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1807/1997

ルグリアさんの報告を待って庭へ出ました



「はぁ。楽しみな事があると、他がないがしろになるのはいけませんよ」


 と、俺が考えている事と似た内容をエッケンハルトさんへ言っているクレア。

 プレルスさん達は、公爵家当主としてのエッケンハルトさんをあまり見た事がないのか、それとも凛々しい姿ばかりを知っているためなのか、クレアに注意されているのを見て、ポカンとしている。

 ……この屋敷では、結構日常茶飯事だったりするんだけどなぁ。

 対外的な姿と、家庭内での姿は違うってところかな?


「っと、そんな話をしていたら来ましたね」


 何度か部屋の扉がノックされる音が聞こえた。

 噂をすればってところだろうか。

 これでルグリアさんじゃなかったら、ちょっと恥ずかしいけど……多分ノックのリズムみたいなものから、これまで何度も聞いていたのと同じと思えるので、間違ってはいないはずだ。


「ルグリアです、本日の報告に参りました」

「はい、待っていました。入って下さい」

「はっ!」


 本当は第二とはいえ近衛騎士隊長で、俺なんか偉そうにする相手ではないんだけど……。

 間違っていなかったことに内心ほっとしつつ、それらしく振る舞ってルグリアさんに入室してもらう。


「森の捜査についてですが……そちらの方々は?」


 入ってすぐ、報告を切り出そうとするルグリアさんがプレルスさん達を見る。

 興味を惹かれたというよりは、見知らぬ人がいて警戒しているって感じだな。

 まぁ、プレルスさん達は移動時の軽装のままではあるけど、一目見て兵士さんのように見える……旅装というよりは軍装に近いから、近衛という元々誰かを守る役目を担うルグリアさんが、見知らぬ人を警戒するのも仕方ないかもな。


「こちらは……」

「プレルスと申します」


 簡単にプレルスさん達を紹介し、ルグリアさんとの顔合わせを済ませる。

 これからはルグリアさんの下につくように、とエッケンハルトさんも言っていたしちょうどいい機会だったんだろう。

 ソワソワが完全に収まらない様子のエッケンハルトさんと一緒に、執務室を出なくて良かった。


「成る程、調査隊をまとめている方でしたか。失礼しました。そう言えば、屋敷へ戻る前に野営をしている者達を見かけました。フェンリル達も気にしていたようで……まぁあちらは、警戒というより単純な興味の方でしたが」

「ラクトスから到着した調査隊の人達は、多くが村を囲むようにして駐屯してもらいます――で、いいんですよね、エッケンハルトさん?」

「うむ」


 確認のために聞くと、少しだけ表情を引き締めたエッケンハルトさんが頷く。

 ただ、組んだ腕の隙間から指を落ち着かない様子で動かしているのが見えているので、完全にそわそわした気持ちを隠せていない……というのは、今は指摘しない方がいいだろう。

 調査隊の人達は、一部を屋敷で受け入れるけど数が多いので大半は村の周辺での野営となる。


 他にももっと多くの人がランジ村に集まってくる予定なので、そちらの受け入れもあるしなぁ……屋敷や、村の宿で受け入れるのは一部だ。

 ずっと外で、というのは疲れがたまるだろうし、交代で屋敷や宿で休んでくれればと思う。


「了解しました。では、調査の報告になりますが……」



 エッケンハルトさんの様子に気付いた、というわけではないだろうけど……とりあえず、プレルスさん達がいるなかでも問題ないと判断したルグリアさんが、調査報告を始める。

 とはいえ、今日も特にこれといった進展はなく、やはり森の奥や広範囲を一度に調べた方がいいだろう、という事だった。

 人が増えたし、それらルグリアさんの希望はすぐに叶うと思う。

 そうして、報告や顔合わせを終え、ようやく夕食のため執務室を出て庭へと向かう……廊下を歩いているエッケンハルトさんの足取りは、かなり軽かったためクレアが溜め息を吐いていたりもしたけど――。



 ――庭に出ると、既に夕食の準備が整いかけており、俺達が座ればすぐに食べ始められそうだ。

 そんな中、テーブルから離れた場所に数人とフェンリルが二体ほど一緒にいるのが見える。


「……ヴォルターさん? そんな所に集まってどうしたんですか?」

「あぁ、タクミ様。いえその、さすがに私一人でというのは難しいので、協力を頼んでいたところ……です」

「まぁ、確かに……子供達の前でやっていたのも、あれはあれでいいかもしれませんけど、やっぱり一人だけよりは協力者数人とやった方がいいですよね」


 一緒にいる人達の中に、ヴォルターさんがいたので近寄って聞いてみると、お芝居の協力者だったらしい。

 ヴォルターさんの近くにはヴォルグラウがいて、相変わらず仲が良さそうなのはともかくとして、そのヴォルグラウの向こう側にはフェンリルが二体。

 そちらをちらちらと気にしている様子のヴォルターさんは、やっぱりまだフェンリル相手には苦手意識というか恐怖感があるようだ。

 以前よりは、自分から近付いている分マシになっているかもしれないが。


 ちなみに他には、フェンリルのお世話を積極的にやってくれている、使用人のチタさん、それから従業員のウラさんとアルフェスさんがいた。

 ウラさんはペータさんの下で、薬草畑のまとめ役の一人で、アルフェスさんは同じく薬草畑の係になった男性だな。

 アルフェスさんに関しては、屋敷に来たのが後の方だったので直接話した回数は少ない。


「ちょっとだけ、ヴォルターさんが一人で頑張っていた様子が見られなくなるのは惜しい、と思ってしまいますけど……」

「タクミ様、公爵様からの影響を受けていませんか? 少々悪い顔になっていますが……」

「おっと」


 ヴォルターさんが裏声で女性役をやったり、フェンリルの鳴き声を真似たりと、一人で奮闘している様子はあれはあれで面白く見られそうだったのにな。

 なんて思って口にすると、ヴォルターさんからジト目を向けられて指摘。

 毒されている、と言ったらエッケンハルトさんから怒られるだろうか? とりあえず、面白そうな方向に考えや行動が向くのはちょっとだけ気を付けておいた方がいいかもしれないな。


「でもとりあえず協力者は得られたようですし、ヴォルターさんが一人で頑張る状況じゃなくなって、良かったとは思っていますよ?」


 フォローじゃないが、慣れない一人芝居よりは複数人でやった方が、物語も伝わりやすいだろうと思う。

 子供達の前でやっていたのと同じなら、場合によってはヴォルターさんの裏声などに意識が行ってしまい、集中できない可能性もあるしなぁ――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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