プレルスさん達に詳細を話しました
滞りなく進んでいたレオ達の紹介だが、フェリーに関してだけは、レオというシルバーフェンリルがいるにも関わらず、プレルスさんを含む百人隊長さん達は、改めてフェンリルを近くで見る事に少しだけ及び腰になっていた様子ではある。
ラクトスの中にも入った事があるんだけど、機会が少なくて見かけたりはしていなかったからかもしれない。
まぁレオに関しては、街の噂にもなっているようなのに対し、フェリーを含むフェンリル達はあまり話題に上っていないようだからな。
もちろん、街に入った時に見た人が話題にするくらいはあったんだろうけど、どちらかと言えばレオの方がインパクトが強く、印象に残って噂にもなるというところだろうか。
「では……そうだな、クレア」
「はい、お父様。プレルスともう一人は私やタクミ殿と一緒に。他の者達はランジ村の村長と話をしつつ、野営の準備を。荷物を置いた後は、一部の者はラクトスへ送り出さねばなりません。日が暮れるより前に出発した方が良いでしょうから」
「はっ! 了解しました!」
レオ達の紹介の後、クレアからの言葉もありつつ、エッケンハルトさんが促しクレアからプレルスさん達へ指示が出される。
まぁ詳細などの説明のため、プレルスさん含めた二人をまず屋敷に、他の人達は到着して落ち着くための準備を、そして物資を輸送する人は早めにラクトスへ、という事だな。
一日くらい休んでもと思うけど、人数が人数なので食料などの物資が不足しないよう、迅速に動く必要があるんだろう。
ラクトスとランジ村は片道約二日から三日……大きな荷物を幌馬車で運ぶと速度は出ないから、四日かかる可能性もある。
荷物を下ろして軽くなったラクトスへの帰りは少し早くなるだろうけど……往復で大体六日と考えれば、すぐに出発しないといけないか。
ちなみに後で聞いた話によると、ラクトスが一番近く大きな街である事から、今後到着する他の方面からの人達のための物資も、多くをラクトスから運んで賄うからっていうのもあるらしい。
そりゃ、大量の人がくるわけで、もちろんその人達も食料などは運んでいるんだろうけど、調達するとなったら近い場所からの方がいいか。
……出発前に、新馬車を使うかはともかく、フェンリル達にも聞いて協力してもらえないか相談してみた方がいいかな? 馬で幌馬車を曳くよりも、多少は移動が早くなるはずだし。
もちろんフェンリル達の許可と、エッケンハルトさん達の許可などがあれば、だけども――。
「さて、調査についてだが――」
プレルスさんともう一人を連れて屋敷に戻り、アルフレットさんやセバスチャンさんなどに、村の事や到着した兵士さん達の事を任せ、まずは俺の執務室へ。
一応総指揮を任されているから、今後も調査に関わる話はこの執務室で行われるんだろう。
エッケンハルトさんから話を切り出し、調査で今わかっている事などをプレルスさん達へと伝えていく。
もちろん、カナンビスといった禁止植物と、それを使った薬の事、フェンリル達への影響の事などもだ。
ちなみにレオやリーザは一緒だけど、フェリーは兵士さん達が来た事でフェンリル達をまとめるため、別行動だ。
さすがに多くの知らない人が一気に来たから、落ち着かないフェンリルもいるらしいからな。
「カナンビス……まさかあれが使われているとは……」
「うむ、知っての通り国全体で禁止されている植物だ。話はこの公爵領で済むかすらわからなくなっている。迅速に調査し、使用している者を探し出す必要がある」
プレルスさんは街を守る衛兵でもあるからか、当然のようにカナンビスを知っているようで、エッケンハルトさんの話を聞くうちに表情が険しくなって行く。
割と柔和な表情をする人という印象だったけど……物が物だから仕方ないか。
「人間に対して効果がないのが幸いと言えるだろうが、フェンリル達には被害が及んでいる。薬の持つ効果が薄かったからだろうが……情報によると興奮作用などもあるようだ。今はタクミ殿のおかげで対抗策もでき、調査に協力してくれているフェンリル達は問題ないだろう。だが、もしそれが多くのフェンリルなどの魔物に及んだ場合、予想されるのは……」
「大規模な、魔物による暴威が巻き起こりかねない、と予想されます」
「うむ」
前回のフェンリル達は、落ち着かない感覚の後体調を悪くして、戻したりする程度で済んだ。
けど薬の本当の効果としては興奮作用があるという事らしいからな。
新馬車を試している時に遭遇したトロイトの例もある。
あれみたいに、ここでサニターティムの丸薬によって予防効果を得られているフェンリル達以外の、森にいる魔物に振り撒かれてしまえば、プレルスさんが言うように魔物達が興奮状態になり、暴れ出す可能性はある。
それこそランジ村北の森ではなく、フェンリルの森の方に行って使われたら、サニターティムの丸薬を使っていないフェンリル達すら、巻き込む事ができてしまうだろう。
もしそうなったら、森から出てきた魔物が暴れ回る可能性が出てくるわけだ。
もちろん、それはフェンリル達も例外ではなく……百人単位の戦力と考えられるフェンリルが複数暴れ回ったら、被害は恐ろしい事になる。
ちなみに、フェンリルの森に潜り込む可能性なども考慮し、エッケンハルトさん達は既に兵士をそちらにも向かわせているようだ。
先に入り込まれていたら手遅れかもしれないが、今のところ怪しい人物がフェンリルの森の方に行ったという報告はないようだし、こちら側で調査を進めるうえで狙いは俺達、もしくはランジ村やここにいるフェンリル達だろう、と考えれられる要素があるのが救いかな。
まぁ、エッケンハルトさんが手を打っているとはいえ、全ての場所を見張る事は不可能に近いため、抜け道などから入られる可能性、とかもあるんだけど。
とりあえず今は、手掛かりも含めてランジ村北の森を調査し、発見を目指している。
「森の調査に関しては、先程エッケンハルトさんも言っていたように、俺が指揮を執っています。まぁ報告を聞いて相談しつつ程度ですけどね。調査に関しては現在も行われていますが……」
エッケンハルトさんに続いて、俺から調査の進捗……というよりフェンリル達との協力体制や、近衛護衛さん達も協力してくれる事などを話していった――。
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