魔法にもできない事を可能にする新種薬草でした
「ロエが新種、と言われるなら納得だけど……ふーむ、疲労回復とかの方が新種なのかぁ」
「実際に、僕自身もロエが自生しているのを見つけた事があるからね。新種じゃないのは間違いないよ。疲労回復の方はそうだね……あくまで新種とわかってからの考察になるんだけど、いいかな?」
「一応、聞いておこうかな」
俺が作った物の事だから、それが確かな事とまでは言えなくても聞いておきたい。
ユートさんのこちらを窺う視線に、深く頷いた。
俺が首を振っても、ワクワクして話したそうにしているから、多分話していたんだろうけど。
「疲労と筋肉……筋肉の方は筋肉疲労と言い換えてもいいけど、とにかく疲労は外から見えない体内での事だよね?」
「まぁ、確かに」
顔色が悪いとか、色々と表面に症状が出る事はあるけど、怪我と違ってはっきり目に見える形とは言い難い。
筋肉が表面に出ていたらそれはそれで大きな怪我だが。
場合によっては、自分でさえも自覚できない部分で疲労していた、なんて事も病院で検査したら発覚する事だってあるくらいだからな。
「筋肉ー?」
「ワッフ」
「んー?」
「リーザ様、筋肉というのはですね……」
筋肉に興味を持った、というかよくわからなかったリーザが首を傾げ、レオがリーザの腕などに鼻先を近づけて、ここにあるみたいな事を伝えようとしているみたいだが、よく伝わらなかったらしい。
筋肉とか、レオにはわかるのか……いや、野生というか獣として動く時に筋肉を意識している、とかかもしれないが。
ともあれ、あちらはルグレッタさんが教えてくれるようなので、任せておこう。
……筋肉を鍛えるのは素晴らしい、とか、裏切らないみたいな不穏な事を言っているのが気になるけども……リーザが筋肉フリークにならない事を祈る。
「そんな目に見えない疲労というものを、綺麗さっぱり消せるなんて何をどう作用させればできるのかわからない。もちろん、魔法では不可能だ。それこそ、魔力が適合したとしても。疲労は病気とはまた別物だしね」
「まぁ病気は基本的に原因があるものだし……全ての病気を植物や魔法とかで治せるなんて事もないだろうし」
ゼンマイの事があるけど、とりあえずそれは棚に上げてそう言う。
魔法に限らず、対処できる方法や薬などがないからこそ、不治の病があるわけだしな。
というか、考えれば考える程ゼンマイの凄さが際立つな……。
試したいとは思わないけど、もしかしたらそれこそロエで治せる怪我とかも、ゼンマイならゆっくりとでも治せてしまえたりしないだろうか。
ロエがあるのでできたとしても、あまり意味がないだろうけど。
「疲労が過ぎれば過労になるけど、あれを病気と言うには微妙だからね。過労によって体に変調を来したり、命に関わる病気を併発させたりはするから危険なのであって」
過労……と聞くと、俺自身の事を言われたような気がして、少しだけ胸に来るものがある。
今は多少疲れるくらいはあっても、過労とは程遠いし日本で仕事していた時の事ではあるけどな。
結局、この世界に来る直前に倒れたのはおそらく……いや、間違いなく過労だろうし。
「とにかく、そんなわけで疲労回復薬草と筋肉回復薬草は新種だろうって事で間違いないと思う。光っていたから、それだけでほぼ決定だろうけど……納得できたかな?」
「まぁ一応は」
光っていてももしかしたら、この世界にも存在している薬草なんじゃないか、という考えが頭の隅にあったし、それをユートさんもなんとなく察していたんだろう。
ともあれ、今の説明で全てが理解できたわけじゃないが、新種の薬草である可能性は限りなく高い……もしくはほぼ決定という事で納得しておくしかないか。
新種かどうか、なんてこれからにあまり関係ないかもしれないが、扱いを少し考えるきっかけにはなるからな。
というか、だからこそミリナちゃんが作った薬も、ロエの特殊性と疲労回復とかでの調合に多少の不思議があったのかもしれない。
「あともう一つ、ロエもどきだっけ? あれはもう新種で間違いないよね。作る時に光っていたとか関係なく。後遺症が残っていたとしても、怪我そのものは治っているのにそれを回復させるなんてね」
「考えようによっては、シェリーの怪我を治したのと変わらないくらい、とんでもない薬草って事かぁ……」
ロエもどきが新種なら、フェルはまだしもデモンストレーションのためとはいえ、ガラグリオさん達に使ったのは軽率だったかもしれない。
フェルの片足が不自由だった事は、直接接している人がほとんどいないから知られていないけど、ガラグリオさん達は違うからな。
事故などで動かなくなった、というのは暮らしていれば周囲に当然知られていたはずだし……それが治ったなんて。
まぁ、ほとんどがレオと一緒にいるからとか、シルバーフェンリルの奇跡みたいに噂されているし、本来この世界にはないだろう植物という事まではわからないだろうけど。
「逆に身体強化薬草と、感覚強化薬草の二種、安眠薬草は……」
「光らなかった、と判断できる事もあるけど、そうだね……それらは魔法でも実現可能だからってのも理由の一つかな。人間に使える魔法じゃないんだけどね」
身体強化薬草はユートさんも近い物、もしくはそれその物だったのかもしれないけど見た事があるようだし、魔法でも再現可能ならあっておかしくない、という判断でもあるらしい。
ユートさんは省いたようだけど、作用的にとんでもないと言う程でもない効果だから、とかもあるのかもしれないな。
安眠薬草、魔法で似たような効果があるのならそれもだけど、不眠などで悩んでいる人は喉から手が出る程の物かもしれないが。
処方された睡眠薬や睡眠導入剤のような、副作用もないようだし。
いや、さすがに大量摂取したら危険だと思うが。
「確か、身体強化魔法は獣人専用の魔法、とかだったっけ?」
「リーザちゃんがいるから、当然それも知ってておかしくないよね。うんまぁ、獣人のみってわけじゃないけど、それに近いかな」
獣人専用、というわけではなかったようだけど……とにかく人間が使えない魔法の中に、身体強化や感覚強化、睡眠を促す魔法があるってのは間違いないようだ。
全ての魔法が使えるらしいギフトを持っているユートさんだからこそ、その言葉は確実性を持っていると言えるのか――。
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