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商売的な話になりました



「街中で評判になり、毎日多くが売れている。高い物ではないので利益という意味では多くないのでしょうが、それでも売れる商品があるというのは商人としても羨ましい限りですよ」


 そう言って笑うカレスさん。

 利益とかお金儲けという観点ではそこまででなくても、商品が売れるというのはそれだけで喜ばしい事だからな。

 在庫を抱えないで済むという点でもそうだし。


「その分、私はタクミ様のおかげで毎日、それなりのお客様をお相手させていただいておりますが……」

「ははは……えっと、薬草とか、薬の売れ行きってどうなんですか? 以前までは毎日卸していたので、なんとなくわかっていましたけど、今は少し離れていましたし、それにラクトス自体が活気付いているので、どうなっているのか」

「そうですな、街の外から来た方からお買い求め頂ける事が多くなりましたな。まぁ旅にはある程度、薬や薬草は必需品ですから」


 旅をしていれば、途中で怪我をする事もあるし病気になる事だってあるかもしれないから、ってところか。


「新しく来た方、ラクトスから去る方以外にも、タクミ様とレオ様、そして公爵家の方々の評判のおかげでそれなりに売れております。今回、こちらに伺うのが遅れた事で、売り切れる物も出ているくらいです」

「そうですか、それなり……まぁ薬や薬草が飛ぶように売れる、という事態はそれはそれであまり良くない気もしますし、それでいいのかもしれませんね」


 需要があるという事は、それだけ怪我なり病気なりになる人が多いという事でもある。

 売れていないわけではないようだし、病が流行った時のようにラモギが不足しているなんて状況でもないから、バランスとしてはちょうどいいのかなとも思う。

 商売をするカレスさんとしては、あまり好ましくないかもしれないけど……。


「先程はスリッパの売れ行きが羨ましいと申しましたが、そこはそれ。元々扱っていた商品をタクミ様の薬草なりを求めに来たお客様に勧めておりますからな。薬草や薬の利益を考えなくとも、以前より売り上げはかなり増えましたよ」

「さすが、抜け目がないですね」


 レオを客寄せに使う事を思いついた商売人のカレスさんだ、元々薬草などは売っておらず、他の商品を扱っていたのもあって、そちらでさらなる利益を上げているんだろう。

 ラモギを値下げした後、病が終息した後に大きな混乱なく値段を元に戻したらしいし、優秀な人だ。

 スリッパが凄く売れて羨ましいと言っていたけど、それも半分くらいはポーズな気がするな。


 ……バイトや就職など、それなりに仕事や販売する側の経験をしてきたけど、生粋の商売人であるカレスさんに俺は敵わないだろうし、俺が評価をする立場でもないから、烏滸がましいかもしれないが。

 販売店の店員くらいはともかく、従業員を持つくらいの規模以上の商店を経営とか、そういう才能は俺にはないだろうし。


「はっはっは、伊達に公爵家直営の店を任されておりませんよ。ところでタクミ様、薬草や薬なのですが……他にも何やら新商品があるようで」

「さすが、耳が早いですね……まぁ、ニックから聞いたんでしょうけど」

「ふふふ、商人は情報も重要ですからな……」


 楽しそうに笑いつつ、少しだけ声を潜めるカレスさん。

 内容的には特に問題ないけど、なんだか怪しい話をするみたいだ……と思って、ちょっと俺も乗ってみたら、なんだか「お主も悪よのう……」と偉い人が言いそうな雰囲気になってしまった。

 当然、山吹色のお菓子なんて物はない。

 ニックは置いてきぼりでキョトンとしているし、ライラさんは特に表情を動かさず、俺の後ろに控えているだけだけど……呆れられていないか少しだけ心配。


 それはともかく、新商品と言うのはミリナちゃんが作った薬の事だろう。

 もちろん、それは先んじて販売をしてくれているカレスさんの店に卸すつもりだし、ラクトスにはそこから広めてもらおうと思っているから、内緒にするつもりは一切ない。

 必要もないからニックに口止めはしていないし、読み書きなどを教えてくれるカレスさんの事はニックも信頼しているようだし、話すのも当然だろう。

 

「新商品なんですが、しばらくそれを目玉にしようかと考えていまして。ラモギは必要だったから飛ぶように売れましたけど、今はそれほどでもありません。まぁ薬や薬草がそれなり程度にしか売れていないのは、喜ぶべきでもあるんですけどね」

「ふむ、目玉商品ですか。それはなんとも興味をそそる言葉ですなぁ……?」

「俺が作る薬草、それと調合された薬を広めるための、要は広告みたいなものなんですけどね」

「広告、ですか。それはまた初めて聞く言葉です。ですが何やら、私の商人の勘がこの話は聞き逃してはならないと言っているように感じます」


 おや、広告という言葉はこちらの世界にはないのかな……? ユートさんとか、他にも幾人かが異世界から来た歴史があるみたいだし、広告を打って商品を広める商売をしていてもおかしくないと思っていたんだけど。

 まぁテレビやラジオなんてないから、CMは当然ないし、紙の値段も一般の人の手が出ないと言う程ではないけど少々高め、さらに印刷技術もそれなりで本なども結構高価となれば、チラシを配るなんてのもちょっと難しいか。

 識字率は高めみたいだけど、日本のようにほぼ百パーセントというわけでもないし、読めない人がいれば文字で広告を打つのも絶対的な効果があるわけでもないしな。


「広告と言うのはまぁ、商品の宣伝をするという事ですよ。言葉としてはともかく、概念としてはあると思います」

「成る程、商品の宣伝ですか……いやしかし、一つの商品を宣伝するというのは中々……こういう物を売っているお店です、といったお店自体の宣伝はありますが」

「ほとんどそれと変わらないですよ。こういう商品があるので、一度お店に来てみて下さい見たいな感じですから」


 一つの商品のみを宣伝、という事はあまりしないのか。

 まず店に来てもらう事が重要だから、お店全体の宣伝からというのもわかるけど。

 というか、それとほぼ変わらないけどな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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