駅馬に関する意見を求めました
「そういえば、駅馬はどうなるんだろうなぁ……?」
駅馬、と考えて思わず呟く。
エッケンハルトさんとまだ話していないけど、宿屋を併設するという俺の案をそのまま使う駅馬が、今回のランジ村北の森調査で滞ったりしていないかが心配だ。
カナンビスの事をまだ気づけていなかった時に、街道整備と一緒に準備が進んでいて、そう遠くないうちに開始できそうという話を聞いたのは確かだけど。
エッケンハルトさんはクレアを連れて、ハンネスさんと話に行ったから今はいないけど、後で聞いてみよう。
「駅馬、ですか。聞いております。確か、村や街との移動や輸送をフェンリル達に任せてみると。そのための中継施設を各地に作っているのでしたか」
「はい。まぁフェンリルだけだと、最初は受け入れられない人もいるでしょうから、ちゃんとした馬も使う予定ですけど。今こうしてフェンリル達と一緒に、俺が同行しているのも、駅馬の試金石のようなものですけど……」
駅馬はあくまで、最初は馬を乗り換える中継地点としての開始だからな。
特急便というか、急ぐ人や受け入れられる人はフェンリルに乗る、もしくは新馬車を使ってフェンリルに曳いてもらうってわけだ。
馬が中継できるだけでも、移動時間がかなり短縮されるだろうとの事だ。
「ここに来るまでに、いくつか完成間近の建物が見受けられました。さすがに私共のような大人数は別でしょうが、少数で旅をする者にとっては、便利になるでしょうね」
「やっぱり、移動時間が短縮されるのは便利ですよね」
蒸気機関の鉄道など、移動や輸送が容易になった事が産業革命へと繋がった一つの要因とも言えるからな。
さすがにそれ一つじゃないけど……まぁどちらかというと鉄道は交通革命と言った方がいいかな。
「そうですね、我々のような取り締まる側だと大変な仕事だと思ってしまう事もありますが……人や物がこれまでよりも日数を掛けずに移動させられるのは良い事だと認識しております」
「あー、まぁでもフェンリルがいますからね」
ラクトスで衛兵もやっていたプレルスさんからすると、どうしても警備とかそちらで見てしまうみたいだな。
ただフェンリルが常駐してくれれば、警備する人の数を減らせるだろうし、仕事もそんなに増えないとは思うんだけど……エッケンハルトさん達はそれを見越して動いてくれているみたいだし。
ともあれ、やってみないとわからない事もあるし、予想外の事だって起きる可能性があるから、結局は始めてみないとだ。
「ただ宿を併設するのはよく考えられていると感じます。馬を取り換えるだけなら、通り過ぎるだけですが……宿があれば旅をする者も安心して休む事ができますから。あまり商売の事は詳しくありませんが、収益も見込めそうですね」
「ははは、そうですね。移動する、駅馬を使用する人が増えてくれればその分、運営をしている公爵家の利益になるでしょうね。大半は、多分駅馬の維持に使われるでしょうけど」
感心している様子のプレルスさんには、思い付きだったとは言えずにとりあえず笑っておくとして……。
併設する宿は、それ単体で収益を上げて儲ける……というためにあるわけじゃないからな。
宿泊する値段設定などは、あまり高くないようにするとは聞いているけど、その辺りは俺が関わるべき事じゃないからな。
ただ宿の利益は基本的に駅馬を維持する費用などにも使われるから、大きな収益にならないだろう。
それよりも、人や物の移動が活発になって、公爵領全体が活気付いて商業活動も活発になり、それによる税収やカレスさんの店のような所で、売り上げが上がって収益に繋がる方が大事だろう。
公爵家だけが得をしているわけではなく、駅馬の恩恵は領内の人々にも受けられるし、問題点がないわけじゃないだろうけど、いい事は多いと思える。
「駅馬で活躍するフェンリルは、今この村にいるフェンリル達に任せるつもりですし、そうした話になっていますけど……利用してくれそうですかね?」
俺としては、せっかくフェンリル達が協力してくれるんだし、ちゃんと活躍させてあげたいと思うからこの質問が一番大事だったりする。
クレアやエッケンハルトさんのような、全体を見通す視点ではなく、領民に近い視点での意見が聞きたかったのもある。
……使用人さんや従業員さん、それにランジ村の人達でもいいんだけど、もうすでにレオやフェンリル達に慣れ切ってしまっているから、客観的な意見とかはあまり聞けそうにない気がするしな。
「どうでしょう……このように、怯えてしまって利用しない者というのも確かにいるかと考えますが……」
そう言って、もう一人の百人隊長さんを示すプレルスさん。
当然ながらそういう人もいるだろうし、ちょっと駅馬やその宿に寄るだけだと、フェンリルに慣れようにも慣れるだけの時間が少ないんだよなぁ。
「プレルスさんは、あまり気にしていないように見えますね?」
「私は、ラクトスで何度もレオ様やタクミ様を見ておりますし、街中にフェンリルが入った時も見ております。公爵閣下を含む公爵家を信頼しているというのもありますが、楽しく過ごしている姿を見るだけでも多少は違うかと。こちらの者は、ラクトスの外からですので、レオ様も本日初めて見たものですから」
「成る程……」
集められた兵士さん達は、ラクトスの周辺から集められているらしいから……必ずしもラクトスで俺達を見かけた事がある人ばかりじゃないって事か。
エッケンハルトさんもそうだったけど、シルバーフェンリルの話をある程度詳しく知っていたり、兵士という魔物と相対する事もある職業である人は特に、フェンリルの怖さなどを感じてしまう部分もあるんだろうな。
実際に、フェンリルを近くで見たり触れるのが初めてであっても……一般的には獰猛な魔物、と言われているくらいだし。
「ですが、ラクトスに住む者や出入りする者は、逆を返せば私のようにレオ様を見かけた事がありますし、噂も知っています。少し前にタクミ様やクレア様がフェンリルを引き連れてラクトスを通った事も、目撃している者が多いのです。そういった者達は、あまり忌避感や恐怖感がなく利用するかもしれません」
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