表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1776/1997

大広間は効果を見て色めき立ちました



「本当、サラサラだわ。ライラは元からだったけど、それがさらに強調されているわね」

「ですよね、クレア様」

「ちょ、ちょっと……クレア様や皆様が感心されるのも当然なのはわかっていますが、あまり触られ過ぎるのは……」


 キャイキャイと、女子高にでも迷い込んだのかな? と錯覚するくらいの騒がしさの中、ライラさんの戸惑う声が聞こえる。

 皆、綺麗になったライラさんの髪に執心で、ライラさん自身の様子には気づいていないようだ……一部の人は目の色が変わっているからなぁ。

 女子高じゃなくて、バーゲンセールをしているデパートだったかもしれない、と思うのは集まった人たちに失礼かな?

 ともあれ、このままだとせっかく綺麗になったライラさんの髪が、ぐちゃぐちゃにされそうだし、止めないとな。


「はいはい、集まった皆の気持ちはわかる……気はするけど、その辺りにしておきましょう。ライラさんだけでなく、皆が使える物ですから今は少し落ち着いて」


 パンパンと手を叩きながら、ライラさんに群がる女性へと少し大きな声を出す。

 なんだか、初めて薬草販売を始めた時レオに子供達が群がっていた時の事を思い出すな。

 あの時もこうして、音で注意をこちらに向けて皆を落ち着かせたっけ。


「す、すみませんタクミさん、あまりにも綺麗でしたのでつい……」

「まぁ、俺は男だから気持ちがわかるとまでは言えないかもだけど、興奮してしまうのも無理はないと思うよ。でも、程々にね?」

「はい……」


 恥ずかしそうに、俺の横に戻って来たクレア。

 他の皆と同じように興奮してしまったのを恥じているらしい。

 クレア以外の女性達も、同じように興奮しすぎていた事に気付いて、ライラさんに謝ったりと、申し訳なさそうにしているな。

 うん、少しは落ち着いてくれたようだ。


「えーっと、ライラさん。確かに髪は綺麗になったと男の俺から見てもそう思います。まぁそれは他の人達の反応を見てもわかるでしょう」

「はい、ありがとうございます旦那様。このような素晴らしい物をお作りになられた事に、感謝しかありません」


 そう言って、深々と頭を下げるライラさん。

 その際、ライラさんの黒髪がサラサラと流れるように動くのに、思わず感嘆の息が漏れそうになった。

 というか、実際に一部の女性が息を漏らしていたけど。


「いえいえ。それで、髪の方は確かに効果があるのはわかりましたけど、他はどうでしょうか?」


 椿油を配って、髪が綺麗になって終わりではないからな。

 一応試作品を試すという事なのだから、使用感もそうだけど髪以外の部分も聞いておかないと。


「そうですね……まだ髪に馴染ませる際、手に取ったのもあって私やゲルダの手には馴染ませてあるのですが、はっきりと何かを実感するほどでは……」

「ふぅむ。ハンドクリームとしてだと、見た目にわかりやすくはあまりないでしょうね。しばらく使ってみて様子を見るのがいいでしょうか」


 肌に対しては、まだ手に馴染ませるくらいしか使っていないようで、その結果もよくわからないという事みたいだ。

 まぁ、わかりやすく塗ってから数分や数十分で効果が出る物でもないか。

 ロエみたいに一瞬で怪我を治すのでなければ、あかぎれを瞬時に治す物でもないんだし、ハンドクリームは塗っておいて乾燥を防ぎつつ、じっくり時間をかけて修復するような物だろうしな、多分。


「ただ……」

「ん?」


 髪への効果は確かにあったけど、肌に対しては少し様子を見るかなと思っていたら、ライラさんが何やら言いたそうな様子。

 首を傾げて、先を促した。


「手の乾燥は、今のところ感じられないなと思います。完全になくなったわけではないと思いますが、今はほぼないようなものです」

「成る程。保湿してくれている、とかそんなところですかね」


 お湯や洗剤に触る仕事をしていれば、手が乾燥してかさつく事もあるだろう。

 それが緩和されているのかもしれない。

 すぐにはっきりわかる効果、とまで言えるかはわからないけどこちらも要観察だな。


「ライラ、少しだけだけど手が白く見えるのは気のせいかしら?」


 ふむと考え込む俺の横から、クレアがライラさんの手を見てそう言った。

 ライラさんは色白で手もそうなんだけど、言われてみれば確かに……いや、俺にはよくわからないな。

 そこまでライラさんの手を注目して見た事はなかったし、ちょっとした違いに気付ける注意深さは俺にはないのかも。


「なんとなく、私自身もそう見えるのですが……クレア様がそう仰るなら、私の見間違いというわけでもないのでしょう」

「えぇそうよ。手の甲なんて、白く見えるだけじゃなくてツルツルになっているような……? 間違いないわ」


 再び、クレアの言葉で周囲の女性達が湧いた。

 白くなっている、というのは俺から見てもよくわからないけど……確かにツルツルというか、スベスベしてそうには見える。

 まぁ白いと言っても病的な白さではなく、健康的な美白と言ったところなんだが。


「保湿されているのなら、それで髪だけでなく肌もしっとりして、ツルツルスベスベに見える……のかな?」


 とにかく、肌の方にもある程度の効果があるのは間違いないようだ。

 今すぐ、完全な効果が見られるというわけではないけど、少しでも手荒れが改善するのなら椿油はきっと役に立ってくれるだろう。

 椿を作ったのは俺だけど、ここまでの物を抽出して作ってくれた人達、ユートさんの知り合いらしいけど、その人達には感謝だな。

 ユートさん本人にもだけど。


 あとは、継続的に作ってくれるか、それとも製法を教えてもらって別で作るか……その辺りはユートさんと相談ってところだろう。

 とりあえず、試作の椿油は新馬車に続いて成功という事で締めて、集まった人達に椿油の入った瓶を配った。

 俺とクレアは一瓶ずつ、ライラさんも最初に試した人として何故か皆から賛辞されつつ一瓶。

 ……化粧品で害はないだろうとはいえ、一番最初に進んで試すのはそれなりに勇気がある事らしかった。


 他の人達は、数人で一瓶を大事に使うという事で落ち着いた。

 髪だけでなく肌にも使えるとなれば、数人で使ったら一瓶なんてすぐ空になってしまうだろうから、早めに次のをユートさんに頼んだ方が良さそうだな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ