娯楽について考えました
「それから……クレアお嬢様やリーザ様がおられる前で言うのもなんですが……」
「ん?」
そう言って、俺にだけ聞こえるように声を潜めるセバスチャンさん。
クレアはなんとなく察しているのか、複雑な表情を、リーザはよくわからず首をかしげるだけだ。
エッケンハルトさんは……なんとなく気まずそうに、顔を逸らしているけど……?
「女性が男性を歓待する、そしてその逆もあるようですな。お酒なども絡んでいるようです」
「あ~……成る程」
要はお酒を飲みながら、異性との会話などを楽しむ所って事だろう。
逆もあると言うのは少し驚きだけど、そういう商売というか娯楽があるというのは納得だ……日本というか地球にもあったし、のめり込む人もいるらしい。
興味がないわけじゃないが、行った事はないしむしろ苦手な方面だったりする。
そもそもあまりお酒が好きじゃなかったのも、その一因かな。
「まぁ大まかにはこれくらいでしょうか……」
「なんとなく、子供が楽しむものが少ない気がしますね」
他にも色々と娯楽、趣味にも関わるけど遊びに関する話をセバスチャンさんから聞いた。
けど大体が、大人が楽しむ物ばかりで子供が楽しむための者が少ないと感じる。
まぁスポーツというか、競技性のあるものは老若男女問わず楽しめると言えるのかもしれないが……。
「タクミさんがいた所では、どんな娯楽があったんですか?」
「そうだね……」
セバスチャンさんが生き生きとした説明を終えて、クレアから興味深そうに尋ねられる。
エッケンハルトさんやセバスチャンさんも興味があるらしく、こちらを見ていた。
「ゲーム、が多かったかな?」
「ゲームですか……?」
「えっと……一定のルールを決めて皆で競い合う。もしくは協力か一人で目標を達成する遊び、かな?」
ゲームと言っても一概には言えず、色々なものがあった。
まぁスポーツもゲームと言えばゲームだし、デジタルなガジェットを使ってやるゲームや、サイコロと駒を使うアナログなゲームもある。
トランプやリバーシ、将棋や囲碁、チェスなんかもゲームと言えるか。
「色んな種類があって、全部を一人では遊びつくせない程だったよ。俺はあまりやらなかったんだけどね……」
近しい人や、俺の年代ではやっている人がかなり多かったから、むしろ俺の方が珍しかったんだと思うけど。
デジタルゲームは近しい人の影響で、ある程度やった事はあるし、ユートさんの知識にも少しくらいはついていけるくらいではあるけども。
「多分、俺と近い年齢で娯楽に興じるというか、ゲーム自体に一切触れた事がないと言う人の方が珍しいと思うよ。というか、いないんじゃないかな?」
「そんなに、娯楽が溢れていたんですね……」
「少しだけ聞いた事があるが……そういうものなのか。面白そうだ」
「でも、大変な事もありましたよ? お金がかかる物もあるので、それでのめり込んでしまう人とか。知らないと仲間外れにされる事だってありました」
同じゲームをやる友人とかで、仲間意識ができるのはいいんだけど、逆にそのゲームに一切興味のない人を省いて、なんて事もあるからなぁ。
絶対的にゲームをやるのがいい事だとは言えないだろう。
ゲームばかりやっていたら駄目になる……みたいに昔は言われていたと聞いた事があるが、そこまでではないんだけどな。
「まぁでも、頭を使って考える物も多くて……ちょっとした勉強になる物もあったと思います。ものによっては、精神的、身体的にも鍛えられる物もありますし」
将棋やチェスとかは、頭で考える練習にもなっていいと思うし、それこそスポーツなどはやる方に回れば体を鍛えないといけないからな。
鍛える方向性というか、やり方はスポーツによって違うけど。
「ふむ……タクミ殿が知っている範囲だけでも、かなりの娯楽がありそうだ。それを、こちらでやる事は?」
「うーん、簡単な物から難しい物まで、それこそ千差万別ですね。この先はわかりませんけど、今すぐは絶対できない物とかもあります」
デジタルゲームとか、電気が使われていない場所ではどうしてもできないだろう。
まぁもしかすると、魔力で代用できるのかもしれないが……明りとかがそうだし。
なんにせよ、そういった物の開発を俺ができるわけではないし、他で言うと道具が足りない物ばかりだ。
やるならアナログゲームだな……トランプ、チェスやリバーシ、将棋と囲碁などは厳密にやるのでなければ簡易的な道具を作るのもそう難しくはないだろうし。
「ただ、あるのは知っていても、ルールの詳細を知らない物もありますから、限定されますね」
一番簡単なのはトランプとリバーシだろうか?
トランプはむしろ、道具を作って自分達でルールを新しく作り出してもいい物だしな。
リバーシは単純……あ、いや、あれ盤面のマス目っていくつだったっけ? って、リバーシはむしろ厳密には決まっていないんだったか……?
将棋はなんとなく知っているけど、駒の細かい動きなどまでは知らないし、こちらもマス目がどうなのかもなぁ。
囲碁とチェスに至っては、なんとなくの全体像を知っているだけで、ルールとかよく知らないし。
「んー……本当にちょっとした物くらいしか、作れそうにないですね」
「むぅ、そうなのか。タクミ殿がいた世界の娯楽というのも興味があったんだが……」
ユートさんと話せば、少しくらいは俺の知らない遊びもわかるかもしれないが。
どちらせよ、大掛かりな遊び道具は作れそうにないな。
「とりあえず、まずは子供達が遊べそうなものを考えてみます」
「子供達か……私も楽しみたいのだが……」
「お父様……はぁ……」
自分が楽しめる娯楽を求めていたかもしれないエッケンハルトさんには、残念かもしれないが、そもそも子供達の遊びに関して気になった事が発端だからな。
まず子供が楽しく遊べる方が優先だろう。
というか、エッケンハルトさんは忙しくて、そこまで遊びに熱中する時間がないと思うんだけど。
大人ができる娯楽かぁ……そういえば、ビリヤードとかボウリングとかあったな、大人だけが楽しむ物じゃなくて、子供でもできるけど。
ビリヤードは難しいかもしれないけど、ボウリングくらいならなんとかなるか? いや、完全な球体を作るのが難しいか。
魔力やギフトを調べる魔法具の、水晶球みたいなのがあるから作れなくはないんだろうけど、特注品とかで高価になりそうだ。
一部の貴族などお金を持っている人が楽しむために、というのならいいのかも。
でもとりあえず、簡単に作れそうな子供が遊べるものからだな――。
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