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1805/1996

大仰な呼称と役職になりそうなので止めました



「確証は得られてはいないが、中々鋭い着眼点だ、クレア。――タクミ殿もそう思うだろう?」

「そうですね。レオだけならなんとなく想像はつきますが、実際に俺は見ていませんし……フェンリル達もそうだとは知らなかったので。フェンリル達を見ていたクレアだからこそ、気付けた事かもしれません」

「そ、そんな……私はただ、レオ様やフェンリル達が楽しく過ごしているところや、タクミさんを見て喜んでいる様子がなんとなく落ち着くなって……その、好きなだけですから……」


 俺とエッケンハルトさんに褒められて、口の中でモゴモゴしながらも俯いて照れるクレア。

 多分これは、レオに慣れ過ぎている俺や、クレア程見ていないだろう他の人にはわからなかったことかもしれないからな、照れる気持ちはなぜかよく褒められてしまう俺もわかるけど、否定する事じゃない。


「つまりこれは、一度でもあれを嗅いだ事のある魔物を、発見できる可能性にも繋がる。調査に入る際には、それを念頭に置いておいてくれ」

「はっ! 了解しました! 魔物と遭遇した際にはその様子だけでなく、鼻などにも注意をするよう通達いたします!」

「うむ。あぁだが、当然それらに注意が行ってしまい、おろそかになってはならんからな。下手に怪我をしてもつまらんだろう。念頭に置いて注意はするが、相手は人を襲う可能性のある魔物だという考えが最優先だ。お前達をこんな事で失うのは公爵家の損失だと心得ろ」

「はっ! 公爵様のお言葉、全ての者達にしかとお伝えいたします!」


 エッケンハルトさんの言葉に、一部瞳が潤んだ隊長さんがいながらも、プレルスさん始め全員が恭しく礼をする。

 どうやら、兵士さん達が使い捨てとかではなく、失う事がそのまま損失に繋がる、つまり大事にされていると受け取ったんだろう。

 うーん、さすが公爵家の当主様……俺とは違っていい事を言うなぁ。

 俺だったら精々、怪我をしないよう頑張って下さいって言うくらいだろう。


 まぁ、その後すぐに近くにいる俺やクレアにしか聞こえない声で、「まぁもし大きな怪我を負ったとしても、タクミ殿のおかげですぐ治せるから、多少は問題ないのだがな」と言っていたから、感心はすぐにどこかへ消え失せたけども。

 クレアも肩を竦めて息を吐いていたから、俺と似たような気持になったんだろうな。

 ……とりあえず薬草作りの合間を見て、ロエや後遺症も治すロエもどきを作って備蓄しておこうかな。


「さて、進展があったかは微妙ではあるが、これからの調査に期待する。と言ったところだな。おぉそうだ。タクミ殿は今回の調査隊における事実上のトップなのだから、何か呼称でも考えるか?」


 キリッとした真面目な様子から一転、少し柔らかい雰囲気を醸し出しつつ、そんな事を言うエッケンハルトさん。

 真面目過ぎても息が詰まるからだろうか? 若干、俺自身も肩の力が抜ける気がして助かった部分はあるけど……俺に対する呼称なんてどうでもいいんじゃ……?


「そうですね……調査隊の隊長、というと各部隊長と混じってしまって呼びにくいですし……」

「連隊長、総司令……は少々大袈裟すぎでしょうか?」

「クレア、プレルスさん達まで……」


 エッケンハルトさんの言葉に乗って、クレアやプレルスさん達が真面目に考え始めてしまった。

 大袈裟な呼称とか、必要なのかなぁ……? まぁ、大人数をまとめるには、ある程度わかりやすい呼称とかがあったりするし、必要なのかもしれないけど。

 ただ連隊長とか総司令とか、完全に俺自身が名前負けしている気がするんだけど。


「いやいや、レオ様だけでなく多くのフェンリルが今ではタクミ殿の下についていると言っていい状況だ。そして、それらは森の調査に協力してもらっているのだぞ? さらに言えば、これからも集まる調査隊の者達は全てタクミ殿の下に入るわけだ。実質的には、公爵家の所属であり私やクレアの下であるとしてもな」

「数の上での規模で言えば、戦争以外では類を見ないでしょう。そしてレオ様やフェンリル達がいる以上、その戦力は一国の軍を軽くしのぐと思われます……恐ろしいですね……ですが、そんな方が上に立つのですから心強くもあります」

「ちょ、ちょっと待ってください。確かに調査隊を指揮するのは、まぁ流れとか色々とあってそうする方向に行きましたけど……レオやフェンリル達を使って、何かしようなんて考えていませんからね? あくまで、あくまで怪しい痕跡や禁止植物の使用が見られる事への調査って言うだけですから。俺の事は、これまで通り名前で呼んでくれればいいですから!」


 なんとなく、持ち上げられてどう考えても身の丈に合っていないような呼称になりそうだったので、待ったをかける。

 クレアも真面目に考えているようだし、誰も止めないから俺が止めないといけない。

 こんな時他に誰かいたら、と思ったけど大体の人はむしろ乗っかりそうだったから、少数で話し合いをしていて良かったのかもしれない。

 特にユートさんは悪乗りしそうだし、エルケリッヒさんも結局はどちらかというとエッケンハルトさんに近い性質だからなぁ。


「そもそも、俺の名前は割と珍しい……かもしれない部類ですから、呼び間違える事や他と混同するような事もないでしょう? だから、変わらずでお願いします!」

「ふむぅ、そうか? 確かに、この国ではタクミという名は珍しいと言えば珍しいか」

「珍しいというか、他に同じ名の方はいませんよお父様」

「私も、そうですね……」


 少し残念そうなエッケンハルトさんはともかく、日本名のタクミという名はこの世界というかこの国では十分に珍しい、いやクレアやプレルスさんも同意しているように、他にはいないと思われる。

 日本ではタクミという名は特別珍しいと言う程じゃないけど。

 ユートさんも日本名だけど、地球の日本から見た海外名のような人ばかりだから、かなりわかりやすくて覚えやすいし間違えたりしないだろうしな。


「私の名前は、結構よくあるようですけど……お父様は、似ている名前は多いですが全く同じなのは少ないですよね?」

「そうだな。まぁ私の場合は省略されたり、一部がという事が多いか。往々にして、貴族が治める領地ではその領主一族の名が一部だけ使われたりするな」

「そうなんですか?」


 何故か話が名前に関する方向に逸れて行く。

 とりあえず、俺に対する呼称がうやむやになりそうだったので、それに乗っておこうと首をかしげて見せた――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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