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ルグレッタさん達の関係を心配をしました



 手綱の事はともかくとして……ユートさん達の方はと言うと、何故かルグレッタさんが握っている手綱がユートさんの体に巻き付けられていた。 

 一体何があったのか……ユートさんが御者台から飛び出そうとしたとかかな?


 まぁなんにせよ、それでも楽しそうだから気にしなくて良さそうだ。

 ルグレッタさんは憮然としているけど……そろそろ、ユートさんはルグレッタさんを労ってあげないと、見放されそうな気がしなくもない。

 仕事を放りだす人ではないと思うから、ユートさんの護衛兼お目付け役という任務がある限り、放り出す事はないとしても、愛想は付かされてもおかしくないし。


「飴と鞭……この場合、お互い鞭を打ち合っているような……?」

「タクミさん?」


 揺れが少ない分、余計な事を考えたり話しやすくなったのもある、と勝手に馬車のせいにしてみるがともかく、俺が呟いた言葉にクレアが反応。

 隣で余所を見ながらブツブツ言えば、気になるのも当然か。


「あぁ、ごめんごめん。ちょっとあっちが気になって……」

「ユート閣下とルグレッタさん、ですか……なぜ手綱が体に巻かれているのでしょうか?」

「うん、それは俺にもわからないけど、ユートさんが何かしたかしようとしたんだと思う」

「……かもしれませんね」


 これがユートさんの信頼度。

 俺だけでなく、ユートさんにはそうされてもおかしくないとクレアにも思われるくらいの信頼度、ってとこか。

 ユートさん本人が喜んでいるし、そうするのをルグレッタさんにも求めているのを皆知っているから、というのもあるかもしれないが。


「それで、雨? と鞭というのは?」

「えっと、俺の元いた所でそんな言葉があってね……」


 飴はこちらでは一般的ではないのか、飴を雨と聞き取った、もしくは翻訳して伝わったらしい。

 その物を知らないから、別の意味として翻訳されたりもするのかもしれない。

 日本語は同じ音や読みでも、別の意味になる事が多いからややこしいな……。

 とりあえず、興味津々といった雰囲気がキャビンから伝わってくるセバスチャンさんも含めて、簡単に雨ではなく飴の事を伝えつつ、飴と鞭の言葉の意味を話した。


 頭の片隅で、べっこう飴なら誰でも簡単に作れるよなぁ……と子供の頃に教えられた経験と記憶を思い起こしながら。

 ただ砂糖が高い物だから、実際に作れるかは相談しなければいけないか。


「まぁ、ユートさん達に関してはお互い鞭だけのような気がしないでもないけどね」

「甘さと厳しさを、飴という甘いお菓子と、鞭に例えたわけですか……確かにタクミさんの言う通りですね。時折、ルグレッタさんがかわいそうに思える時があります。本人は同情を望むような人ではないと思いますが」

「そうだねぇ。なんとなく、このまま見ているだけだったら何も変わらない…悪い方に変わる事はあるかもしれないけど、いい方向に向かう事はない気がするなぁ」

「ほっほっほ、悪い方向にはならないだろう、というのはありましたが……私どもがタクミ様とクレアお嬢様を見ていた頃と似たようなものですな。いえ、こちらはもっとやきもきしているのもいたようですが、それもまた楽しいものでした。もちろん今もお二人を見るのは楽しいですが」

「セバスチャンさん……」

「もう、今はそうじゃないからいいのよ」


 俺とクレアの関係が、近しい人達をやきもきさせたとか楽しませたのは、いいとして……ルグレッタさんの気持ちを知っている俺とクレアは、なんとなく気が気じゃない部分が多々ある。

 いや、俺はランジ村への移動中の男子会とやらで、なんとなくユートさんが自覚しているかしていないかはともかく、あちらの気持ちも少し察している部分はあるけど。

 俺やクレアよりも長い間だと思われるが、ずっと変わらず続けてきた関係っぽいし、きっかけとは言わないが何か外からの刺激? みたいなのがあると一気に進展するようなしないような………?

 恋愛経験豊富ではないし、男女の機微に聡いとは口が裂けても言えないから、余計な事はしない方がいいのかもしれないが。


「なんにせよ、考えるだけは考えておこうかなって。いい案が出るとは限らないけどね……」


 そう言って苦笑する。

 クレアも同じく苦笑しつつ、俺と同じく何かしら考えてくれるようでもあった。


「さて、こうしてのんびりレオや馬車を走らせながら、話しているのも悪くないけど……そろそろ本題の新馬車の耐久テストをしないと!」

「てすとー!」

「ワッフ!」

「ふふ、そうですね」

「ふぅむ、私としましてはどちらも興味深いのですが……」


 キャビンの方で何やら呟いているセバスチャンさんはいいとして、気分を変えるように少し大きめの声で宣言。

 テストという言葉の意味がわかっているのか微妙なリーザが復唱し、走っているレオも同意するように鳴く。

 ただ馬が曳く時と同じような速度で走るのが、今回の目的じゃない。

 新しい馬車が、レオやフェンリル達の走りに耐えられるか試すのが目的だからな。


 これまでの馬車だと、短時間なら耐えられてもかなりきしんでいたようだし、遠くへの移動には使えなさそうだった。

 それが新しい木材、仕組みや細部を金属で補強した馬車ならどうなのか、だ。


「エッケンハルトさん、ユー……ルグレッタさん! それからフェリーとフェン、リルルも! ここから速度を出して馬車の試験をします!」

「了解した、タクミ殿!」

「グルゥ!」

「どうして、僕を呼ぼうとして止めたのかなぁ!?」

「畏まりました、タクミ様! 閣下はもう少しおとなしくしていて下さい!」

「ガウ!」

「ガウゥ!」

「キャウー!」


 突然レオが加速したら皆驚いてしまうだろうと思い、エッケンハルトさん達にも一声かけておく。

 これはまぁ、出発する前の準備中に話し合っていた事でもあるけど。

 ユートさんではなくルグレッタさんに言ったのは、手綱を握っているからで他意はない……かもしれない。

 あと、何故かフェンの背中に乗ってご満悦なシェリーも意気込むような鳴き声を上げているけど、走るのはフェン達だぞー?


 まぁフェンの方もシェリーが背中に乗って張り切っているようだから、気にしなくていいのかもしれないけど。

 最初はレオの背中か、ティルラちゃんやクレアに抱かれて一緒に御者台へ……と話していたら、フェンが拗ね始めたから、その背中に乗っていたりする。

 最近は……これまでもだったけど、シェリーはあまりフェンの背中に乗る事がなかったから。

 羨ましそうにレオを見ている事もあったくらいだしなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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