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速度を上げていた中でレオが察知しました



「それじゃ……クレアもセバスチャンさんも一応、気を付けて。リーザもな」

「はい!」

「畏まりました」

「うん!」


 エッケンハルトさん達の方はそれぞれで備えてもらうとして、速度を上げても振り落とされる事まではさすがにないだろうけど、一応備えておく。

 握っている手綱と一緒に、リーザを強めに抱きしめる。

 セバスチャンさんは俺の方から見えないが、キャビンの中で倒れたりしないよう強い揺れに備えてくれているはずだ。

 クレアの方は……。


「ク、クレア。嬉しい気持ちもあるんだけど、ちょっとそれは……」


 隣のクレアは、手綱を握っている俺の腕に寄り添う……というよりもはや抱き着いている格好だ。

 確かに、落ちたり揺れに備えるためになるかもしれないけど、豊かな胸部のあれが押し付けられているようで落ち着かない。

 

「いけませんか? こうしていると、なんだか安心できるんですけど」

「い、いや、駄目というわけではないし、今更感もあるけど……んっ、よし! それじゃこれで行こう!」

「はい!」


 上目遣いでこちらを見上げるクレアは、なんだか甘えているようで可愛い……といかんいかん、意識をもっていかれそうになった。

 いつもは朝起きて最初に会った時や、寝る前にそれぞれの部屋に戻る時、などにハグをしているから今更といえば今更だし、そういう時も甘えられている感があったけども。

 それ以外で甘えられるのも悪くないどころか……という邪な考えを振り切って、このままで行く事を決定。


 うん、嫌なわけじゃないからな、俺も男だし、クレアは恋人で付き合っている相手となるわけだし、いけない事というわけでもないし。

 なんて、誰に言い訳しているのかわからない考えを頭の中でしつつ、レオへと指示を投げかける。


「レオ、一気には危ないから少しずつ速度を上げてくれ! 駄目そうなら、また声をかけるから。徐々にだぞー!」

「ワフ! ワウゥ……」


 意識が腕の方に集中しそうなのを、無理矢理レオの方へとむける。

 意気込むように鳴いて返事をしたレオが、グンッと速度を上げて走り始めた。


「これはまた、結構な揺れですな。ですが、このくらいならなんとかなりそうです」

「もう少し速くなっても良さそうですね……」


 レオが器用なんだとは思うけど、本当に車がゆっくりと少しずつ加速するように徐々に速まる。

 今は、馬が人を乗せて急いでいる時くらいの速度だろうか……速度計がないから、詳しい速度はわからないが。

 多分、道路を制限速度内で走る車と同等かそれ以上くらいの体感速度かな。

 周囲の景色は流れているけど、近くに建物などもなく開けているのでそちらでも速度を推し測るのは少し難しい。


 ともかく、通常の馬車ではあり得ない……馬が疲れるか馬力が足りないか、もしくは馬車の耐久的な問題で、出せない速度を大幅に越えて走っていると考えていいと思う。

 そうなると、さすがにこれまで吸収されていた揺れや跳ねた時の衝撃が、ダイレクトにお尻へと響いてくる。

 キャビンの中から声を出すセバスチャンさんも、声が揺れる程だ。

 とはいえそれでも、馬車の方から軋みなど危険な音は聞こえてこないため、まだ少しくらいは余裕がありそうだ。


「レオ、もう少しだけ速度を……」

「ワウ? ワッフワウガウ!」

「え!?」

「タクミさん?」


 限界まで確かめないといけないって程じゃないけど、余裕を感じるならと思い声をかける途中で遮るように、レオからの警告を促すような鳴き声があげられた。

 少し驚いて声を上げる俺を、腕に抱き着きながら見上げるクレア。

 うぅむ、やはりこうして近くで見ると本当に美人で整っていて……美人は三日で飽きるなんて言葉は嘘なんだなと実感でき……じゃない!


「んんっ! レオによるとこの先に魔物がいるって……」

「魔物がですか? どうしましょう、方向を変えますか?」

「いや……ここは打ち合わせ通りに行こうかな。レオ、大丈夫そうか?」

「ワッフワフワフ!」


 どんな魔物かまではわからないが、進行方向に魔物がいるという事らしい。

 レオの事だから、かなり先でそこに辿り着くまでもう少しかかりそうだけど……実際に、目を凝らしても魔物は影も形も見えないし。

 ともかく、引き返したり方向を変えるのではなく、準備中にフェンリル達が並走して参加する時に打ち合わせした通りに、対処する事に決めた。

 フェンリルが関わっているから、こういう時の決定権や指揮権みたいなものは、エッケンハルトさんとかではなく俺になるのは不相応だと思わなくもないが……。


「レオは少し速度を落としてくれ! エッケンハルトさん、魔物がいるようですので手はず通りに!」

「わかった! 頼むぞタクミ殿!」

「はい!」


 エッケンハルトさんにも声をかけて、レオには速度を落としてもらい……次は……。


「……よし! フェンリル達はお互い横に距離を近づけて、子供達を安全に! 落としたりしないようにな!」

「ガァゥ!」

「ガッフ!」

「セバスチャンさん、お願いします!」

「畏まりました!」


 馬車と並走しているフェンリル達に声をかけると、一部がそれぞれ速度を落として止まり、子供達を降ろし始める。

 こちらもレオが速度を落とし、ゆっくりと止まり降りた子供や大人達の一部を、セバスチャンさんに頼んで馬車の中に収容。

 同じくエッケンハルトさんやルグレッタさんも、降りた子供や大人達を馬車の中に収容してくれている。

 ここまでするなら、方向を変えればいいと感じるかもしれないが、駅馬が開始されてフェンリルが曳く馬車を走らせていると、魔物と遭遇する事が想定される。


 そのための動きを訓練するためと考えれば、方向を変えずに前もって打ち合わせしていた通りにするのがいいだろう。

 フェンリルに直に乗って移動というのもあり得るし、方向を変えて迂回するくらいなら、護衛も兼ねているフェンリルに任せてしまった方がという考えでもある。

 ちなみに、魔物を排除するフェンリルは決めてあり、それ以外のフェンリルにはまだ人が乗ったままだ……さすがに全員を馬車に乗せるのは人数オーバーだからな。


「全員、乗り終えました!」

「こちらもだ、タクミ殿!」

「完了です、いつでも!」

「了解しました! それじゃレオ、行くぞ……!」

「ワフー!」


 セバスチャンさん、エッケンハルトさん、ルグレッタさんからの報告を受けて、再びレオに走ってもらう。

 とはいえ、レオが直接魔物をというわけではないんだけどな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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