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ラクトスが活気付いているようでした



「さすがアニキ!」


 カレスさんの言葉にお礼を言う俺に対し、とりあえず満面の笑顔で称賛するニックは……話している内容を理解しているのか、ちょっと疑問だ。

 と考えるのは、ニックに対して失礼かもしれないが。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 そんなこんなで客間に移動して、ライラさんが俺やカレスさん、それとニックにお茶を用意してくれる。

 せっかくなので、お茶を飲みつつエッケンハルトさん達を待つ間、カレスさんとちょっと話でもしてみるか……ただ黙って過ごすのもあれだしな。

 ちなみにエッケンハルトさんは、エルケリッヒさん達と森の調査に関わる人や情報を集める事を話し合っているらしい。

 クレアも、俺の薬草作りを見届けてからユートさんが去った後、すぐにそちらへ向かった。


 だから、カレスさんも来た事をゲルダさんが伝えたとしても、すぐに来れるとは限らない。

 まぁ、エッケンハルトさんなら話を切り上げて来そうではあるし、多分そうなるような気はしているけど。


「公爵家の別邸と違って、ランジ村は遠いので……こちらに来るまでに何か問題とかはありましたか?」


 費用なども含めて、ニックがラクトスと屋敷を往復するにあたって、何か問題があるようなら対策を考えないといけないからな。

 街道の方も着々と進んでいて、大きな問題はなさそうではあるけど。


「そうですな……おっと、その前に。タクミ様、私もそうですが、ニックがこちらに来るのが遅れてしまった事、申し訳ございません」

「……あ、も、申し訳ございません!」

「えっと……?」


 確認と世間話的な軽い話題のつもりで切り出したのに、なぜかカレスさんに謝られた。

 ニックはカレスさんが頭を下げるのを見て、真似している感じだけど。

 ……確かに、予定通りならニックは二、三日前にはこちらの屋敷に来て、俺の作った薬草を受け取り、ラクトスへ戻るはずだった。

 移動が順調なら、今頃ラクトスのカレスさんの店に薬草を届け終わっていたはずだ。


 けどそれは、今日到着する報せと一緒に遅れる事を受け取っていたから、特に気にしていなかったんだけど……。

 数日遅れるくらいはよくある事だろうと、構えていたのもある。


「とりあえず、頭を上げて下さい。あまり気にしていませんから」

「はい、ありがとうございます。遅れた理由ですが……少々移動手段の確保に手間取ってしまいまして……」

「移動手段、ですか?」


 車や電車のないこの世界では、駅馬はまだ始まっていないから、移動手段と言えば徒歩か馬だろう。

 馬はそれ自体に乗るか、馬車を曳いてもらうかで速度の違いはあるけど。

 ともかく、ランジ村にある屋敷とラクトスの街を往復するのなら、よっぽど余裕がないとかじゃない限り移動手段となり得るのは馬だろう。

 確保に手間取ったとカレスさんが言っているから、馬の手配が遅れたのが原因かな?


「その、現在ラクトスは稀に見る活気でしてな。それと直接関わっているかは微妙ですが、人の往来も多くなり、ラクトスに来る者去る者が増えているのです。それで、馬を用立てるのが遅れてしまい……」

「それで、数日こちらに来るのが遅れたんですね。それは仕方ないですよ」


 馬も無限にいるわけじゃないからなぁ。

 いつもより多くの人が必要とするなら、確保するのに時間がかかったのも頷けるし、仕方ないと思う。


「申し訳ありません、それを見越して私共が先んじて用立てておけば、遅れる事はなかったのですが……」


 と、再び謝るカレスさん……予約していればとかそういう事か。

 まぁ稀に見る活気というのが今のラクトスなら、カレスさんのお店のお客さんも多いんだろうし、そちらに気が回らなかったのかもしれない。

 とりあえず、気にしていないからもう謝る事もないと伝えておいた。

 ちなみに、馬を用立てるうえでこちらに来るのは基本的にニックの役目なので、カレスさんが任せたのが原因の一つでもあったようだ。


 スラムで育ったニックは、馬を用立てる方法というかそう言った細々とした事がよくわからなかったと。

 それで、カレスさんが一から教えながら馬の手配をしていたため、気付いた時には予定より数日遅れる頃になっていたと。

 カレスさん自身、お客さんが多くてそちらの対応にてんてこ舞いだったため、最初からニックに教えるのは難しかったとはいえ、責任を感じていたようだ。

 ニックの方も、反省しているようでしきりに頭を下げていた……そこまで気にしないでいいのになぁ。


「それで、ラクトスが活気付いていると言っていましたけど、何かあったんですか?」

「大元を辿れば、タクミ様とレオ様のおかげと言ってよろしいかと」

「俺とレオがですか?」


 ラクトスの街が活気付くような事は何もしていないはずだけど……。

 屋敷の家具や備品など、かなりお金を使ったりはしたが、それだけで街が活気付く程じゃないはずだしなぁ。


「タクミ様とレオ様のおかげで、ラクトスの治安が大分良くなりました。例の噂ですな」

「あ~、ありましたねそう言えば……」


 確か、悪い事をしていたら俺がレオに乗って颯爽とやって来るとかなんとか……。

 スラムでリーザがイジメられていた原因とも言えるディームを、捕まえた事からそんな話になったんだっけ。

 実際にはそんな事ないし、レオだってさすがに街で悪さをしている人を察知したりはできないだろうになぁ……できないよな?


「まぁそれで完全に悪事を働く者がいなくなるわけではありませんが、抑止力とはなっているようです。そして、レオ様というシルバーフェンリル、そのレオ様とともにいるタクミ様の噂なども広まり、興味を持った人がラクトスに集まっているのですよ。もちろん、タクミ様もレオ様も常にラクトスにいるわけではありませんから、それを知って去っていく者もいますが……元が通り道にもなっている街ですからな。悪人でない限りは来る者拒まず、去る者追わずで、それが活気に繋がってもいます」

「な、成る程……?」


 とにかく、人の出入りが多ければ多い程、街としては活気付くって事でいいんだろう。

 人が来れば物は売れるし、新しい物も入って来る。

 俺やレオがいないからと、早々に去っていくにしても消費活動をせずに出ていく事はないってとこか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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