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1811/1996

レオはやる気のようでした



「パパー!」

「姉様ー!」


 お芝居が終わった後、使用人さん達と従業員さん達が協力して椅子などの片づけを始め、子供達もそれぞれ帰って行く。

 そんな中、一緒にいた子供達がいなくなってすぐリーザとティルラちゃんがこちらに駆けて来る。

 別の方からは、のっそりとレオもこちらに来た。


「どうだったリーザ、ティルラちゃん、楽しめたかい?」

「はい、面白かったです! 皆も、フェンリル達が戦っているところが凄かったと、言っていました」


 リーザを受け止める俺と、ティルラちゃんを受け止めるクレア。

 隣でエッケンハルトさんとエルケリッヒさんが腕を広げて、ティルラちゃんの抱き着き待ちだったのは見なかった事にするとして……。

 早速感想を聞いてみると、ティルラちゃんも他の子供達も楽しめたようだった。

 一度見た事のある子供も、今回はヴォルターさんだけじゃなかったし、やっぱり本物のフェンリルがいるのは強みって事だろう。


「んー……」

「あれ、リーザ。どうしたんだい? リーザの希望通りちゃんと最初から最後まで見られたし、ティルラちゃんたちも一緒だったのに」


 俺に抱き着きながらも、少し考えるような不満そうな、そんな声を漏らすリーザを不思議に思って聞いてみる。


「面白かったよ、面白かったんだけど……ママが出なかった……」

「ワフ?」

「レオが?」


 思わず、近くに来てリーザに鼻を寄せていたレオと顔を見合わせる。

 リーザとしては、フェンリルと聞いてレオが出るものだと思っていたのかもしれない……今更だけど、リーザにとってはシルバーフェンリルもフェンリルも、あまり大きく違いはないようでもあるから、かな。

 多分タイトルや話している事から、フェンリルが出る事はつまり、レオが出る物だと勘違いしていたのかもしれない。


「ふむ、国を揺るがす程の壮大な内容も含んでいたが、確かにそれならばレオ様……シルバーフェンリルが出なくてはと思ってしまうな」

「フェンリルだけでも十分ではあるのかもしれませんが……」


 今度はエッケンハルトさんとクレアが顔を見合わせた。

 公爵家としてという部分もあるんだろうけど、シルバーフェンリルという存在がいるのに、お芝居の悪役はフェンリルを利用すればそれだけで全てを支配できる。

 というように考えている内容だったからなぁ。

 レオというシルバーフェンリルと、フェリー達フェンリルの関係を見ていると、どれだけの数のフェンリルを利用しようとも、シルバーフェンリルが出てくればそれで全て終わってしまうとも考えられる。


 実際、フェンリル達が数十体いようとも、レオがいるだけで敵わないと思っているようだしな。

 ちなみにフェリーに聞いた事があるんだけど、例え百体のフェンリルが束になってレオに向かって行こうとも、軽くあしらわれて終わるだろう……との事だった。

 俺の貧困な想像力じゃあまり考えられないけど、あれだけ凄い動きや魔法を使えるフェンリルと比べても、シルバーフェンリルというのは絶対的な存在らしい。

 好物のソーセージや、俺が作ったハンバーグが食べられるかで一喜一憂したり、お風呂に入ると言えばしょんぼりする姿ばかり見ていると、そんなに凄いとは思えないんだが……。


「それじゃあリーザ、次はレオに出てもらおうか」

「ワフワフ」

「ほんと? 次があるの?」

「もちろん……とはすぐに言えないけど、好評だったみたいだしまたやるのもいいと思うからね。まぁヴォルターさん次第だけど、言ってみるよ」

「やったー!」


 両手を挙げて喜ぶリーザ。

 それだけ、レオの活躍が見たいらしい……これを見たらヴォルターさんには、最低でももう一度頑張ってもらうしかないなぁ。

 そのヴォルターさんも、お芝居終了後は多くの人に囲まれて、褒められているのか面白かったと言われているのか、声はこちらに届かないけどまんざらでもなさそうなので、お願いしたらもう一度やる事を断ったりはしなさそうだ。


「レオの方も、大丈夫か?」

「ワフ! ワッフワフ!」

「ははは、そうかそうか……!」


 先にレオの方に聞いてみると、出演する事には特に気後れする事なく、むしろさっきのフェンリル達よりできると言うように鳴いて、胸を張っていた。

 こうして意思疎通もしっかりできているんだし、フェンリル達にできたんだからレオにできてもおかしくないんだろうな。

 演技とまでは言わなくとも、芸みたいな事は以前から楽しそうにやっていたからなぁ。


「レオ様も乗り気なようだ。先程のも楽しめたが、レオ様が出られるのなら次も素晴らしいものがみられそうだな」

「シルバーフェンリルを見世物にしても良いのか、という葛藤があるにはあるがな……レオ様自身が良しとしているのだから、我々が何か言う事ではないが……」


 今後に期待して楽しそうなエッケンハルトさんに対し、少し渋い表情のエルケリッヒさん。

 まぁシルバーフェンリルを敬う公爵家としては、複雑なところがあるんだろう。


「タクミ様、相談なのですが……」


 皆との話を終え、夜も深くなってきたので解散となり、俺はティルラちゃんやエッケンハルトさんと、レオ達が見守る中、日課の素振り。

 手を止めて息を整える少しの休憩中、何やら少し深刻そうな表情のヴォルターさんに声を掛けられた。

 深刻、というよりは悩んでいると言った方が正しいかな?


 ちなみに素振りは、日によって単純に剣を振るうものと、敵をイメージして戦っている状況で動きを加えながらやるものとがある。

 今日は後者の方だな。


「どうかしたんですか、ヴォルターさん?」


 汗を拭きながら、ヴォルターさんに応える。


「その、次回の相談なのですが……」

「次回……もうやる事が決まっていたんですか? いえ、こちらからも頼もうとしていたのでちょうどいいんですけど……」

「はい、まぁ幸い好評なようでして。それに、チタさん達もやる気のようでしたから。フェンリル達もですが」


 見ていた人達だけでなく、出演者の皆にも好評だったのか。

 まぁ見ている人の多くが楽しめて笑顔になり称賛されたのだから、またやりたい! と思うのは無理もない、のかもしれない。

 喜んでくれたから、褒められたから、というのがきっかけや動機になるというのは往々にしてあるからな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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