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レオ達にはパッチテストするよう考えました



 俺が使うために、と手に持った椿油の瓶……集まった女性達に配って残った物でもある。

 クレアはともかく、俺自身は使うかはわからないから他の人に行き渡るように、受け取りを固辞しようとしたんだけど、むしろそれだと他の人が使いにくいと言われて、一瓶だけ受け取る事になった。

 俺が使うとしたら、寝癖を直すスタイリング用になりそうだけど……リーザに使ってみるのもいいかもしれないな。

 リーザは年齢的な事もあるのか、まだ美容には興味がなさそうだが時折髪とかを気にしているのを見かけるからな。


 耳や尻尾の毛の方が気にしている事は多いかもしれないが。

 リーザも女の子だ、いずれ興味が出て来るだろうし今のうちから練習みたいなものだ。


「……レオに試したらどうなるんだろう?」

「ふふふ、レオ様のふんわりとした優しい毛が、もっと艶やかになってサラサラになるのですか?」

「いやまぁ、なるかどうかはわからないけどね。そもそも、あくまで椿油は人間が使うもので、レオに合うかわからないし……」


 そう考えると、リーザにも合うかどうかわからないな……獣人って、人間と肌質とか化粧の相性が大きく違ったりするんだろうか?

 肌に合わないとかだと、リーザやレオに使うわけにはいかないからな。

 この辺りは、デリアさんも巻き込んで調べてみてもいいかもしれない。

 デリアさんは、屋敷にいる女性の一人だけどあまり美容とか化粧品には興味がなかったのか、今ここにはいないけど。



「レオ様の美しい毛並みが、もっと美しくなるのはちょっと楽しみですね」

「まぁ色々試してからかな? 合う合わないだけじゃなくて、レオが嫌がったら当然できないし。あーでも、そうしたらフェンリル達用にも必要になるかもしれないね。椿の匂いが好きそうだったから」

「そういえばそうですね。ふふ、タクミさんがフェンリル達にもみくちゃにされているのを思い出しました」

「あれは……うん、好きな匂いに興奮していたみたいだけど、それと似たような事になるのかなぁ?」


 我先にと椿油を求めるフェンリル達……というのを想像してしまった。

 クレアの言う、俺が椿を作った時の反応を思い出すと、美容とは違う意味でフェンリル達には確かに求められそうだ。

 肌や髪に使う物ではなく、香り専用の物を作ったりするのもいいのかも? アロマみたいな。


 まぁそのあたりは今後考えて行けばいいだろう……。

 なんとなく大広間に薄く広がった椿の香りを感じつつ、しばらくクレアと話しながら想像を楽しんだ――。



「タクミ殿、今日は食卓に着いている者が少ないようだが……? 女性がほとんどいないな」

「綺麗どころがいないと、少しつまらないよねー。まぁ、僕は大体予想が付くけど」

「あははは……まぁ、ちょっとした事がありまして……」


 夕食時、食卓に着いたエッケンハルトさんが、いつもより人数が少ない事に対して不思議に思ったようだ。

 それは、エルケリッヒさんやマリエッタさんも同様で、皆俺に目を向けている。

 俺が理由を知っていると考えているようだけど、俺だって全部を知っているわけじゃ……まぁ俺のせいとも言えなくもないんだけど。

 クレアはいるし、ライラさんとか先程大広間に集まった女性達の一部は、ちゃんといるんだけどね。


 ただ、原因はもちろん俺が配った椿油。

 それぞれ、早速試すためにお風呂へと殺到し、ライラさんと同じく髪や肌に付けているようだ。

 まぁ仕事などがおろそかにならなければ、俺が配ったのもあるし、女性達の反応も間近で見ていたからいいんだけど。

 ちゃんとこうして、男性の使用人さん達が代わりに動いて夕食も滞りなく準備されているわけだし。


「ふむ、成る程そんな事があったのか」


 事情をある程度知っている、というか椿油を届けてくれたユートさんはともかく、理由を知らないエッケンハルトさん達に話すと、納得したように頷いた。

 というか、化粧品に関する事だったから、あまり興味が湧かなかったようだ……エルケリッヒさんも少し近い考えっぽいけど、エッケンハルトさんはあまりそういった美容とかは気にしないようだからな。

 初めて会った時とか、ほとんど整えていない無精ひげを伸ばしっぱなしにしていたくらいだ。


「言われてよく見てみると、確かにクレア……ライラもいつもと違うわね。はっきりと美しくなっていると見えるわ」

「そうでしょう、お婆様」

「恐縮です」


 マリエッタさんだけは、興味深そうに話しにあったクレアやライラさんの髪に注目し、大きく目を開いている。

 嬉しそうにクレアが微笑み、ライラさんが会釈。

 二人共、褒められたのもあるけど、それ以前からいつもよりかなり上機嫌な雰囲気を漂わせていた。

 化粧は女の武器……と言われる事があるのと関係あるかはともかく、椿油一つだけの事でも気持ちが上向くものみたいだ。


 ……エッケンハルトさんやエルケリッヒさんは気付かなかったようだけど。

 ちなみにクレアは、他の女性達と同じく大広間を出た後早速とばかりに椿油を使ったらしい。

 メイド長のエルミーネさんから夕食前に、自分も試したかったのに、お嬢様のお世話をしなければならなかったと、少しだけ愚痴られた。


 クレアは一緒に使おうと誘ったらしいけど、それに関しては使用人としての矜持が邪魔して、クレアの方を優先させたとかなんとか……。

 そんなエルミーネさんも、今は他の人達と一緒に椿油を試しているようだから、気分も良くなっているんじゃないだろうか。


「その椿油、だったかしら。私も使ってみたいのだけど……」

「えぇ、もちろんマリエッタさんも使ってもらえるよう、用意しています」

「こちらになります」


 ライラさんに目配せすると、取り出した化粧瓶をマリエッタさんへと渡す。

 数には限りがあったけど、さすがにマリエッタさんが興味持ちそうな椿油を渡さないという事はないからな。

 なんとなく年齢を気にしているような節があったし、ニャックがダイエットにいいなど、美容に関して興味があるようでもあったから。

 まぁ、皆に配る時にクレアがお婆様にも……と言われるまで、気付かなかったんだけど。


 怒られたりはしないだろうが、マリエッタさんをがっかりさせないで済んで良かった。

 使用人さん達に配る物が一つ減った事になるけど、そこはそれ、ユートさんとの交渉などが有利になってもっと数が作れる可能性、というのを皆考えていたらしい。

 マリエッタさんを巻き込む、というか椿油を欲する側にして味方に付けるという事みたいだな。

 皆結構、ちゃっかりしているなぁ……とその時は思ったくらいだ――。




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