フェンリルの扱いについて相談しました
フェンリル用にハンバーグの作り方を輸送隊長さんに教えたが、ソーセージも似たような作り方ではあるので、ハンバーグを作る事自体は問題ないようだ。
もちろん、兵士さん達もハンバーグを作って食べても構わないし、こちらは大丈夫そうだ。
さらに、フェンリル達が肉の保存のため凍らせてくれると聞いた時は、隊長さんもかなり喜んでいた。
わざわざ魔法で凍らせるのは、魔力とかの関係上、兵士さん達からしても結構な手間らしいからなぁ。
フェンリル達がいれば現地調達ができなくもないけど。
これで、実際にやってみないとわからないが、大体ラクトスとランジ村の往復は五日前後に短縮されるだろうとの事だ。
……俺の予想だと、慣れると最終的に四日以内で往復できそうではあるし、急ごうと思えばもっと短くなりそうだけど……まぁ状況次第だな。
短縮できれば、それだけ兵士さん達も休息する日が 作れるだろう。
「ただかなり食べるので……こちらから持ち掛けた話ですし、食費はこちら持ちでも……」
細かいと言われようが、どうしても気になるフェンリル達の食費。
人の数倍は食べるからな……結構大変だし、期間が長くなればなる程積み重なる。
「そのくらいは、タクミ様に気を遣ってもらわなくとも……移動の日数が短縮できるわけですし、馬の費用が浮く事を考えれば問題ありません。で、ですが一応参考までに、どのくらい……?」
「えっとですね……」
「そ、そんなに、ですか……いえ。も、問題ありません!」
ちょっと気になったのか、窺うような表情になる輸送隊長さん。
とりあえす屋敷で過ごすフェンリル達一体の食費……キースさんが打ち出してくれたものだ。
そこからさらに、走り続けるため屋敷の敷地でゴロゴロしているよりはかかるだろうと、ほんの少し上乗せしたのを聞いた輸送隊長さんは、さすがに驚いていたようだ。
まぁ本当に問題ないようならいいんだけど……大丈夫かなぁ?
ちなみに、人が一食当たりにかかる平均は銅貨七、八枚程度らしい……あくまで平均だが。
それに対しフェンリルの一食は銅貨三十枚から四十枚で、さらに上乗せもありだ。
おやつはなしにしても、三食で日数も加わって積もって行けばかなりの金額になってしまうという……。
一体だけならまだしも、それが十体前後を輸送隊に預けるとなると、予算的にも結構厳しいかもしれないなぁ。
毎回往復の度に、馬を替える費用がかかる事と比べるとどうなるかはわからないが……。
「あと休憩については……ん、フェリー?」
「グルゥ、グルルゥ」
「ふむふむ、成る程。人間と……つまり兵士さん達と同じ休憩でいいんだな? あと、食事さえあれば大丈夫と。まぁ食事をする時も休憩と考えれば、大丈夫なのか。とりあえず、最初のラクトスへ向かう時は馬も一緒だから、休憩は頻繁に取る事になるだろうけど……」
フェンリルの事を伝えていると、フェリーから何か言いたい事があるようでリーザとレオに通訳してもらうと、俺が考えているよりも休憩は必要なさそうとの事だった。
まぁ、フェンリルの森の奥から別邸まで、休みなしで走り抜けられるらしいから、ただ走るだけならレオと同じようにランジ村とラクトスの間を一気に走るくらいはできるのかもしれない。
あとフェリー自身も、一度通った道だからある程度ラクトスとの距離がわかっているようだ……今更ながらだし、上から見ているように思われるかもしれないが、野生はともかくフェンリル達は賢いなぁ。
「その程度の休息だけでよろしいのでしょうか?」
「グルゥ!」
「本当に大丈夫だそうです。むしろ、もっと走り続ける事もできるみたいですね。まぁ今回はさっきも言った通り試験的な部分もあるので……様子を見ながら休憩するくらいでいいと思います。後は時折撫でてあげれば喜んでくれますよ」
「馬とは全然違うのですね。これは、かなりの革新と言えるかもしれません。もちろん、タクミ様やレオ様の協力あってこそだとは思いますが……フェリー様、でしたか」
「グルゥ、グルゥグルル」
「えっとね、パパ……」
「ふむふむ――フェリー達には、様などの敬称は特にいらないそうです。というか、敬称とかわかるんだな……まぁ本来はレオもそうなんだけど」
ちゃんとか、親しみやすくするためならともかく、フェリーからすると敬う意味もある様付けはあまり好きじゃないみたいだ。
レオもそうなんだけど、まぁそちらは公爵家のしきたりみたいなものも関係するし、レオ自身も気にしていないようだからそのままにしているが。
ともかく、フェンリル達はそう言ったことを好まない、むしろ仲間とかそういう考えもあるのかもしれないが、単純に敬称を付けないようにとの事だ。
絶対にやめてくれ、という感じでもないようだからそれが呼びやすいのなら、それでもいいのかもしれないけどな。
「畏まりました。それではフェリー、でよろしいでしょうか?」
「グルゥ!」
肯定するように頷くフェリー。
その呼び名自体も、リーザが付けたものだからだろうか、レオの背中に乗ったままちょっとだけ嬉しそうに耳をピコピコ動かしていた。
「では、フェリー。よろしくお願いします」
「グル! グルル、グルゥ」
「すぐに、役目を任せるのを選ぶってー」
「わかった、ありがとうリーザ」
手を伸ばし、伏せをしているレオの背中に乗っているリーザにお礼を言いながら頭を撫でる。
フェリーはすぐ動き出し、差し当たって現在焚き火の近くでくつろいでいるフェンリル達に、喝を入れに行ったようだ……大きな吠え声が響いていた。
兵士さん達が驚くから、程々にな。
ちなみに、焚き火の方には行かず俺達の後ろに控えていたフェンリル達は、役目と聞いてか、尻尾を振って嬉しそうにしていた。
色々と接する中で感じたんだけど、何かしらの役目や用を任せられる事をフェンリル達は喜んでくれるみたいだ。
役に立っているという実感みたいなものが、嬉しいのかもしれない。
フェンリル厩舎を作る際の手伝いも喜んでやってくれたし、今でも村の細々とした事の手伝いを率先してやっているようだからな、そういう性質なのかも。
野生とは程遠い気がしないでもないが……それだけフェンリル達が親しみを持ってくれていると考えておこう――。
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