じたので、ここにいる。
リーザは、デリアさんとお勉強中だから、寂しかったのかもしれない。
「……ふぅ。なんとか、それらしくできましたかね?」
新しく用意されたお茶を一口飲み、会議中の緊張を乗せて息を吐く。
一応とはいえ、調査隊のトップみたいな事になったので、情けない姿は見せられないと精一杯の虚勢で振る舞ってはいたんだけど。
話し自体はできていたはずだけど、思い返せば動きが固くてフィリップさん辺りには緊張していたのに気付かれていたかもしれない。
意外と、そういう事には鋭いからなぁあの人……後でからかわれないといいけど。
「それらしくどころか、立派だったぞ。特に淀みもなく、迷いない指揮官の姿が見えていたと思う。まぁ、もう少し自然に視線や顔を動かせていれば、とは思うがな」
「ははは……さすがにエッケンハルトさんにはバレていましたか」
エッケンハルトさんは、剣の鍛錬をしてくれるいわば師匠のような人だからな。
俺の動きから緊張している事などは、お見通しみたいだ。
「でも、とっても素敵でしたよ、タクミさん。私よりよっぽど、人の上に立つ資質があるように感じました。言葉にも重みを感じましたし、何より納得させる訴求力があったと聞いていて感じました」
「それはさすがに、褒め過ぎだと思うけど……ちゃんとできていたなら良かったよ」
皆の注目があっても、しっかりと伝えるべき事を伝えたクレアより、資質があるなんて過剰評価だと思う。
でもとりあえず褒められるのは嬉しいので、ちゃんと受け取っておいた――。
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