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くつろぎフェンリルが発生しました



「成る程、先入観なく……いや違いますね。何度かレオやフェンリル達を見て、人を襲わずおとなしいのを見ていればってところですか……そうなると、利用してもらえる希望が持てますね」


 プレルスさんが言った、フェンリル達を連れてラクトスを通ったと言うのは、ブレイユ村からの帰りや、ランジ村の新居に移動する際の事だろう。

 後者は、パレードのようになってしまって、ちょっとした嫉妬心に近い気持ちからレオの背中でずっとクレアを姫抱っこしていたのは、今思い出すと恥ずかしくなってしまうけど、それはともかくだ。

 話を聞くだけでなく、ちゃんと自分の目で見てフェンリル達が危険な魔物じゃないと判断できれば、少しずつでも理解してくれる可能性はあるのかもしれない。


 絶対じゃないだろうけど、ラクトスの近くでは俺が考えているより、すんなり受け入れてもらえるかもしれないな……以前エッケンハルトさんに頼まれた事ではあるけど、何度もラクトスにレオと行っていた甲斐があったとも言えるか。

 そんな風に、駅馬についてプレルスさんと話しているうちに、ランジ村の入り口を越えて兵士さん達が野営の準備をしている場所の一つに到着した。


「思っていたより素早く準備が進んでいますね」

「はい。こういった野営をするための訓練というのもありますから」


 今回のように、街や村の外での活動をする事もあるからだろう、兵士だからって戦闘訓練をしているばかりってわけでもないんだろうな。

 村からあまり離れていない場所で、村を囲む柵から百メートル程度がその一つだ。

 既にテントが無数に設置されており、早い所では火起こしも終わっている所もあった……隊の中の班みたいなものなんだろう、数人から十人程度の組がそれぞれ一緒に行動して野営の準備を進めているようだった。

 他にも一定間隔を開けてランジ村を囲むように、いくつか密集するテントを点在させているようだな。


 警備的な意味合いもあるのかもしれない。

 一部は屋敷で受け入れるとはいえ、ひとまずランジ村に来た二百人分の野営準備が進んでいるのは壮観でもある。


「ガフ」

「ガウ」

「ん?」


 少しだけ周囲のテント群を眺めていると、俺達の後ろをついて来ていたフェンリル達のうち数体が、兵士さん達の起こした焚き火へとのそのそと近付いて行った。


「タ、タクミ様……? あれはどういう……」

「何かしようってわけじゃないと思いますけど……大丈夫だよな、レオ?」

「ワフ!」


 動き出したフェンリル達にプレルスさんや、もう一人の百人隊長さんも戸惑っている様子だ。

 俺もフェンリル達が焚き火の方へ行くとは思わなかったので、ちょっと不安になってレオに聞いてみると、レオからは大丈夫と保証するような自信に満ち溢れた頷きと鳴き声が帰って来た。

 何かをしようってわけじゃないのか?


「フェ、フェンリルが、こんなに近くに……」

「やはり迫力が違うな……」

「ガ~フ」

「ガウ~……」


 焚き火の近くや、他の場所にいた兵士さん達の戸惑いを余所に、数体のフェンリルはそれぞれ焚き火近くに腰を下ろした……というか、火の熱が多少伝わるだろう場所で伏せの態勢になった。

 くつろいでいるような、リラックスしている鳴き声が聞こえて来るけど……。


「もしかして、温まりたかっただけなのか?」

「ワッフ」


 続いてレオに問いかけてみると、再び肯定する鳴き声と頷きが返って来る。

 もしかしてフェンリル達は寒さを感じていたのかな?


「ただ焚き火に当たりたかっただけみたいですね。えーっと、邪魔ならどくように言いますけど……」

「い、いえ……今はまだ火を起こしているだけですので、問題ありません。それよりも、フェンリル達も焚き火で温まるのですね……」

「俺も初めて見たんですけどね。基本的に、火を扱ったりはしなかったので」


 フェンリル達は確か、火を出すような魔法って使えなかったんだったっけか? 対象を凍らせたりとかっていう魔法はよく見るけど。

 ともあれ、兵士さん達の野営準備の邪魔にならないなら、とりあえずあのままでいいか。

 ただこちらはこちらで、気になる事があるので一応聞いておこう。


「フェリー? もしかして寒い時とかあるのか? これまでそんな風には見えなかったんだけど……」


 疑問を、レオのさらに後ろにいるフェリーへと聞いてみる。

 比較的温暖な気候らしい公爵領で、さすがに夜は少し肌寒く感じる事はあっても、人間基準というか、俺からすると焚き火にあたらないといけないくらい、寒いなんて事はない。

 今も、まだ少し日が傾き始めたかな? というくらいなので全然寒くないんだけど……日本で言うと、春の気候に近いかもしれないな。

 ともあれ、フェンリル達はこれまで寒さで震えると言った様子を見せた事はないし、分厚い毛に覆われているうえ魔物を氷漬けにする魔法を使うのもあって、寒さに強いと思ったんだけど。


「グルゥ、グルルルゥ」

「寒いわけじゃないのか。それなら良かったけど……」


 フェリーの鳴き声をリーザやレオに通訳してもらうが、なんでもただ温かそうだったからという以外に意味はないらしく、寒いとかは全然ないみたいだ。

 まぁフェンとかは、フェンリルの森の中で川の表面を凍らせた橋から、滑って落ちてずぶ濡れになったのに、平気そうだったからやっぱり寒さには強いんだろう。


「グルゥ?」

「問題なら、怒ってどかせようか? って言ってるよパパー」

「いや、それには及ばないよ。兵士さん達は戸惑っているけど、邪魔にはなっていないみたいだし。――で、いいんですよね、プレルスさん?」

「は、はい。タクミ様にも申しましたが、まだ火を起こしているだけでそれを使って何かを、という段階ではないので。それに、よくよく見てみるとフェンリル達も、皆の邪魔にはならないようにしているみたいですから」


 確かに言われてみると、占領しているのは焚き火の片側程度で、もし焚き火を使って料理やお湯を沸かすなど、何かをしようとするのに大きく邪魔にはならないように見える。

 ……大きな体のフェンリルが、その場にデン! と伏せをしているだけで、兵士さん達にとっては気になってしまう可能性はあるけどな。

 プレルスさんが問題ないと言っているし、戸惑いの方が強いんだろうか、大きく恐怖感を覚えたりしているような人もいないようなので、むしろフェンリルに慣れるいい機会かもしれない。

 焚き火の暖かさを感じると安心してリラックスできる、という事だろうけど、フェンリル達が俺達の話を聞いて気を遣ったのかもしれない、というのは考え過ぎかな……?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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