量産計画を少し修正する必要がありました
「今すぐでないのは残念ですが、畏まりました。その際には是非とも私めにお任せ下さい」
興奮気味だったけど、カレスさんも話せばわかる人だ。
というか、さっきの話も聞いていただろうからな……カレスさんが聞いていても良かったのか気になるけど、ユートさんは特に気にしていなかったし、エッケンハルトさん達も特に気にしていないから大丈夫なんだろう。
……エッケンハルトさん達は、気にする余裕がなかっただけかもしれないが。
ってそういえば、エッケンハルトさんで思い出したけど。
「でも、口約束とはいえカレスさんに直接、俺が商品を卸すという話でいいんでしょうか? 一応、公爵家が運営するお店ですから、エッケンハルトさんの許可とか必要なんじゃ……?」
お店の店主だからといっても、個人店というわけではなくいわばフランチャイズのようなものだからな。
コンビニなんかのフランチャイズは、店長には商品の仕入れなどの裁量とか、任せられている部分が大きいけどこちらは貴族との関係がある。
俺が知っているフランチャイズみたいなのと違って、カレスさんが独断で決めていいのかは気になった。
……駄目だったら、カレスさんがエッケンハルトさん達の前でこんな事を言い出さないかもしれないけど。
「報告する義務などはあるが、細かな商品の仕入れなどは各自に任せている部分が大きいな。ただ、タクミ殿の薬草など、それまで仕入れ販売を行っていなかった商品分類については、私に許可を求めるようにしている。今回は化粧品という分類だから、特に問題はないか」
つまり、元々化粧品の販売はしていたから、分類としては同じ椿油の販売はカレスさんの裁量で決められるといったところか。
俺が薬草の販売をする時には、エッケンハルトさんと直接契約を締結したし、そこからカレスさんの店に卸す事が決まったので、最初から許可されていたようなものだな。
「ですけど、量が増えれば確実に求める人も増えます。扱う量次第でしょうけど……大々的に売り出すのであれば、お父様の許可はあった方がいいのではないかと」
「商品の保証、という意味でも旦那様の許可があった方が、カレスも売りやすいでしょうな。カレス独自の判断ではなく、公爵家のお墨付きがあればそれだけ何かを言ってくる者も減ります」
量が増える、販売の規模が大きくなるならそれはそれで、許可を出しておいた方がいい何かがあるんだろう。
クレアの言葉からさらに、セバスチャンさんが補足しているけど……クレーマー対処に近い感じかな?
公爵家の許可があると言えるのなら、それは後ろ盾を得たような物だからな。
いちゃもんを付けて来る輩に対しては効果的かもしれない。
以前、俺が薬草を作って販売するかどうかという話でも出て来たけど、公爵家というブランドの信頼を使うわけだ。
直営店、というのがあってもそこで売られる商品全てが、ブランド的な扱いというわけでもないだろうし。
……まぁ、元々の評判が高いのもあって、領主貴族に表立って文句を言う人は少ないだろうけど……念には念を入れて、だな。
「ふむ、そうだな。今すぐの事でもないし、どれだけの量を売り出すかなどはこれからだろう。先程の話から、最初は少量からだと思っていたから静観していたのだが……」
「公爵様、是非、是非とも私達の店に商品、椿油の販売を許可していただきたく!」
口を手に当てて、少し考える仕草をするエッケンハルトさん……表情からは、特に断るとかそういう事を考えていないように見える。
カレスさんは、先程の勢いを復活させてエッケンハルトさんの方へと、少し詰め寄る感じだ。
さすがに本当に詰め寄るのではなく、近くに行っただけだけど、俺の近くからそちらに移動するのは凄く速かった。
「う、うむ。許可しよう。そうは言っても、これからどうなるかもわからない物だがな。ユート閣下次第でもあるし……向こうの出方次第でもあるか。ともあれタクミ殿、すまないが少量でも売り出せる数が確保できるなら、カレスに任せて欲しい」
「ありがとうございます、公爵様! ――タクミ様も、是非!」
「わかりました。まだ余剰というか、売り出せるほどの数ができるかわかりませんけど……少しでも売れるようなら、カレスさんのお店に任せます」
「……これは、僕の頑張りが期待されてるのかな? まぁ、どちらにも、特にタクミ君の方に無理をさせないよう頑張るよ」
そうして、まだ売り出すかどうか以前にどれだけ作れるのかなど、細かくは決まっていない椿油の卸先が一つ決まってしまった。
現状の製造元候補である『国境を持たない美の探究者』と妥協点を探る中で、多少椿を増やすようにしないといけないかな……とは思っていたけど、さらに椿を多く作った方がいいかもしれない。
無理をするつもりはないけど、薬草畑の活用法、量産計画の修正は必要だろうなぁ。
また、アルフレットさんとペータさんを交えて、相談だ。
土地はあるから、椿ばかりを作る事にならない限りは、大きな問題ではない……かな?
仕事は確実に増えてしまったけど。
その後、量に関わらず椿油の販売ができるようになった場合、という前提条件ありでカレスさんやエッケンハルトさん、アルフレットさんを交えて改めて簡単な手続きを済ませた。
優先的にカレスさんの店に卸すという契約のようなものだな。
あくまでも、販売できるくらいの数が確保できるようになれば、という内容だけど。
最後に、アルフレットさんは流れ的に察していたけど、量産計画の修正を明日話し合う事を伝えて、ようやく夕食後のティータイムで一息ついた。
中々、落ち着かないというか騒がしいというか、色々あった夕食だったなぁ――。
翌日昼食時、販売ができるようになった時に備えてか、引き続き椿油を使った感想などを、女性達に聞き取りをしているカレスさん。
ちなみに、朝の薬草作りをしながら、アルフレットさんやペータさんを交えて量産計画に関しては練り直してある。
とはいっても、計画的に増やす中で使う畑の相談くらいなんだけどな……結局、使うための土地は余っており、俺が一日に『雑草栽培』で栽培する物の中に、椿の量を増やすために捻じ込む程度だから。
ペータさんは扱える植物の種類や数が増えるかも、と期待する程度だったけどアルフレットさんにはその際、ちょっと厳しめの事を言われてしまった――。
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