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1786/1997

出迎えのために村の入り口に行きました



「ふむ、これはラクトスに戻ったら色々と考えてみる必要がありますな。素材なども相談する必要が……見た目などにもこだわり、贈り物としても使えるようにすれば、多少は売れる数も見込める……?」

「……なんだか、商品を仕入れるというより新しい物を作りだすような感じになっていますけど……いいんですか?」


 一人で深く思考の渦に入り込んだカレスさんはともかく、いつの間にかテーブル近くに来ていたエッケンハルトさんにソッと聞いてみる。

 護衛さん達の訓練を見ていたのか、服の端々に土が付いているようで、執事さんが濡れタオルで拭き取っていた。


「利益が得られ、買う方も売る方も満足するのなら構わんだろう。特に問題のある商品ではないようだしな。当然だが、許可が必要な商品などもあるし、なんでも売れればいいという事でもないぞ?」

「はぁ、成る程……」

「まぁ損失を出し続けるようなら、もちろん注意するがな。その場合は色々とこちらでもやらねばならんが……」


 新しい商品自体は、問題なければ常に歓迎という事でいいみたいだ。

 ただ損失を出し続けてエッケンハルトさんの方でやらないといけないというのは……まぁ簡単に思いつくのは、カレスさんのように店を任せている人を変える事、とかかな?

 高級な贈り物にもできる商品として売り出す、みたいな事を一人呟いているカレスさんの方から聞こえたので、損失に関しては少し心配だな……。

 できればカレスさんはこのままラクトスで頑張って欲しいと思う。


 ただまぁ、周囲の反応というか……椿油の効果を実感して上機嫌に話しをしている女性達だけど、なんとなく俺やカレスさんの話に耳を傾けているようだったので、興味は深いんだろう。

 少なくとも、椿油を使った人はさらにブラシやコーム、櫛にこだわりを持つ人が増えそうではある。

 カレスさんが櫛を作っても、それが椿油に馴染む物かどうかまではまだわからないんだけどな。

 とりあえず、ユートさんに任せた『国境を持たない美の探究者』とやらとの話し合いで、椿油の効果を引き出す品として追加しておくかな……。


「あ、椿油とセットで売ればいいのか……いやでも、そうなるとさらに値段が問題になるなぁ」

「ふむ、タクミ殿もまたカレス同様に考え込んでしまったな」

「もしかすると、タクミ様もカレスと同じく商人の素質や気質があるのかもしれませんな……」


 なんて、話しているエッケンハルトさんとセバスチャンさんの声が聞こえたけど、まずは今思いついた事をカレスさんに相談。

 椿油を売り出すとして、いくらで買えるようになるかなどの値段設定はまだしていないが、どうしても量が限られる事や諸々の事情で、少し高めになりそうだという話。

 高級品として作った櫛と合わせたら、簡単に手が出せない物になってしまわないかの懸念や、むしろそれならセット販売として少し値引きを……などの話で、カレスさんと盛り上がってしまった。


 クレアやエッケンハルトさんなど、多くの人は食事中もカレスさんとひたすら話し込む俺を、何故か微笑ましく見ていたような気がする。

 けど、レオには溜め息を吐かれてしまった……商売の話とか、レオには興味ないだろうからなぁ――。



 ――カレスさんと俺が白熱? したような気がする話し合いと共に昼食を終え、ティータイムの後少しして、ランジ村の入口へと移動。

 俺とエッケンハルトさん、クレアにシェリー、アルフレットさんとセバスチャンさん、それからレオとリーザ、フェリーがいる。

 ランジ村の入り口に来たのは、ラクトスから来る調査隊メンバーを迎えるためだ。

 そろそろ到着するらしいので、こうして皆で屋敷を出てきたというわけだな。


「タクミ殿まで、出迎えなくても良かったのだぞ?」

「それを言うなら、お父様もですけど……」

「ははは、お世話になるというか、調査を任せるわけですし……一応顔見せを兼ねてですね」


 俺達を見て言うエッケンハルトさんに、クレアが言い返す。

 それらを見て少し苦笑しながら話す。

 ラクトスからの調査隊は、エッケンハルトさんやクレアが集めさせた兵士さんなわけだけど、屋敷に滞在する人もいるようだからな。

 まぁエッケンハルトさんは、公爵様として屋敷でデンと構えて待っていればいいだけなんだろうし、俺もそれに近いのかもしれないが、どうせなら出迎えてお互いの顔を見ておきたいと言うのがあった。


 ラクトスやその周辺にいた人達でもあるから、ある程度知っていて見かけた事はあるんだろうけど、俺だけでなくレオやフェンリルのフェリー、クレアの従魔でもあるシェリーの事も、見せておきたかったのもある。

 危険はない事や、フェンリルが大量にいる事なども含めてな。

 フェリーは群れのリーダーだから、そのまま代表者としてだ……さすがにフェンリル全てを並べて、なんて事をしたら兵士さん達が怖がってしまう可能性もあるし。

 それに、今もルグリアさん達と一緒に一部のフェンリルはサニターティムの丸薬で予防しつつ、森の調査に行っているから、全て揃えるのは難しい。


「む、来たな」

「そうみたいですね」

「ワッフ」


 遠目に見えていた、馬や馬車、それから多くの人達。

 ラクトスからの兵士さん達と思われる人が、大きく遮る物がないためこちらに向かっているのがよく見えていたんだけど、その中から数人が、馬に乗って集団を抜けてこちらへと駆けて来るのがわかった。

 向こうも、こちら……主にエッケンハルトさんを発見したからかもしれない。

 その数人は、俺達の数メートル先で馬を止めて降り、残りの距離を掛けて来て、エッケンハルトさんの前で跪いた。


「公爵閣下の招集により、二百三十名、ここに馳せ参じました!」


 少し大仰な口調と共に、報告も兼ねて声を発する兵士さん。

 まだ頭を上げず下げたままだ。

 こちらに来た人も、まだ遠くにいる集団の人も軽装なのは、移動のためだろう……大きな幌馬車が何台もあるから、そちらに鎧などを一緒に運んでいると思われる。


「うむ。だが聞いていたより少々多いようだが?」

「うち三十名程は、補給などの役割のため、到着後はラクトスへと向かいます」

「ランジ村だけで、全員の食料などを賄うのは不可能ですから、ラクトスとの間を行き来して物資を運ぶ役割にしています、お父様」

「成る程な……さすがクレアだ、そこまで考えているとはな」

「いえ……お父様でも、同じ事をしただろうなと考えておりますから」


 まぁ要は、クレアはエッケンハルトさんならこうやる、というのをこれまでの様子から参考にして、ラクトスとの間を往復する荷駄隊みたいなのを考えたってわけだろうな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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