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ワイン樽の輸送法を考えていませんでした



 ハンネスさんに破棄用ワイン樽の料金を払うため、鍛錬を切り上げて、荷物の置いてある用意された部屋へと戻る。

 荷物から金貨や銀貨を取り出して、ハンネスさんに渡す。


「確かに、頂きました」

「本当に、村のためにこんな事まで……ありがとうございます」


 ハンネスさんと、横にいる奥さんにまで感謝され、少々面映ゆいな。


「しかし、あの大量のワイン樽はどうやって運ぶのですか?」

「あ……」


 ワイン樽を買う事ばかり考えていて、運ぶ事を忘れてた……。

 ワイン1樽は数百キロあるだろうから、とても一人で運べる物じゃない。

 しかもそれが20樽以上……レオに運んでもらうとかも出来ないだろうし……どうしたものか……。


「うっかりしていました……運ばなきゃいけないですよね……」

「球や病気の事を看破された程の方でも、そういう事があるんですね……」


 俺が樽を運ぶ方法を考えていなかったことに、ハンネスさんは驚いた様子だ。

 推理というか、ガラス球が原因だとわかったのはレオのおかげが大きいからなぁ……俺の頭脳が冴えている……という事は無いと思う。

 それはともかく……運ぶ方法を考えないとな……こんな事なら、フィリップさんに言ってついでにセバスチャンさんに頼めないか聞いてもらえば良かったか……。

 ワインを買うと決めたのも、実際に買ったのも、レオとフィリップさんが出発した後だから、今更なんだけどな。


「どうしたら良いものかなぁ……」


 さすがにこればっかりは『雑草栽培』でどうこう出来る事じゃない。

 身体能力を上げる薬草もあるにはあるが、それで数百キロはある樽をいくつも持つなんてあり得ないからな……。


「荷馬車なら、この村にもありますが……さすがに全てを一度に運ぶ事は……」


 ハンネスさんも考えるように発言する。

 ワイン樽をラクトスに卸すのだから、当然荷馬車なんかはあるだろう。

 だが、いっぺんに全ての樽を運ぶなんてことは考えられていないのは当然だ。

 この村の荷馬車を使ったとしても、運べるのは2,3樽……良くて4樽とか5樽くらいのものだろうと思う。


「明日、商人が来るんですよね? その商人は隣の伯爵領からとの事ですが……そちらに卸すワイン樽はどう運ぶんですか?」


 伯爵領は、ラクトスよりも距離があるはずだ。

 しかも頻繁に往復するわけにもいかないから、一度に運ぶ量が多くなるのは間違いない。

 だとしたら、その方法を使えば何とかなるかもしれないと、どうやるのか自分で思いつかない事を棚に上げ、そちらの方法にすがろうとした。


「仕入れの商人は、ブドウを持って来て下さいます。そのため、商隊という形で複数の荷馬車を引き連れて来るのです。ブドウをこの村で降ろし、代わりにワイン樽を持って帰る事になります」

「……そうですか」


 考えてみれば、それは自然な事だった。

 商品を降ろして、代わりに商品を積んで帰るんだ……当然の事だな。

 そちらが特殊な方法で運んでるなんて、あるわけが無かった。


「すみません、少しずつ運ぶ事も含めて、この村から帰るまでに考えます」

「わかりました。村の方は問題ありません」


 ハンネスさんは、少しずつ運んで行く事に異論はないようだけど、俺としては早くこの村から離してしまいたい。

 管理が杜撰だと疑ってるわけじゃないが、間違って飲んだりしてはいけないしな。

 俺が買ったワインは、病の罹ったワインだ。

 もし、飲んでしまったり、何かの拍子で病に誰かが罹ってしまったら申し訳ない。

 そんな事になったら、俺が買った意味もなくなるからな。


「それじゃあ、俺は軽く鍛錬をして寝ますので」

「はい、おやすみなさいませ」


 夕食後は、少しのんびりした後すぐに寝ると言うハンネスさんに挨拶をして、家の裏に出る。

 ワインを運ぶ方法も考えないといけないが、鍛錬の方も疎かには出来ない。

 いつ何があるかわからないから。


「ふぅ……さすがにここじゃ、風呂は無いか……」


 部屋に戻り、用意してもらっていたお湯とタオルで体を拭く。

 さすがに村長の家とはいえ、貴族の屋敷とは違ってここにはお風呂は無い。

 まぁ、それがこの世界での普通の暮らしなのかもしれないけどな。

 体を拭いた後は、おとなしくベッドに横になり、寝る事にする。


「……そういえば、レオを拾ってからずっと、一人で寝る事なんて無かったなぁ」


 レオを拾った日は弱っていたため、様子を見るためにほとんど徹夜だったのは懐かしい思い出だ。

 それはともかく、育てる事にしてからずっと、寝る時は必ず俺の隣にレオがいた。

 まだマルチーズだったあの頃、同じ毛布に潜り込んで寝た事もあったし、起きたらいつの間にかお腹の上に乗ってた事もあった。

 さすがに、今お腹に乗られたら俺が潰れてしまうだろうが……。


 この世界に来てからも、ずっとレオとは一緒だ。

 クレアさんの……公爵家の屋敷では同じ部屋だし、何処に行くにも、この村に来るのもフェンリルの森に行った時も一緒だ。

 さすがに野営の時はテントに入れない代わりに、セバスチャンさん達がいた。

 考えてみれば、本当に一人で寝る事になるなんて、ここ数年で初めての事だったんだと気づく。


「さすがに寂しいなんて言ってられる年じゃないが……それでもな……」


 誤魔化すように、今までのレオとの思い出を振り返りながら、眠りに就く事にした。

 レオに苦労を掛けてしまったり、逆にレオの世話を俺がしたりと色々あったが、それらは間違いなく良い思い出と言えるもので、顔が綻んでいる自分を自覚しながら、意識が遠のいて行った。



―――――――――――――――――――



 翌日、日が昇るのと同じくらいの時間に目を覚ます。

 朝の支度をして部屋を出ると、ハンネスさんと奥さんはもう起きていて、朝食を食べ始める所だった。


「おはようございます」

「おはようございます、タクミ様。朝食が出来ておりますよ」


 ハンネスさん達と挨拶をしながら、テーブルについて朝食を頂く。

 結構な年に見えるハンネスさん達だが、やはり老人は夜早く寝て朝早く起きるというのは、間違いじゃないんだと思った。

 さすがに失礼だから、口には出さなかったが。


 朝食を頂いた後は、軽くランニングをして体を解し、ハンネスさんの家の裏に行って『雑草栽培』で薬草作りだ。

 ハンネスさん曰く、商人が来るのはいつも昼食を食べ終わった頃との事なので、それまで暇だからな。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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