ギフトを敵視する所や人もあるようでした
「完全な平和ってわけでもないけど、多くの人が住めるようになったこの国の土地を欲しがった、というのがほとんどなんだけどね。まぁともかく、ギフトを排除したいという考えの人もいるっていうのは覚えておいた方がいい」
「本来あるべき世界って言っていたけど、つまりギフトは外から流れ込んだようなものって事?」
「そうそう。起源が異世界から来た人間だからね、元々この世界にはなかったと考えるのも無理はないんだけど……ほとんどが、嫌うとまではなっていなくて、それでも排除したいと思う人はいるってわけ。この国ではそうした考えには染まっていないし、染めさせないようにしているけど……でも」
「隣国でもあるから、全てを強制できないし、もしかしたらそういう考えになる人がいてもおかしくないってわけか」
「多分、ほとんどいないとは思うんだけどね。どちらかと言うと、この国にいる人というよりも……」
「その国から来た人がって?」
「うん。今は表立って敵対はしていないから、当然この国にも入って来る。ただ距離も離れているし実際に他国の事だから伝わるにしても、簡単にはいかない」
「だから、ほんの少し気を付けるってわけか。成る程……わかった、気を付けるよ」
俺自身が狙われるかも、という可能性はエッケンハルトさん達から教えられていたし、自分の身を守るために剣の鍛錬もやっている。
けどさすがに国としての考えとなると、俺個人ではどうにもならないからなぁ。
エッケンハルトさん達のおかげで、必要最低限の人や信頼できる人にのみギフトの事などを教えていて、広く喧伝する事はないし、どちらかと言えば内密にしているから、ある程度安心できる。
だから、ユートさんとしてはどこからどう伝わるかわからない部分もあって、一応気を付けておいてと言いたかったんだろう。
「ありがとう、おかげで少し気を引き締めなきゃって思えた」
時折、こうして注意喚起じゃないけど真面目な事を言うから、ユートさんは侮れない。
本来は侮っちゃいけない地位にいる人ではあるんだけど、見かける行動や言動でついついぞんざいなあつかいになってしまうんだよなぁ。
ともあれ、まだまだこの世界について知らない事が多い俺にとっては、ありがたい助言ではあるし、素直に受け取っておこう。
「まぁでも、普段のどこか弛緩したような雰囲気は嫌いじゃないからね。森での事やフェンリルとか、緊張感を持ってなきゃいけないかもしれない部分はあるけど……余計な事を言ったかも……?」
「余計な事なんて……もし敵視するような誰かに目を付けられたら、面倒な事になってもおかしくないし、俺だけじゃなく他の人にまで迷惑をかけるかもしれないから……」
「そうだけど、でもそうじゃないんだよタクミ君」
「え?」
再び、ちっちっち……と今度は口には出さなかったけど人差し指を立てて左右に振るユートさん。
「迷惑とかはともかくとしてね? ここにはレオちゃんがいる。それに、大量のフェンリル達もいるでしょ? それだけじゃなくコッカーとトリース……あとフェヤリネッテはまぁいいとして。ラーレってカッパーイーグルもいる。こんな場所、国一つや二つでどうにかしようとしても、逆にその国が滅んでもおかしくない」
「えーと……? 言われてみれば、そうなの……かな?」
レオは言わずもがな、最強の魔物と言われていて、その片鱗はいくつか見たし聞いてもいる。
フェンリルは一体だけでも軍隊でどうにかできるか、という魔物で、さらに国一つに匹敵すると言われているラーレ……カッパーイーグルもいる。
今更だし、何度も考えた事はあるけど、この場所、俺がいる屋敷には過剰過ぎる戦力が集まり過ぎているような?
「世界のバランス、とかを言っちゃうとここは過剰過ぎるけど、それをタクミ君とレオちゃんがまとめているから問題にはなっていないし、多分ならないと僕は思ってる。でも、手を出すようなバカタレがいたら、その限りじゃない。まぁこの国以前の魔境よりも敵対したら危険な場所に手を出すのなら、国家滅亡なんて覚悟の上だろうし、覚悟しているだけじゃ足りないくらい……」
「ユート閣下、その辺りで。タクミ様が困っておられますよ」
まだまだ話の途中、だったのかもしれないけど、言葉が止まらないユートさんをルグレッタさんが止めてくれた。
どうやら、リーザに筋肉がなんなのかを教えるのは終わったらしい。
まぁ、過剰過ぎる戦力に関しては考えていた事だから困ってはいないけど、俺以上な認識をユートさんが持っているんだ、なんて唖然としていたくらいだが。
……唖然としていたら、困っているともとられておかしくないか。
「おっと。ちょっと言い過ぎたかもね。まぁでもレオちゃん達に関しては今言った通りで、だから一応注意というか気を付けるように言ったけど、あまり気にしないでいいかもね。ここにいる限り、絶対の安全が保障されているような物だから。まぁ、警戒して損はないかも、と言うくらいだよ」
「う、うん、まぁ、そういう事なら……ありがとう、言ってくれて」
わかったようなわからないような……? でもとりあえず、あまりおおっぴらに『雑草栽培』の事を喧伝しない方がいいというのはわかった。
これまでもそうだったから、基本的には変わらないけど、一応新しく誰かに教える時にはユートさんに言われた事も念頭に置いて気を付けるように覚えておこうと思う。
「うん。まぁそういうわけだから……ね? ほらほらタクミ君!」
「え?」
「もう一度、新種作成チャレンジだよ! 今度は何かわかるかもしれないし、新しい発見があるかもしれないから」
「いやでも、さっき作ったばかりだし……」
途端に雰囲気が変わったユートさんは、さっさと切り替えたんだろう。
手で俺に『雑草栽培』を使うよう言葉と共に催促を始めた。
感覚的にはまだまだ余裕があるから作れなくはないけど、気を付けると言ったそばからまた作るのはなぁ……。
「一応、さっきのでわかった事もあったし、今日はもういいんじゃ……?」
「何を言っているんだい、全て解明したわけじゃないでしょ? こういうのはトライアンドエラーで、調べて行くのがいいんだよ。決して、僕がまた見たいからって好奇心だけじゃないからね? 失敗は成功の母だよタクミ君!」
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