調査隊の現状を頭の中で整理しました
「近衛騎士隊の方も協力されているのですか」
「まぁ性質上、数は少ないがな。最初からここまでの事になると予想できていたら、もっと早く数を集めていたのだが……」
まぁ最初は、ちょっとした森の魔物の異変くらいだったからな。
カナンビスが関わっていると知っていれば、もっと早くから人を集めて広範囲に調査はできていただろうけど……今悔いても仕方がない。
「ルグリアさん……近衛の人達が調査隊の隊長のようになっていますけど、それは大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。近衛騎士と言えば、この国最高峰の騎士団です。一介の兵士でしかない私達が下につく事に、なんら問題はありません」
兵士と騎士で、身分や地位の差とかもあるんだろうか? そこまではわからないが、とりあえずプレルスさんともう一人の隊長さんは問題ないようで頷いてくれた。
この分なら、公爵領の外の人の下について調査隊となるのも、大きな反発とかはなさそうだ。
とりあえず、現状を整理すると……何故か俺が調査隊の総指揮官になっている、のはまぁ今更あれこれ言っても仕方ないので、無理やりにでも飲み込んでおくとして。
各隊長など、屋敷の護衛さんや公爵領から集めた兵士さん達の指揮は、エッケンハルトさんやクレアなど公爵家の人達が担う。
俺から直接というよりも、プレルスさん達にはエッケンハルトさん達からって言う方が多くなりそうだし、そうして欲しいが。
そして実働の調査隊の隊長とみなされている部分に、ルグリアさんやフィリップさん、それとパプティストさんがいる。
複数なのは別れて調査をするためだったけど、人数が増えて多くの人が下につく事になったので、そのままになった。
一人で実働の調査隊全てをまとめるのは、役職や所属の関係から難しいだろうからな。
あと、屋敷の護衛さんというのは公爵領内では他の兵士さん達より、地位としては高く見られているらしい。
話をしていた感覚では、兵士以上、騎士未満と言ったところだろうか。
ともあれ、こちらもプレルスさん達は特に反発などの問題はないようで一安心といったところか。
ルグリアさん達調査隊隊長の下にはさらに、屋敷の護衛さんと他の近衛護衛さん達がいて、さらにその下にプレルスさん達百人隊長が、さらにそこから集めた兵士さん達が……。
という、ちょっと歪かもしれないけど簡易的なピラミッド構造ができ上っている。
あ、そうそう、フェンリル達の扱いは基本的にどちらが上とかはなく、対等の関係としているけど、調査隊的には近衛護衛さんや屋敷の護衛さんと同等。
群れのリーダーであるフェリーは、ルグリアさん達と同等という事に、一応はなっていたりする。
……フェリーは、森に入って調査をしたりはしていないんだけど、まぁいいか。
「こんなところだな。プレルス以下ラクトスからの者達は、調査隊に協力して広範囲に森の調査に当たりつつ、村周辺の警戒も行ってもらう」
「はっ! 野営をするうえで、不審な者が行き来していないかの調査もいたします。魔物なども村には決して近づけさせません!」
エッケンハルトさんの言葉に、そう言って敬礼するプレルスさんだけど、後で「そこらの魔物であれば、近付いても問題ないでしょうが……」と漏らしてもいた。
まぁフェンリル達がいてくれるからなぁ……。
ポルクスとの遭遇戦でもそうだったが、オークやトロルド程度なら近付いてきたとしても、一瞬でフェンリル達に狩られるだろうし。
しかも森の中はともかく、開けた場所はラーレが空を飛んで遠くまで監視もできる……ちょっと自信なさそうにプレルスさんが漏らしていたのも、それらを考えるとよくわかるなぁ。
「さて……こちらの話をしたが、そちらの方の話を聞かねばな。一応、こちらでも情報収集はしているのだが、ラクトスやその周辺で変わった事などはないか? 今回の調査に繋がると思えない事でも構わん」
「はっ! ラクトスの周辺では……」
詳細を話し、確認などを済ませた後はエッケンハルトさんがプレルスさんからの情報収集。
カレスさんに聞いたのと同じような事だな。
内容なども、カレスさんから聞いたラクトスが活気付いていて、人の出入りも多くなっているという事だった。
違いとしては、人が多く出入りするために治安維持とか取り締まりが大変だ、というくらいか……まぁここは立場が違えば視点も違う、ってとこだろう。
商人としてのカレスさんは、人の出入りが激しいと物の流通が盛んになるから歓迎とする事が多いんだろうけど、取り締まる衛兵側のプレルスさんとしては歓迎してばかりもいられない、と。
そんな中、人を集めて調査に当たらせるのはラクトスがちょっと心配だったけど、最近ではスラムもおとなしく内部では悪さをする人は少なくなっているとの事だった。
人の出入り、物の出入りを見張る事が現状では最重要とか。
……俺とレオの噂があるから治安が良くなった、とはカレスさんや他の人から聞いたけど、本人としては微妙な気分になる噂も、役に立っているようなら何よりだ――。
「本当に、フェンリルが村に溶け込んでいるのですね……ラクトスで、レオ様が街中を歩かれているのは見ていますが、それとはまた違った光景です」
「そうですね、特に子供達は一緒に遊んでいて、それを村の人達もよく眺めているのを見かけますよ」
執務室での話の後、部下達……つまりラクトスからの兵士さん達へ指示や様子見などに行くプレルスさんと一緒に、ランジ村の中を歩く。
その中で、村の広場などで複数のフェンリルが子供達とじゃれ合っていたり、場合によっては大人と何かの荷物を運んでいたりする光景を見て、プレルスさんが驚いていた。
まぁ、そんな俺達の後ろを、レオやその背中に乗ったリーザだけでなく、フェンリル達がぞろぞろとついて歩いているんだけど……。
「……まだ慣れていなくてすみません。どうにも、フェンリルが後ろにいるという状況は初めてでして」
「ここ以外ではそんな事もないですから、無理もありませんよ。敵意がないのがわかってもらえればと思います」
もう一人の百人隊長さんは、フェンリル達が後ろを付いて歩いているのに対して恐怖感があるんだろう、少しだけ動きもギクシャクしている。
人に混じっているフェンリルなんて、今のところここしかないから慣れないのも仕方ないし、やっぱり一体ならともかく多くのフェンリル達が近くにいると、怖がってしまう人もいるのは仕方ないのかもしれない。
敵意がないとはいえ、相手は人が数人程度じゃかなわないからなぁ。
もしかしたら駅馬を開始した場合の課題になるかも……。
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