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1762/1996

日課の薬草作りをしました



「おはようタクミ君!」

「お、おはよう……ユートさん。朝から元気だなぁ……朝食の時はいなかったのに」


 翌日、寝不足で少しだけ重い体を動かし、身支度や朝食を終えて朝の薬草作りを開始しようとすると、どこからかやたらと元気なユートさんが現れた。

 どこからかと言っても、屋敷の中からだろうけど。


「昨日は久しぶりに頭を使ったからね。もうぐっすりだったよ! おかげで、こうして元気なんだけどね」

「朝食を食べないと、熟睡してもそれはそれで不健康な気もするけど……まぁ睡眠も大事かな」

「そうだよ、食べるより寝る! これはきっと人間が元気になるための秘訣だよね!」


 俺は食べる事も重要だって言いたかったんだけど……というかユートさん、俺とは違ってばっちり睡眠を取ったにしては、徹夜明けみたいなテンションになっている気がする。

 いつもはこんな事ないし、エッケンハルトさんとかと違って朝に弱いわけでもなく、特に寝起きだからって変わる事はなかったんだけど。


「タクミ君!」

「え、あ、何? って、もうちょっと落ち着いてくれると話しやすくて助かる」

「えぇ~、そう? 楽しみな事があったら、誰でもこうなると思うんだけど……タクミ君がどうしてもって言うなら仕方ないね」

「どうしてもとまでは言っていないけど……まぁいいか」


 俺が話しやすいというだけでなく、ユートさんの妙に高いテンションのせいで、一緒にいたクレアや俺の様子を見ていたレオやリーザ、それにティルラちゃんもキョトンとしているからな。

 元に戻せるのなら、戻ってもらった方がいいだろう。

 ちなみに、エッケンハルトさんとエルケリッヒさんはリーベルト家の血筋か何かなのか、朝に弱くまだ寝ているらしい。

 クレアやティルラちゃんは、そこは似ていないらしく朝はちゃんと起きて一緒に朝食をいただくのになぁ。


 あ、でもクレアは以前ティルラちゃん達と一緒に俺の部屋にお泊りした時、寝起きはふわふわしていたっけ。

 もしかすると、本当は朝が弱いのに頑張って起きているのかもしれない……近くに、エッケンハルトさんという朝の寝起きだけは反面教師になる人がいるからな。

 ティルラちゃんは、朝に弱い感じは一切ないからそこは遺伝子なかったのか、マリエッタさんや母親に似たのかもしれない。

 そのマリエッタさんは、朝食後のティータイムの後にさらなるティータイムを庭でやりつつ、子供達がフェンリルと戯れるのを眺めている……なんというか、そこだけ高級感漂う実に優雅な空間になっていた。


 実際、元ではあるけど公爵家当主の奥様だから、貴婦人としての立ち振る舞いが様になっているんだろう。

 怒らなければ、基本的に口調が荒くなる事もないし。


「タクミ君タクミ君、戻って来て―」

「あ、うん。ごめん、思考が逸れてた」


 ユートさんの呼びかけで、思考に耽っていた意識が戻ってくる。


「それで、ユートさんはどうしてここに?」

「どうしてだだなんて、タクミ君は酷いなぁ。タクミ君が薬草を作るんでしょ? もちろんそれを見るためだよ」

「はぁ……」

「溜め息だけで答えるって酷くない? もっとこう、ユートさんに見せたかったから良かったとか、そういうのはないの?」

「別に、必要ないのに見せる趣味はないし……」


 昨日もそうだけど、まだ続いているユートさんの『雑草栽培』の興味や好奇心、それを満たすためのハイテンションだったみたいだ。

 昨日新しく、新種を作っていた事などもあったからまだまだ続くのかもしれないが。


「そんなこと言っていいのかな? あれ、届いているんだけど……?」

「あれって一体……? ん、もしかして……」

「そう、椿油だよタクミ君。これでタクミ君の好きな女性はもっと美しく、タクミ君好みになると思うよ」

「それに関しては、肯定も否定もしないって事で」


 不特定多数の女性が好きだとも聞き取れる言い方はやめて欲しいけど、本人が望むなら美しくなりたいと思う気持ちを否定する事はない。

 ただ、クレアも近くにいるためなんとなく気恥ずかしくて、明言は避けておく。

 それに意味があるかはわからないが。


「じゃあ、すぐに試してみて実用できるかどうかを……」

「ノンノンノン。まずはタクミ君の薬草作りだよ。タクミ君の仕事でしょ? 先にそれが終わってからお楽しみだね。んー、そうだね……椿油が欲しければ、タクミ君の力を見せなさいってとこかな?」

「人質じゃないんだから全く……まぁ、薬草は作らないといけないから作るけどさ」


 とりあえず、人差し指を左右に振るのは止めて欲しい……あと、俺が仕事をするように促しているようだけど、実際は自分が『雑草栽培』を使っているところが見たいだけだろうに。


「えーっとそれじゃ……」


 ワクワクと期待した目で見ているユートさんは置いておいて……作る予定の薬草、アルフレットさんがリストアップしてくれた物を、整備した薬草畑とその他の場所で分けて作っていく。

 別で作っているのは、ラクトスに卸すための薬草だ。

 以前は毎日ニックが取りに来ていたけど、今は最低でも数日おき、場合によればもっと期間が空いてしまうため、作成量も多くなっているけどこれはできる時に作って保存しておくためだ。

 薬草畑の方は、区分けした畑を使ってその中央で畑一つに付き一種類の薬草を複数作っていく。


 こちらは、見た目が似ている物もあるため、混ざってわからなくなったり複数を混ぜて作ると、数が増える際にお互いを邪魔してしまう可能性があるためだ。

 植物によって、周囲の環境が影響する物もあるようだしな。

 と、いうわけで色々作って作業は終了だ……新種の薬草を作るわけでもないので、特にユートさんが期待している事も起こらず、滞りなく終わった。


「ずっと見ていたわけではないけど、やっぱりこうしてみると不思議だなぁ。一日で増えてるなんて」

「そうですね……サニターティムはこれからも必要になると思われるので、増える事自体は歓迎ですけど」


 薬草を作り終えて、畑を見渡しながら呟く俺にクレアが同意するように頷く。

 昨日作っておいたサニターティムは、その数が倍に増えていて、元の俺が作った物は既に枯れている。

 今は、ペータさん達畑を担当してくれる従業員さん達が、サニターティムが枯れた後の土を色々と調べてくれていると共に、枯れたサニターティムを片付けていた。


 一晩で花が咲いて枯れる、というくらいならともかく……数を倍に増やして枯れるというのは、雑草栽培でしか見られない光景だろう。

 植物を栽培、育てるというのは大抵少しずつ成長していく姿を見て行くものでもあるはずだし――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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