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1800/1997

説明と言えばセバスチャンさんでした



「何を言う! 娯楽というものが民に必要な事はわかっている。だが、公爵領は全体的な治安という意味では良い方ではあるが、そういった娯楽という余暇を楽しく過ごすためのものが少ないのだ。それが、タクミ殿とヴォルターのおかげで産声を上げようとしている。これが楽しみにせずに何を楽しみにすると言うのか」

「さすがに、少し大袈裟だとは思いますけど……そう言えば、娯楽らしい娯楽も少ないですね」


 子供達で言うとおままごとみたいな遊びはあるけど、娯楽と言えるような物を見た記憶がほとんどない。

 あってもそこらに落ちている木の枝とかで、チャンバラごっことかくらいか。

 そのために作った物ではなく、適当にあった物を使ってみるくらいだ。


「娯楽、遊びというのはこれまで、国全体や公爵領ではあまり重視されていなかった分野ですからな」

「……セバスチャンさん、いつの間に」


 ニョキっと生えた……という言うわけではないけど、気付かぬうちに俺の背後から言葉と共にセバスチャンが現れた。

 段々と突然な登場の仕方にバリエーションが追加されている気がするな。


「ほっほっほ、私はただ少々旦那様方の戻りが遅いと、探しに参っただけでございますよ」


 そう言って笑うセバスチャンさんだけど、多分説明できそうな気配のような何かを感じ取っているような気がしてならない。


「ふむ、そう言えば大分屋敷を空けたままにしているな。どれ、話は戻りながらにしようか」

「お父様が、村の様子を見て回りたいと仰ったからでしょう? 私も、話はしますが直に見て回る事が少なかったからと、賛同しましたが」


 二人は、俺が考えた通りに村の様子を見るため、歩いて回っていたようだ。

 差し詰め、同行しているプレルスさんは一応の護衛役とかそんな感じだろうか。

 ともあれ、言葉通りならエッケンハルトさん達を探しに来たセバスチャンさんと共に、肩を落としつつあまり期待させないように、と俺に期待しているような視線を向けるヴォルターさんと別れ、レオやリーザも連れて屋敷へと向かう。

 期待しないように期待するって、中々器用なとは思うけど……ヴォルターさんとしてはエッケンハルトさんの期待値が高くなりすぎるのが怖いんだろう。


 あくまで、お芝居も物語も、子供相手にするようにしたものだからなぁ。

 エッケンハルトさんが、実際に劇を見た事があると聞けば期待外れになるのを恐れるのもわからないでもない。

 この世界、この国の演劇がどのくらいのものかは知らないけど……なんというか、貴族が嗜む娯楽のイメージはある。

 クレアが見た事がなく、エッケンハルトさんも一度だけと言うなら、実際にそういうものではないのかもしれないが。


「さて、タクミ様に向けての説明は久方ぶりな気がしますが……」

「そう言えばそうかもしれませんね」


 知らない事や知りたい事の多くは、最近だとセバスチャンさんもわからない事が多くなってきているからだろうか。

 大体はユートさんが教えてくれていたから、セバスチャンさんからの説明というのは、減っているのは間違いない。

 まぁ俺だけでなく、調べた事の報告という事でカナンビスを含む香りについてに関しては、話してもらったりはしたけども。


「娯楽についてでしたな。多くは、行き過ぎない程度にという前提ではありますが、以前タクミ様にも話したようにちょっとした賭け事などが行われております」

「そうでしたね」


 フェリーとフェンが魔法なしのぶつかり合いで、どちらが勝つかに賭けていた事もあったっけ。

 まぁ行き過ぎない程度と言っても、はまり込んでしまう人もいるだろうし、危ういとは思うけど……完全に禁止するよりは、隠れる必要性が低くなる分見通しは良くなるのかもしれない。

 ギャンブルに対して、肯定的か否定的かと問われれば否定的ではあるが、絶対に禁止しなくては! という程ではない。


「節度ある遊びに興じる程度で、公爵領では他に娯楽という分野を広げておりません。つまり、娯楽らしい娯楽はないのです。ですが反面、ある程度それで満足させているという証左でもあります」

「まぁ、娯楽がなくても不満がないのなら、満足していると言えるんでしょうね」


 見方によっていろいろな意見がある事だとは思うけど、と心の中で付け加えておく。

 なんにせよ、他領よりは治安がいいと聞く公爵領で、理由の一つに娯楽が少ないし広めていないから、というのはもしかしたらあるのかもしれない。

 まっとうに娯楽に興じるだけならまだしも、人間というのはそれを利用して悪い事を考えたりもするからな。

 さらに娯楽と賭け事が合わされば、場合によっては諍いに発展する事だって……ってまぁ、何がどんな影響を及ぼすかなんて、あまり頭が良くない事を自覚している俺にはわからないか。


 日本では、お金を使わずにできる娯楽が溢れすぎていた半面、お金をかけすぎる人もいたり等々、良い面も悪い面も簡単に見られた。

 俺自身は何かしらのニュースなどを見るくらいで、のめり込まない程度にゲームをやる以外は娯楽らしい娯楽に興じた覚えがあまりなかったりするが。

 そもそも、学生の頃はアルバイトにレオの世話、就職してからは仕事と仕事にレオの世話で、のめり込む時間なんてなかったんだが。

 ちなみに仕事が二つあるのは副業というわけではなく、単純に仕事ばかりだったという意味だ。


「ですが他領には娯楽に力を入れている方もおられましてな?」

「そこで劇をやっているんですか?」

「演劇はというのは私は見た事がありませんが……そのようです。演劇を行う者達を手厚く保護しているとか」


 まぁ芸能と考えれば、それを貴族や大きな商人……商会かな? とかがスポンサーになっている、というのはわかる。

 お金がかかるらしいからな。


「その貴族領だけでなく、王都などでもやっているようですが……他には、何かを競い合う事なども行われているようですな」


 競い合う、というとスポーツみたいなものかな? スポーツはやる方も見る方も、娯楽になり得るから。

 野球やサッカーとかではなく、もっと直接的に戦うようなものの気がするけど。

 賭け事があるのなら、それも絡んでいそうだ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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