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ちょっとだけ頼んだ相手の詳細を聞きました



「えーっと?」


 ユートさんが口を動かすたびに、深いため息と共に悩みと顔に作った皺を深くしていく公爵家の人達。

 皆の様子についていけない俺だけが、首を傾げるしかなかった。

 エッケンハルトさん達のこの反応は初めてだな。

 俺がやった事じゃないけど、ユートさんに頼んだのは俺なのでなんとなく申し訳ない感じ。


「タクミさん、えっとですね……まず、『国境を持たない美の探究者』というのは」


 隣に座るクレアが、ただただ訳がわからず首を傾げる俺に教えてくれた。

 先程の『国境を持たない美の探究者』というのは、以前話に聞いた各国々の女性達が集う組織らしい。

 その名の通り、女性としての美を追求する事が目的であり、各国の政治との関わりは基本的にないらしく、それらしい話は禁忌とされているとか。


 ただし、この国ではない遠くの別の国々が戦争へと発展しかけた時、既存の化粧品などに使われる技術や原料などが失われる恐れがあり、その組織が動いて戦争を止めたという話もあるとかないとか。

 あくまで、政治的な事には関与せず、お互いの国の重要な情報のやり取りは禁忌とされているため、表向きは何もしていないという事らしいけど。


「それはなんとも、危険な可能性のある組織な気が……」

「ただの噂となっているので、本当になんらかの方法で働きかけたという記録などはありません。だから実際のところはわかりませんが……」

「それくらいはしかねない人物が集まっているし、それだけの力を持っている人もいるって事よタクミさん。まぁ力に関しては、個人というより集まったからこそでしょうけど」

「な、成る程……」


 俯きながら、というかまだ頭を抱えているままでクレアの話を補足してくれるマリエッタさん。

 噂らしいけど、話が本当なら確かに厄介かもしれない。

 先程のユートさんが真似した言葉では、こちらを優先するような内容ではあったけど……もし椿を増やすのが間に合わず、最低でも『国境を持たない美の探究者』の人達に行き渡らない場合は、何をされるかという不安もあったりする。

 まぁ、武力でどうにかしようなんて人達でもないんだろうけども。


 その時は、エッケンハルトさん曰く一国では収まりきらない戦力が集まっているらしいので、レオやフェンリル達がなんとかしてくれるかもしれないが。

 レオもそうだけど、フェンリル達も狩り以外で争い事には関わらせたくはないが。


「その……『国境を持たない美の探究者』? 以外の人達は? その、そちらの方でもエッケンハルトさん達が大きく反応していたけど」

「そちらはですね……」


 続いてユートさんが挙げた人たちについてクレアに聞いた。

 聞いたんだけど……結局俺も、聞けば聞く程エッケンハルトさん達と似たような状況で、頭を抱え、顔に皺を深く刻むことになった。

 ユートさんの挙げた人達、一番身近と言えるのかわからないけど、近くではこの国の国王様。

 まぁこれは、テオ君もいるしそもそも国王様自身がユートさんの子孫だから、ギリギリ許容範囲と言えるかもしれない。


 ただその他が……マリエッタさんが錚々たる顔ぶれと言った理由がよくわかった。

 隣国の王族だけでなく、複数の貴族、さらには遠くにあるらしい複数の国々などなど。

 それぞれの場所で重鎮と呼ばれている人達を相手に、椿油の事を頼んだらしい。

 伊達に気が遠くなる程長く生きているだけあるのか、ユートさんの人脈、侮りがたし……なんて冗談を思い浮かべている場合じゃないな。


「……どう考えても、椿油の事を頼むのに相応しくない相手もいた気がするんだけど」

「それはまぁ、あれだよ。その人からのさらなる繋がりで、何か分かる事もあるかもしれないでしょ? だから、頑張った!」

「胸を張れる事じゃ……いやまぁ、それだけの人達に頼めるのは確かに凄いけど……」


 多分、俺が今考えている以上に大事になってしまっている気がするなぁ、これ。


「安心して、タクミ君のギフトだとか個人情報までは漏らしていないから! 椿の群生地を見つけて、化粧品にしたらどうかなって発想があったんだけど、できるかな? ってくらいで頼んだし!」

「俺の事はともかく、それはそれで群生地を求めて色々起こりそうな気がする」


 それこそ、『国境を持たない美の探究者』に怪しまれでもしたら、実際にその群生地を調べるなんて事になりかねない。

 というか行動力もあるらしいから、怪しまれなくとも調べられてしまいそうだ。


「……タクミ殿も気付いたと思うが、先程ユート閣下が声真似までした口調からわかる通り、貴族の娘も関わっている。貴族家の女性当主などもな。というか、そういった人物が中心になっているはずだったか。この国にも、もちろん関係者がいる」

「ですよね……」


 ですわなんて言う女性、一般人にいない……とは言えないかもしれないが、それでもユートさんと関わりを持っていてそういう口調をするというのは、貴族令嬢くらいしかいないだろう。

 アンネリーゼ……アンネさんを思い出したが、あの人もそうだったし。


「まぁ頼んでしまったのは仕方ないし、もう戻せないけど……その人達には、お断りを伝えても?」

「もちろん構わないよ。元々、いくつかに頼んで一番できがいい所を探る目的もあったからね。速さは競っているわけではなかったけど、結果として一番早く一番できが良くなりそうなのが、『国境を持たない美の探究者』になったってわけ」

「ならまぁ、良かったとは言えるのかな……エッケンハルトさん達は立ち直っていませんけど」


 試作品を作ってくれた『国境を持たない美の探究者』は置いておいて、まだ試作にも至っていない人達は断っても責任はユートさんが取ってくれる、と考えていいのだろう。

 相手が相手だから、よくわかっていない部分もある俺はともかく、エッケンハルトさん達公爵家の人や、使用人さんの一部……セバスチャンさんとかは、まだ悩んでいる表情のままだけども。


「まぁな。相手が相手だ、ユート閣下ならと考えても本当にするとまではな。とはいえ、私達にできる事など何もないのだが……こちらから、連絡をする事すら躊躇する相手ばかりだ」


 腕を組みながら、ため息混じりにエッケンハルトさんがそう言った――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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