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樽の判別をレオに頼みました



「それなら、出来るだけ早く蔵にある樽を持って来て下さい。どのワインが無事かどうかを調べないといけませんから」

「そう、そうですね。わかりました。村人総出で運んで来ます」

「そんなに急がなくても良いですよ。原因となった球はここにあるんです。ゆっくりで良いですから」


 言葉で言って、ハンネスさん達を納得させる事が、俺には出来そうに無い。

 それなら、今は何かしら動いて、悪い方向に考える事をさせない方が良いと思った。

 俺の言葉が聞こえたのかどうか……急いで村人たちを連れて蔵へと向かうハンネスさんは、落ち込む余裕は無くなっているように見えた。


「レオ、色々頼んでしまって済まないが……また樽の判別を頼むよ」

「ワフ」


 レオにとっては、嫌な気配や臭いを判別しないといけない事だから、改めてお願いをしておく。

 ワイン自体は好きでも嫌いでも無いだろうが、レオが吠える程の嫌な臭いをかがされるわけだからな。

 それでもレオは、任せろとばかりに頷いてくれる……ほんと、レオには感謝しないといけないな。


「タクミ様、ガラス球の回収は終わりました。……どうしましょうか? すぐにセバスチャンさんに報せますか?」

「そうですね……どうしましょうか……」


 出来ればすぐにでもセバスチャンさんに報せたいところだ。

 セバスチャンさんなら、このガラス球がどういう物かわかるかもしれないし、色々対処を考えてくれるだろう。

 だけど、原因が判明した事で、俺にはこの村でまだやりたい事が出来たからな……。


「タクミ様、お待たせ致しました。残りの樽も、すぐに運んで来ると思います」

「はい。それじゃあ、レオと一緒に樽の判別をお願いします。レオが吠える、うなる等をした樽は危険なワインです。それ以外は蔵に戻しましょう」

「わかりました」

「レオ、頼んだぞ。嫌な気配のする樽には吠えたりうなってハンネスさん達に伝えてくれ。大丈夫な樽は何もしなくて良いからな」

「ワウ!」


 ガラス球をどうしようか考えている途中に、ハンネスさんがいくつかの樽を村人達と運んで戻って来た。

 こうして話してる間にも、続々と村人達が樽を運んで来てくれている……相当な数があるだろうから、後でしっかりとレオを労ってやらないとな。

 ハンネスさんにレオを任せ、樽の判別をお願いして、こちらはこちらでどう動く考えないといけない。

 レオを連れたハンネスさんが樽の方に行くのを見送りながら、フィリップさんに話しかけられる。


「樽の判別が終わったら、レオ様に乗ってすぐに屋敷へ帰るのが良いかもしれませんね」

「それも考えたんですが、俺が帰るのはちょっと遅くなりそうです」

「どうかされたのですか?」

「ワインは村の皆も飲んでいるはずです。そのせいで疫病がこの村で蔓延したわけですが……これからまた病に罹る人が出ないとも限りません……」

「それは……確かに……」


 ワインは村の人達も飲んでいる。

 今症状が出ていないだけでこれからという人もいるだろうし、新しく病に罹ってしまう人が出るかもしれない。

 もしもの場合に備えて、俺はラモギを作りながら様子見をした方が良い気がした。

 日本の風邪と同じに考えるなら、一度罹って治れば、抗体が出来るんだろうが、ここの病が同じ物とは限らない。

 それに、まだ病に罹ってなかった人達もいるから、その人達がこれから発症してしまうかもしれない。

 疫病の中心地だった村だけに、しっかり見ておく必要があると思った。


「ラモギが必要になった時、俺ならすぐに作ることが出来ますからね」

「そうですね。タクミ様がここに滞在していれば、病も怖くないでしょう。……しかし、そうなると屋敷へ報せるのが遅れてしまいますな……」

「そこで、です。フィリップさん」

「は?」


 俺が帰れないなら、代わりの人が報せに行けば良いわけだ。

 村の人達は、ワインの事もあるし、病の事もある。

 レオにも慣れきっていない可能性もあるから、任せられないし、フィリップさんなら信用も出来るからな。


「フィリップさんが、俺の代わりにレオに乗って屋敷に報せに行く……というのはどうでしょう?」 

「……レオ様に……しかし、私は護衛です。タクミ様を放っておいてというのは……」


 元はハンネスさんの護衛のためにここに来たフィリップさんだけど、村に着いた時点から俺の護衛という役目になったのか。

 フィリップさんにとっては、護衛である自分かレオ、どちらかが俺の近くにいない事が気になるようだ。


「大丈夫ですよ。ここは平和な村です。襲われる事はないでしょうから。それに、もしもに備えて剣も習いましたし、魔法も教えてもらいましたからね」


 まぁ、実際には気休め程度何だと思う。

 けど何もしていないよりマシだと思うし、セバスチャンさんからの教えで逃げる事も覚えたから、何かあっても、すぐにどうこうなるわけじゃない……はずだ。

 そもそも、平和そうなこの村で、襲われるような事は早々無いと思うしな。


「まぁ……確かにこの村にいれば襲われる可能性は少ないでしょうが……」

「でしょう? 村の人達からは歓迎されていますし、皆良い人達に見えますからね。大丈夫ですよ」

「……わかりました。私が屋敷に報せて、すぐにレオ様に戻ってもらいます。それまで、無理はしないで下さい」

「はい、お願いします」


 何とか納得してくれたフィリップさん。

 言われなくても、無理をする気はないから大丈夫……適度にラモギを作りながらのんびり過ごしていればいいんじゃないかと思う。

 後は、樽の判別を終えたレオを待って、しっかり労うのと屋敷まで走ってくれるのをお願いするだけだ。

 ……ほんと、俺ってレオに頼りきりだなぁ。


「ワフワフ!」

「おー、レオ。終わったか。ありがとうな、ほんとに」

「ワフー!」


 数時間経って、ようやく全ての樽を判別し終えたレオが、俺に報告とばかりに尻尾を振りながら戻って来た。

 誇らし気なレオの体や頭を思いっきり撫でながら、先にハンネスさんの奥さんに用意してもらっていたソーセージを食べさせてやる。

 今回は特にお手柄だったから、ご褒美はしっかりあげないとな。


「ありがとうございます。タクミ様、レオ様」

「ハンネスさん。樽の方はどれくらい残りましたか?」

「そうですね……大体半分……といったところでしょうか」

「そうですか……」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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