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1771/1996

公爵家の後ろ盾は思っていたより重要でした



「ふっ、タクミ殿は我々公爵家をも利用する腹積もりだからな。肝が据わっているだろう?」

「お父様が誇らしげにする理由はわかりませんし、人聞きが悪い言い方ですが……利用というより、相互に利がある話のはずです」


 俺を挟んで、鼻を鳴らして自信満々に言うエッケンハルトさんに対し、溜め息混じりのクレア。

 あれだな、公爵家が後ろ盾にいるという部分を大いに使って、この屋敷から見ると別邸の先、王都方面から販路を広げたりとか、以前発表した内容に関してだろう。

 穿った見方をすれば、公爵家を都合良く使っているとも言えるかもしれないが、公爵領で暮らす人たちにとっては自分で言うのもなんだが良質な薬草と薬が行き渡るので、悪い事ではないはずだ。

 公爵家の評判も良くなると思うし。


「公爵家を利用、と言うと確かに人聞きが悪いかもしれませんが……レオ様やフェンリルを受け入れてもらうためにも、有効な考えだと私も思います」

「レオやフェンリル達を受け入れてもらう、ですか?」

「はい。ラクトスではレオ様はすぐに受け入れられましたが、他でもそうだとは限りません。ですが、公爵家が後ろにいるのだと示す……クレア様が前面に立つ事で、受け入れやすい素地があるのです」

「ふむ……」


 カレスさんが言うには、公爵領に住む人達の多くはシルバーフェンリルの伝承などを知っている事が多いため、人間の敵という認識は少ないのだとか。

 だからこそ、公爵家が、もしくは公爵家と協力している姿勢を示す事で、シルバーフェンリルであるレオだけでなく、フェンリルも受け入れられやすいだろうと。

 さらにクレアが前面に出る事で、公爵家とシルバーフェンリルやフェンリルとの繋がりが確固たるものと示されるも同然であり、内心で恐怖を抱くとしても反意を示したり、忌避する可能性は少なくなるとか。

 クレアには、シェリーだけでなくリルルも護衛や輸送役として付いてもらうから、そうして広くフェンリルとも協力関係と示せるのは悪い事ではないらしい……そこまで考えてなかったなぁ。


「とはいえ、魔物に対する忌避感や嫌悪感、恐怖心というのは全ての者が払拭できるわけではありませんが……」

「そこは、徐々にと考えています」


 そのために、ヴォルターさんにシルバーフェンリルやフェンリルに関連する物語を作ってもらい、子供達に読み聞かせのような事をしているんだから。

 気の長い話だけど、今の子供達が大きくなるまでに少なくともフェンリル達への、カレスさんが言うような感情が払拭できるようになって欲しいという思いだ。

 まぁランジ村にいる子供達や、ラクトスの孤児院も含めた子供達の多くは、レオやフェンリル達にはあまり恐怖心とかはないようで、好奇心の方が勝っているようだけど。

 大人になるにつれて、周囲に広めていってくれればってところかな。


「他領でもそうだな。タクミ殿の薬草が大量に作れるようになり、広まるのに合わせ、徐々にレオ様やフェンリル達について周知していく。とはいえ、レオ様の事も含めて国の上層部の一部はすでに理解を示しているがな」


 ユートさんとかテオ君とか、この屋敷にいるからなぁ。

 上層部どころか、ほぼ国のトップに認めらていると言っても過言ではない……かもしれない。

 そういえば、公爵領はともかく国全体としてレオはどう見られているのかとか、聞いてなかったな。

 機会があれば、テオ君やルグリアさんとルグレッタさん姉妹に聞いてみよう。


 ……ユートさんに聞こうと考えないのは、認めないくらいなら認めさせるという強権発動もあり得そうだと思ってしまったからだ。

 今の話とは直接関係ないけど、カナンビスの事で結構怒っていたからなぁ。


「その上層部の一角が、公爵家というわけですな。成る程成る程、先の展望もしかと考えておられる。さすがです。私が言うのも烏滸がましい事でした」

「いえいえ、色々な視点や角度で考えてくれる人っていうのは重要ですから。カレスさんに言われて気付いた事もありますし」


 外部と言う程離れていないけど、商売人としての考えと視点を持つカレスさんの意見は大事だ。

 屋敷にいると、村の人達以外は使用人さんや公爵家に関係する人達ばかりで、あまり外からの意見みたいなものは得られないからな。

 そうしてしばらく、薬草販売の広め方などの話をしつつ、ラクトスで別の店にも薬草をという話にもなった。

 カレスさんの店一つだけでは、ラクトスという街の規模に対して不足するだろうという事からだ。


 薬草や薬の専門店ってわけでもないから、別の店にもという事だな。

 病が広まり、ラモギを大量に販売した時は緊急性があったため、他の商品を売るよりもラモギの販売を優先してようやくだったらしいし。

 ラクトスにも真っ当に薬草や薬を売る店があるわけで、それらと共同でラクトスに良質な薬と薬草をというわけだ。

 どれだけの店に卸すかはカレスさんが判断して、許可を求めるなりする事になった……頼もしい。


「話は変わるがカレス、ラクトスで変わった事、噂などはないか?」

「変わった事、噂……ですか。そういった事は注意深く集めて精査するようにしておりますが……そうですな、先程タクミ様にも話したのですが、兵を集めているとか。それで、何かあるのではないかと考えている住民が多いようです」

「うぅむ、少々性急に過ぎたか。しかし、一刻を争うかもしれない事だからな……仕方あるまい。兵に関しては、特にきな臭い事があるわけではなく……いや、既にきな臭い事は起こっているのか? ともかくだ……」


 改めて、森の調査をする必要がある事をエッケンハルトさんからカレスさんに伝えられる。

 カナンビスの薬を使った者がいるという事も伝えられた。


「それは……きな臭いどころの話ではありませんね……まさか、あの固く禁じられているカナンビスとは……」

「カナンビスってなんですかい、アニキ?」

「えーっとな……」


 カレスさんはさすが、カナンビスについてもある程度知っているようで、深いしわを寄せながら顔をしかめさせていた。

 対してニックの方は、カナンビスをよく知らなかったらしく不思議顔。

 とりあえず、危ない物で絶対に触れてはいけない植物だと説明しておいた……詳細まで、ここで話すのは長くなるしな。

 ただニックが知らないという事は、ラクトスのスラムの方にまでカナンビスは及んでいない可能性が高そう、かな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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