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お金のためだけに働く気はありませんでした



「わかってた事だけど……話を聞けば聞く程、絶対に成功する商売だねこれは。ロエも増やせるんでしょ? タクミ君が国一番の大金持ちになるのも夢じゃないね」

「まぁ、うん。国一番の大金持ちとかにはならなくてもいいけど……あと、ロエは数を制限するようにしてる。必要な所には安く卸すけど」


 『雑草栽培』による薬草増産計画……もとい、どう増えていくかの説明を終えて、感心しているユートさん。

 高級薬草のロエが価格そのままで売れ続けるのであれば、確かに国一番の大金持ちにもなれるんだろうけど、お金儲け第一にするつもりはない。

 お金に目がくらんでそればっかりになるよりかは、俺はここでレオやリーザ、それとクレアと一緒にのんびりと暮らしたいと思っているから。

 生活に困らない収入があれば十分だ……多くの人を雇っている以上、その人達にちゃんとした給金が出せるくらいの利益は大事だけど。


「大量に出回れば、価格が崩壊するもんね」


 俺がロエの数を制限している、と言った事に関心を示すユートさん。

 需要と供給の観点から、確かに安くなるんだろうけど、実際はそれだけでなく市場が混乱したりする可能性もあるからなぁ。

 あと、どれだけ安くなるかはわからないが、大量のロエを販売できる理由などを探られたら面倒だし。


 『雑草栽培』というギフトを持っている事が、隠せなくなったら狙われる可能性とかもあるだろう。

 お安く求められるようになる事自体は、それだけ怪我で困る人が少なくなるだろうという意味では悪くないんだけども。

 

「でも、必要な所って言うのは?」

「兵士さんとか護衛さんとか、大きな怪我をする可能性の高い人たちがいる所、かな。今のところはエッケンハルトさん達公爵家関連の人達にだけど」

「成る程、成る程。怪我をしてもすぐに治せるロエがあるなら、多少の無茶もできるからね」

「……さすがに、怪我を顧みない無茶はして欲しくないけど」

「そこは、お父様に徹底させるようにお願いしてみます。お父様の事ですから、訓練でも無茶をさせそうですし……」


 一応エッケンハルトさんもある程度ちゃんと考えてはいるだろうけど、訓練で絶対に怪我をしないという保証はないしなぁ。

 ちょっとした怪我は日常茶飯事で、俺だってティルラちゃんだって、護衛さん達よりもかなり易しい鍛錬をしているのに、擦り傷切り傷くらいはあるから。

 俺はともかく、女の子のティルラちゃんに傷跡が残ってはいけないので、そういう時はロエを使って治療する。

 最近は、ミリナちゃんが作った傷薬で間に合うなら、それを使っているが。


「ただ販売するのとは別に、今言ったように必要な所で使ってもらうために、少しずつ量産するように考えてもいるかな。今は公爵家の関係者だけだけど、いずれはもっと広く使ってもらえるようにね。ほら、薬草を販売していく中で、公爵家だけってなると色々とありそうだし」

「お父様が上手くやれば、と思うのですが……そういった部分はあまり上手くないですから。私が言える事でもありませんが。お爺様やお婆様なら、上手くやれるのでしょうけど」

「まぁ、不公平だって騒ぎ出すのもいるかもね、心当たりもあるし……」


 公爵家だけ、ロエを潤沢に使える軍を保持しているとなれば、それはそれで周囲からの軋轢というか……要は、公平不公平の話しではないのに、ユートさんが言うように不公平だと言う人が出てきてもおかしくないって事だ。

 結局、市場にロエが大量に出回るのと同じく、俺へと他領貴族からの関心が向いたり調べられたり、取り込もうと考える貴族が出てきてもおかしくない。

 極端に悪い方へ考えると、命を狙ったりとかな。

 まぁ直接刺客を差し向けて来るくらいなら、俺が屋敷にいる限りレオやフェンリル達でどうとでもなると思うけど、それじゃ俺が自由に行動できなくなるし。


 このあたりの事は、既にエッケンハルトさんを交えて話をしていた。

 ロエを使うような事自体そう多くはないので、ある程度定期的に作るくらいで隣領に出荷する程度はできるだろうという事も含めてだ。

 けど隣領だけなら、それ以上に離れた場所までは行き渡らないので、前もって少しずつ数を増やして不平不満を和らげようという試みだな。


 そもそも、他の薬草も含めて一日に無理せず作れる数が限られているから、ロエは最低限を作る以外は後回しにとなっているんだけど。

 少しずつ数を増やして市場に流すくらいなら、混乱しないし大幅に値崩れもしないだろうという狙いもあったりする。


「でもそうだね、いずれという事であってもロエがもっと多くの人に届くのは、僕としても大歓迎だよ。怪我が原因での病気とかもあるからね。怪我しないのが一番だけど、どうしてもって時はあるからね」

「特にこちらの世界には魔物がいるから、転んで膝を擦りむくとか、料理していて包丁で手を切るとかよりも、大きな怪我をする可能性も高いし」


 地球よりも、遠出をせず一つの街で完結する人が多いとはいえ、街の外では魔物と遭遇する可能性もあるわけで……大きな怪我をする確率というのは、こちらの世界の方が高いと思う。

 車がないから自動車事故とかはないけど、その代わり馬車での事故もあるし。

 馬車その物が壊れるとか、人とぶつかる事が多いのだとか。


「まぁそんなわけで、ロエの数はしばらく制限しつつ様子を見て増やしていこうかなって。あくまで、今考えている予定ではあるけど。すぐに多くのお金が欲しいってわけでもないから」

「成る程ね。僕が言うのもなんだけど、タクミ君は欲がないなぁ……」

「こちらに来る前は、お金のために働いているだけになっちゃってたからってのもあるかもしれない。いや、最終的には仕事のために働いているという意味のわからない状態だったかもしれないけど」


 折に触れて、日本にいた頃を思い出したりはするけど……レオやお世話になった人達などはいいとしても、仕事に関してはあまり思い出したくない事が多い。

 心身共に辛い事が多かったから。

 その反動からか、お金を求めるためにあくせく働く気にはあまりなれないというのもあるかもな。

 もちろん、絶対働きたくないとかそういうわけではないけど。


 ただユートさんは、国を作ったりなども含めて色んな事をしているから、欲がないというわけではないんじゃないかな? とは思う。

 お金に無頓着そうな部分は見え隠れしているから、そちらの意味では俺と同じく金銭欲は薄いのかもしれないけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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