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屋敷に戻るレオとフィリップさんを見送りました



 レオによって判別され、無事に飲めるワインは全体の半分。

 全てじゃない事は喜ぶべき事だと思うけど、それでも小さな村にとっては決して少なくない損害だと思う。

 屋敷に帰ったら、何とか出来ないか相談したいな。

 蔵にある大量の樽を運び出して、疲れた様子を見せているハンネスさんと村人達を見ながらそう考えた。


「とりあえず、危険な方の樽は誰も近づかない事と、何かに触れさせないように隔離しておいて下さい」

「はい。手配しております」

「レオ、樽の判別で疲れてるかもしれないが……もう一つ頼まれてくれるか?」

「ワフ。 ワフワフ?」


 危険なワインは、誰かが飲んだらまた病に罹ってしまう恐れがあるから、間違って飲んだりしないよう隔離する事をお願いしておいた。

 それとは別に、さっきフィリップさんと話したことをレオにお願いするために声を掛ける。

 レオの方はあまり疲れていないような声を出した後、首を傾げる……俺からのお願いを期待するよう尻尾が揺れているが……俺からのお願いって、レオにとって嬉しい事なのか?


「出来るだけ早く、フィリップさんを乗せて屋敷に戻って欲しいんだ」

「ワフ。……ワフ?」

「俺か? 俺はもう少しこの村に残るよ」

「ワフ……」

「大丈夫だ。フィリップさんにも言ったけど、この村にいれば誰かに襲われる事もないだろう。……そんなに心配なら、出来るだけ早く戻って来てくれ」

「……ワウ!」


 お願いをしてすぐ、レオが頷いてくれたが、俺は乗らない事や屋敷に戻らない事に疑問を感じたようだ。

 俺が一人で残る事に心配そうな表情をしたレオに、安心させるため、ここは安全だと伝えるが、後半に冗談で言った早く戻って来てくれという言葉に、意気込んで頷いた。


「……出来るだけ早くって言っても、フィリップさんを振り落としたりしちゃ駄目だからな?」

「ワ……ワフゥ」


 俺の事が心配なあまり、フィリップさんが乗る事を忘れていた様子のレオ。

 レオが全力で走ったら、人間はすぐに振り落とされる速度が出そうだからな……注意しておいて良かった。

 さすがに、フィリップさんがいないと、屋敷に戻る意味がなくなるからな……ガラス球もそうだし、セバスチャンさん達にしっかり伝えられなくなる。

 ……振り落とされるフィリップさんも怪我をしそうだしな。


「そんなわけで、ハンネスさん。もうしばらくこの村に滞在しますが、大丈夫ですか?」

「タクミ様でしたら、いくらでも滞在して下さって構いません。疫病も、原因である球やワインの事等……この村の恩人ですから。それに、そこまでして下さる方なのです、歓迎しますよ」


 屋敷に戻る準備をしているフィリップさんをレオと一緒に待ちつつ、ハンネスさんに俺がこの村にもうしばらく滞在する理由を説明して許可を求める。

 勝手にこの村に残る事を決めたが、実際拒否されたらどうしようも無かったからな……拒否されないだろうとは考えていたけど……。


「お待たせ致しました。レオ様、良いですか?」

「ワフ」


 確認をして、ゆっくりと伏せをしているレオに乗るフィリップさん。

 初めてレオに乗るから、少しだけ腰が引けてる様子だが、馬には乗り慣れてるからレオに乗っても大丈夫だろう。


「フィリップさん、これを」

「……ラモギですか?」

「はい。俺が屋敷に戻るのが遅れる分、ラクトスのラモギが品薄になってはいけませんからね。数日分ですが、これだけあればしばらくは大丈夫でしょう。それと、フィリップさんもそうですが、ガラス球に触れた人達がもし、病の兆候が見えたりしたら……」

「ラモギを飲んで、病気に罹らないようにする……ですね。承りました」

「お願いします」


 レオが樽の判別をするまでの少しの時間で、ラモギだけを集中的に作っておいた。

 村人の目はほとんどワインの事に向いていたし、子供達もレオに興味深々だったから、ハンネスさんの家の陰で作業した。

 疫病がこれ以上ラクトスの街で広がるのを防ぐためにも、薬は必要だからな。

 他の薬や薬草に関しては足らなくなるだろうけど、今はラモギに集中する事にした。


「レオ、頼むよ。くれぐれも、フィリップさんを振り落としたりしないようにな」

「ワフ!」

「……レオ様、よろしくお願いします」

「フィリップさん、速度に関しては随時レオに伝えて下さい。レオ、ちゃんとフィリップさんの言う事を聞くんだぞ?」

「ワフワフ」

「わかりました。振り落とされないよう気を付けながら、屋敷への道を急ぎます」


 任せておけとばかりに頷いて、レオが立ち上がる。

 フィリップさんなら俺より鍛えているし、馬にも乗り慣れてるから、俺が乗ってる時よりも速度を出せるかもしれない。

 レオが速度を出す事が出来れば、それだけ早く屋敷に付けるからな……ガラス球の事、疫病の事等、セバスチャンさん達に早く伝わるに越したことはないだろう。


「では、失礼します。タクミ様も無理はなさらず」

「はい。おねがいしますね」

「ワフー!」


 フィリップさんと言葉を交わし、レオが一度吠えて出発した。


「……ちょっと、張り切り過ぎじゃないか……レオ?」


 ほとんど一瞬にして、俺の目の前からいなくなったレオとフィリップさん。

 張り切ったのか、早くここに戻るためなのかはわからないが……フィリップさんが振り落とされない事を祈ろう……まぁ、レオならその辺りは気を使ってくれるだろうから、大丈夫だと思うが……。


「さて、ハンネスさん」

「はい」

「念のため、これを持っていて下さい」

「……ラモギですか? ですが、村の病はもう……」

「ワインの樽は分けましたが、もしかしたら既に飲んでしまった人もいるかもしれませんからね。それに、まだ症状が出ていないだけで、潜在的に病に罹っている人もいるかもしれません。……念のためですよ」

「わかりました。この村を救って下さり、公爵家に仕える程の薬師様の言う事ですから、間違いはないのでしょう」


 ハンネスさんにとっては、俺は公爵家に仕える薬師と考えているんだろう。

 まぁ、当たらずとも遠からず……かな。

 俺の事情を話さないなら、このままにしておいた方が良さそうだ。

 そう思いながら、フィリップさんに渡したラモギとは別のラモギをハンネスさんに渡す。

 こちらの数は少量だが、もし足りないようだったら追加で作れば良い。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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