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1795/1996

フェンリル輸送隊の準備が終わりました



「それじゃあ隊長さん、フェンリルの方はいつでもいいようなので、数や諸々の相談を……あ、一応エッケンハルトさんにも報告が必要、かな?」

「公爵様には、私が報告に伺いましょう」

「わかりました、お願いします。――それで、馬車の数は……」


 エッケンハルトさんやクレアには、承諾してもらった旨の報告をプレルスさんに任せて、俺は輸送隊長さんとフェンリルの数などを相談。

 ラクトスへ向けてはできるだけ早く出発するみたいだし、急いで準備しないといけないからな。

 馬車一台あたり一体でいいとはいえ、ラクトスからこちらに向かう際には重い荷物を積んでいるから、できれば二体がいいだろう。

 馬車の数から、フェンリルの必要数を相談したのち、フェリーに伝えて一緒に付いて来ていたフェンリル達の中から選抜。


 この時、何故か選ばれたフェンリルがレオから軽く一吠えされて、ブンブンと激しく尻尾を振っていたうえ、嬉しそうな表情や雰囲気を醸し出していたので、激励を受けたようなものなのだろう。

 レオもそれらしい事を言っていたみたいだし。

 フェンリル達にとって、シルバーフェンリルのレオから激励を受けるのは特別な事、なのかも?


「準備は、一応滞りなく進んでいるってところかな……」


 隊長さんとの相談やフェンリル達の選抜を終え、馬車を曳くために繋がれていくのを眺めながら呟く。

 新馬車を試験した時は、馬用ではなくフェンリル用に作られたハーネスだったけど、今回は馬用を流用している。

 俺からすると、馬にも体格が多少違う事があるだろうから、調整できるようにはなっているんだろうけど、馬よりも高さが低くなるフェンリル達に取り付けられるか、という不安があったんだが、何とかなったようだ。

 元々、ある程度余裕があるように作られているらしい。


 ただ一部のフェンリルは少しだけむず痒いような、ちょっと慣れない感があるようで、しきりに体に取り付けられたハーネスに鼻先を近づけたりしていた。

 ただこちらはフェリー曰く、すぐ慣れるから気にする程じゃないと言われたため、大丈夫だろうと安心。

 獣は慣れない物を体に着けるのを嫌がったりもするから、とちょっと不安だったし、レオも特注のハーネスはリード替わりで気に入ったらしいが、ラーレに着けるような鞍は全力で断られたからな。


 マルチーズだった頃、冬に寒いかもと小型犬用の服を着せようとしたら、すごい勢いで暴れて俺から逃げた事もあったっけ……。

 仕方なく、エアコンで室内温度を保つ事にしたけど。


「……予想以上に、馴染むのが早いなぁ。兵士さん達はそれでも、まだ少しぎこちないけど」


 兵士さん達の言う事をちゃんと聞いて、おとなしくしているフェンリル達は俺から見ても兵士さん達の中に溶け込む……という程ではないが馴染んでいるようにも見える。

 まぁ全ての兵士さんが慣れたというわけでもなく、そちらはぎこちない人もいるようだけど。

 ともあれ、そんな光景を眺めながら先程フェンリルが焚き火の近くでくつろいでいたのは、結果的に良かったのかもしれないと思う。

 目と鼻の先に来たフェンリルが無警戒で、ただ温まってくつろいでいるだけ……というのは、兵士さん達にとって少しは恐怖心を拭える光景だったのかもしれないな。


「ただ、フェンリル達の方に警戒心がないのはいい事なのか悪い事なのか……」

「ワッフ、ワフワフ」

「グルルゥ、グルゥ」


 人に無警戒で近付くのは、野生とか魔物としてどうなのだろう? と少し疑問に思っている俺に、レオとフェリーが一緒に鳴いて色々と伝えてくれる。

 曰く、匂いなどで悪い人間がいないかどうかはわかっているからこそ、警戒はしていないのだという事。

 変な臭いを漂わせている人もいないし、むしろ怖いという感じが伝わってくる匂いを出している人が多いので、だからこそ警戒せずにフェンリル達から近付いているらしい。

 結構、俺以上に色々と考えているんだな……というか、匂いで怖く感じているとかそういうのもわかるのか。


 匂いに限らず、犬って空気を読む能力に優れているらしいし、狼というか魔物のフェンリルにも備わっているのかもしれない……群れて集団行動する習性だからかも。

 レオは元マルチーズだったから、その時の感覚を持っているのだろう。

 ……シルバーフェンリルだから、どんな能力が備わっていてももう驚かないが。


「では、これよりラクトスに向かって出発いたします。――皆、タクミ様、レオ様、フェリーの協力に感謝を!!」


 準備が整い、輸送隊長さんの号令と共にザザッという音が聞こえるくらい一斉に、輸送隊の面々が俺達に向かって敬礼。

 とりあえず、こういう時どうすればいいかわからなかったので、頷いて返すだけにしておいた。

 エッケンハルトさんの真似だ。

 ……兵士さん達が身近にいる生活がしばらく続きそうだし、どういう反応をしたらいいのか、クレアやエッケンハルトさんに今度聞いておかないとな。


「総員、騎乗!」


 俺の頷きを見てか、続く輸送隊長さんの号令で全員が馬に騎乗、もしくは馬車に乗り込む。

 馬は全て馬車を曳かないので繋がれておらず、人を乗せてラクトスまで向かうようだ。

 それにしても……ただ乗り込むだけと言えばそれまでだけど、一糸乱れぬ動きは壮観だった。

 こういう訓練されて洗練された動きって、見ているだけで気持ちいいものだなぁ。


「グルゥ、グルル?」

「ワッフワフワフ」

「ふむふむ……いやー、さすがに馬車を曳いてるのにその背中に乗るのはなぁ。フェリーが言うからにはできるんだろうけど、その辺りは追々だな。今回は様子見というか試験的な意味合いも強いから」

「グルゥ」


 輸送隊の皆さんを眺めていると、首を傾げて不思議そうにしたフェリーに尋ねられる。

 レオによると、どうせなら背中にも乗ればいいのにと言っているみたいだが、さすがに馬車を曳いているフェンリルの背中にさらに人を乗せるのはな。

 と考えながら答える。

 とりあえず今回それはなしという事で、納得したようだった。


 馬車を曳いていないフェンリルにも兵士さん達が乗っていないのは、気にしないことにする。

 まだ完全に慣れていないようだし……多分、一糸乱れぬ動きもフェンリルの背中に乗るのが加わったら、乱れそうだからな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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