多くの人がランジ村や屋敷に来るみたいでした
「公爵領の全兵だけでなく、領民まで動員しても今タクミ殿の所にいるフェンリル達、全てにはかなわんだろうなぁ。そのうえレオ様もおられるわけだ」
「敵対するつもりはないので、その計算はしなくていいと思います……はい」
公爵領全体を敵に回すなんて考えた事すらないし、そんな事はしたくない。
とりあえず、フェンリルの戦力換算は止めよう……俺が思っていたよりも過剰過ぎて話し方も変になってしまったくらいだし。
「まぁ今は戦力よりも広く調べられる手が必要だからな。単純にフェンリルの強さと比べても何もならんだろう。そのフェンリルも、調査能力は優れているのだが」
とはいえフェンリルの数にも限りはあるから、人を増やして対処し、広い森をくまなく調査しようって事なんだろう。
それとは別に、クレアとセバスチャンさんがラクトスやその周辺で、人を集める以外に情報収集をしている事も報告していた。
芳しい成果はないようだけど。
……人が関係しているのなら、絶対街や村には立ち寄っているとは思うんだけどなぁ……よっぽど、怪しく見られないように注意をしているとか、誰かの印象に残らないように努めているのかもしれない。
「フェンリルの事はともかくとして、二千前後の人達がランジ村に集まるんですよね……? ちょっと、多すぎませんか? いえ、人手が必要というのはわかるんですけど……泊る所とか……」
とりあえず、最初にラクトスから二百人と聞いた時から思っていた事を聞く。
ランジ村の全住人でも、二百人いるかどうかくらいなのに……全部でその十倍の人が集まるとなると、村の中で寝泊まりする場所がない。
ランジ村入り口に新しくできたライ君達のやっている宿はあるが、そこだってせいぜい数十人程度。
詰め込んでも百人入るかどうかくらいだろうし……。
「タクミ殿との相談次第だが、一部は屋敷に。他は宿。入りきらないのが大半だろうが、それらはランジ村の外に駐屯する予定だ。そのための物資も同時に運ばせている」
「食糧や、滞在するための道具などですな」
そこはちゃんと考えられているんだ……まぁ、そりゃそうだよな。
大量の人を動かす事を知らない俺よりも、慣れているエッケンハルトさん達が考えていないわけがない。
食糧とか、二千人もいればランジ村だけでなく屋敷も含めて、備蓄されているのは一瞬でなくなりそうだし……ちゃんと準備して持って来るよな。
「なんにせよ、タクミ殿が心配する必要はないぞ。私やクレアだけでなく、父上や母上もいるのだ。万事……とは言わんが、滞りなくやるさ」
「そうですね。いらぬ心配でした」
公爵領の重要人物というか、公爵家の人達がまるまる屋敷に滞在している現状だ。
離れた場所にいるわけではないから、いちいち連絡を取って等をする必要もなく、すぐに指示ができる状況で俺が心配する事なんて何もないよな。
餅は餅屋じゃないが、エッケンハルトさんやクレアに任せておけば上手くいくだろう。
そのエッケンハルトさんが万事と言うのを躊躇ったのは、調査次第で思わぬ事があるかもしれないからだろうけど。
「それでだタクミ殿、先程も話にあったが屋敷での調査隊の一部が滞在する事なんだがな? クレアと共同……つまり半分は公爵家としても、やはりタクミ殿の持ち物という見方が強いからな。無断で滞在させるわけにもいかん」
薬草畑と同じで、屋敷もクレアと共同……建設費も含めて公爵家と折半したわけだけど、こういった事の決定権は俺にあるという事で良さそうだ。
フィリップさんやルグリアさんの調査隊が、基本的に俺へ報告したり、指示を出す役目だったりと、なんとなくそう見られているんだろうなというのは感じていたけど。
クレアが許可してもいいとは思うし、公爵家との折半ではなくともエッケンハルトさんが言えば、権力的に断れないというのもわかっているんだろう。
でもそれを良しとしないのは、むやみやたらに権力を振りかざさないと戒めているリーベルト家の人らしい、と言える。
「あ、はい。まぁ部屋はあまりまくっていますからね。自由に使って下さい」
屋敷の部屋は、俺達以外に使用人さんや従業員さんが使っているのも含めて、半分も使っていない。
部屋だって、使わないともったいないから。
管理というか掃除や手入れなどは、アルフレットさんとライラさん、ヴァレットさんやエルミーネさんの指示のもと、使用人さん達がやってくれているからいつでも使える状態だしな。
「そこまで、軽く承諾する物ではない……と言いたいところだが、助かる。ここに至っての相談となったのはすまない」
「いえ。ある程度は、屋敷に来るんだろうなぁとは思っていましたから」
人数は想像以上に多かったけど、ルグリアさん達近衛護衛さんのように、宿との交代で滞在しているみたいになるんだと考えていたけど。
自由にしていいというのは、エッケンハルトさん達が集めた人達というのと、兵士さんであれば規律などに厳しいと想像できるから、変な事も起こらないだろうと考えてだ。
まぁ、屋敷全体が物々しい雰囲気に包まれるだろうけど……武装した人が多くなるわけだからな。
ただそこは、のんびり屋なフェンリル達やレオに癒してもらえば、俺達だけでなく従業員さん達も休まるだろうし。
……パプティストさんは、人が多くなって顔を出せたり一人の時間が減って、心休まるのは難しくなるかもしれないが。
「あ、でも……」
「なんだ、タクミ殿?」
「タクミさん、何か気になる事が?」
ふと思った事があって声を漏らすと、エッケンハルトさんとクレアさんが心配顔でこちらを見た。
いや、断るとかそういう事ではないから、不安に思ったり心配する事はないもないんだけど。
「いえ、単純に食事はどうするかなぁと。食糧とかそういう事ではなくて、食べる場所ですね。今は庭でできるだけ皆一緒に食べていますけど……」
どれくらいの人数が屋敷に滞在する事になるのか、まではまだ決まっていないけど、人数が今の倍以上になるのは想像に難くない。
現状でも、数十人のひとが一緒に食事をしていて、大人数に馴染みがない俺にとっては毎日がホームパーティの様相だ……レオにラーレ、コッカー達やフェンリル達もいるしな――。
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