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化粧品に少し躊躇してしまいました



「そうだね。そこは俺が知っているのと違うのかもしれないけど、でもこれなら、無理せず継続的に作れそうだ」


 俺がそう言うと、固唾をのんで見守っていた女性達がワッと歓声のような声をあげた。

 説明書を信じるなら、個人差はともかく効果が確かな物らしいので、これからにも期待ができたんだろう。

 髪に対して使うだけでなくスキンケア……肌や手荒れなどにも使えるかもしれない、という話も広まっているからかもだが。


「椿油自体は……ほとんど無色透明ってところかな? よく見るとほんのり黄色がかっているけど」

「少しだけ可愛らしい黄色に思えますね」


 椿油と言えば、黄色い液体のイメージがあったんだけど……俺が考えていたよりもずっと無色に近い。

 光の当たり加減で、ほんのり黄色が見えるくらいでほぼ無色と言っていいくらいだ。

 濾過の回数とかが関係しているんだろうか? まぁ色の濃さで効果が変わったりしないだろうから、気にしないでもいいかもしれないけど。


「それじゃ、とりあえず試すわけだけど……どうするかな……」

「タクミさん?」

「いや、他の薬草とか薬なら、まず自分で試してとか思うんだけどね。これまでもそうだったし、安全は保障されている物でもあるから」


 試作した人達が、既に試したらしいからそちらで何も問題が起きていないのであれば、危険な液体にはなっていないはずだ。

 ユートさんのツテというのが少し不安だけど、人体に害を及ぼすような物になっていたら、そもそも試して欲しいと送ってきたりはしないだろう。

 原因はどうあれ、それはただの失敗作だし。

 

「ただ、俺が使っていい物かなって。いや駄目じゃないんだろうけど、なんかこう、固定観念からの躊躇があってね……」

「は、はぁ……」


 クレアには多分わからない気がするけど、これまで化粧品なんてほぼ使って来なかった。

 使うとしたら、冬の乾燥する時期にリップクリームを使ったくらいか? あれが化粧品の一種かどうかは、議論の余地があるかもしれないけど。

 それはともかく、男の俺が髪や肌をきれいにするための化粧品を使う事に、なんとなくの抵抗感があるわけだ。

 男でも化粧品を使う人は使うし、肌が乾燥するからって同級生の男子が化粧水や保湿クリームを使っているのを何度か、それも数人見た事があるんだけどな。


 ただなんとなく、化粧品は女性が使う物という固定観念から躊躇してしまっている。

 これまで使ってこなかった物に、抵抗感があるだけかもしれないが。

 使い方がわからないとかじゃない。

 それは取扱説明書に懇切丁寧に書かれていたから……使う場所と量に関しては、適量とか少量とかいう書かれ方をしていて、まだ試行錯誤の途中なんだなというのを窺わせているけど。


「では、私が試しましょう。旦那様のメイド長として、旦那様が作られた物を試すのに適任かと」

「あ、ずるいですライラさん!」

「私だって、試してみたいのに!」


 等々、俺が躊躇していたら進み出てきたライラさんと、それを非難? する女性達の言葉で大広間がにわかに騒がしくなった。

 俺の持っている抵抗感とかは、当然ながら集まった女性達は持っていないようだ。

 というかライラさん、椿自体はともかく椿油は俺が作ったとは言えないと思います。

 間接的に関わっているとか、原料は俺で合っているけど……。


「えーと、それじゃとりあえずライラさん……すみませんけど、お願いします」

「はい、畏まりました」


 えー、ずるい! などとの言葉が飛び交うけど、そこはクレアの前だからかライラさんのメイド長という立場があるからか、ほとんど冗談交じりのような声音ですぐに収まった。

 俺が指名したってのも、長引かなかった理由の一つかもしれないが。


「私も最初に試したかったですが……試す条件としてはライラが確かに適任かもしれないですね。髪ならライラの綺麗な黒髪は効果がはっきりと出そうですし、その他にも……」

「そ、そうだね。うん。ライラさんの黒髪なら、効果もばっちりわかりやすく出てくれると思うよ」


 そこまで考えてはいなかったんだけど、とりあえず少し残念そうにしているクレアに話を合わせる事にした。

 ここで否定して、特にこれと言った理由もなく指名したとわかれば、また他の女性達が騒いでしまうかもしれないからな。

 クレアは綺麗な金髪、ライラさんは綺麗な黒髪で……どちらもかなりの長さだけど、手入れを欠かしていないのがわかる。

 ただ黒髪だから効果がわかりやすいというのは、俺にはよくわからなかった。


 髪に詳しくないからかもしれないけど、俺からするとクレアの金髪の方がわかりやすい気がしたんだけどなぁ。

 もしかすると、学生時代の友人……女子ながらに黒髪の貴公子と呼ばれたあいつなら、椿油を使う前後での違いをはっきりとわかるのかもしれないが。

 まぁ髪以外だと、選択やら掃除やら水仕事もしているライラさんの方が、クレアよりわかりやすいという意味では適任とも思うけど。


「それじゃ、ライラ。行ってらっしゃい」

「行きましょう、ライラさん」

「えぇ。旦那様、クレア様、少々失礼いたします」

「え、あ、はい。いってらっしゃい……でいいんですかね?」


 俺から椿油の入った瓶を受け取ったライラさんは、クレアから説明書のうち使用法などが書かれた一枚を渡されつつ促され、ゲルダさんと一緒に大広間を退室して行った。

 あれ、この場で試すとかじゃなかったのかな?


「わざわざ出て行かなくてもいいと思うんだけど……」

「タクミさん? 女性がお手入れをしているのは、あまり見せるものではありませんよ?」

「あ、あ~、成る程……そういう事かぁ」


 ちょっとだけジト目っぽくなったクレアに言われて、ようやくライラさんが退室した理由がわかった。

 というか、俺達を囲んでいる女性も全員が深く頷いている……。

 そういえば以前、まだ俺が小さかった頃だけど、伯母さんが化粧をしている所を俺に見られて恥ずかしそうにしていたような記憶がある。

 ただの偶然で、普段はお風呂上りに髪を乾かすのも見せなかった伯母さんだけど……女性にとって化粧をする姿というのは、恥ずかしいものなのかも。


 もしかすると、伯母さんなどの少し前の日本女性的な考えと、こちらの世界の女性は近いのかもしれない。

 高校に上がり、レオを拾う少し前から一人暮らしを始めてからは、身近に女性がいたわけではないから忘れていたけど。

 電車などに乗ると、特に気にせず化粧する人とかよく見かけたし……揺れる中危なくないのかな? と思う程度ですぐに気にしなくなったが。

 学校とかでも、女の子がグループで集まって話しながら化粧してたりもしてたなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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