どの薬草が新種か判明しました
「うん、わかった!」
「ワフッ!?」
そんな風にルグレッタさんと話しつつ、家族について考えていたら、ブツブツ言っていたユートさんが突然大きな声を出した。
レオは突然の大きな声に、少しだけ体をビクッとさせて驚いていたけど、俺やリーザ、ルグレッタさんも同じくだ。
なんとなく頭から抜けていて、ユートさんの事を忘れかけていたからかも――。
「……んんっ。えっと、ユートさん。結果はどうだったんだ?」
『雑草栽培』に関する全ての謎を解き明かす、というわけではないけど、俺が作った薬草でどれが新種でどれがそうじゃないのか、がわかったんだと思う。
俺やルグレッタさんにはわからなかったけど、薬草を作る時手元が微かに光っているような光っていないような、という事もあったらしく、そのために考え込んでいたみたいだけど。
「うんとね、もったいぶる必要はないから結論から言うけど……」
「ふむふむ……」
ユートさんの判定によれば、一部本当にかすかな光が放たれているような、そうでもないような? だったから難しかったらしいけど、ともかく新種の薬草。
それは、ロエもどきと疲労回復薬草、それから筋肉回復の薬草の三種らしい。
ゼンマイや、シェリーの怪我を治療した物も合わせれば、全部で五種作りだしたって事になる。
というか、ロエもどきも新種だったのか……シェリーの時もそうだけど、ロエを参考にして新しく作ろうと考えたから、『雑草栽培』の結果にも出たのかもしれないな。
「身体強化薬草と、感覚強化薬草の二種、あと安眠薬草は新種じゃない?」
「そうだね。身体強化薬草ってのは、似たような効果の物を見た事があるし……感覚強化だっけ? 二つあるあの薬草はちょっと判断に迷ったけどね。安眠のための薬草も、多分元々ある植物だと思うよ。筋肉回復薬草の方も迷ったんだけどね」
筋肉回復薬草と感覚強化薬草の二つに、光っているのか微妙で判定に迷っていたのか。
ユートさんですら見逃してしまうくらい、淡い光が筋肉回復薬草の方で発せられていたようだ。
逆に感覚強化薬草の方は、何かの光の反射がそれっぽく見えそうだったとかそういう事かな。
「つまり、新種じゃない薬草三種……感覚強化は二種あるから全部で四種か。それらは、実際にある植物って事か」
「そうだね。僕はまだ試した事がないけど、身体強化とかは薬草じゃなくても魔法である事だしね。魔法にあるから、植物に似たような効果の物がある。逆もしかりだけど、そうじゃなくても魔法だけ、植物だけっていう事もあるとは思うけど。ロエとか、怪我を治すような魔法ってないし。いわゆる治癒魔法ってやつだね」
魔法で似たような効果の物があるから、存在している可能性が高いという事か。
ユートさんも言っているように、だからと言って絶対ではないし、逆に植物にあるから魔法にもあるわけじゃないらしいけど。
でも、考え方としては存在してもおかしくないし、実際にユートさんが見た限りでは光を発していなかったから、新種ではなくどこかにある物なのかもしれない。
「治癒魔法……それは、こちらの世界でもないんだ。見た事はないけど、あるもんだと思ってた」
「ゲームとかではね、回復魔法は当然のものとしてあることが多いけど。じゃないとゲームにならなかったり。でも、さすがに実際にはね……でも考えてもみて、魔法、つまり魔力をもって他者に干渉して、怪我を治すんだ。他人の魔力が入って来るのは場合によっては危険な事が多いんだよ。血と魔力が似ているって言ったでしょ?」
「血と似ていると考えると、輸血するみたいな感じ?」
「そうそう。輸血は地球では医療技術として確立されているけど、それだってどんな血でもいいわけじゃない。適合するか検査をして、ようやく他人の血を体に入れる事ができる……んだと思う。よく知らないけど」
医療系の知識は、ユートさんはあまり持っていないんだろう。
まぁそれは俺も同じだけど。
大体の認識として俺もユートさんと変わらない程度で、輸血自体はそう言ったものだと考えている。
もし適合しない血液を輸血したら、命の危険があるという事は知っているけどどうなるかまではよく知らない、とかそんな感じだ。
つまりはゲームを筆頭に、物語などにある治癒魔法、回復魔法と言い換えてもいいけど、それらはこの世界では存在しないし似たような効果の魔法もないって事で間違いないみたいだ。
「それじゃあ、ロエって……」
「群生している場所が定かじゃない、見つけてもそこで数が増え続けるわけでもないんだ。タクミ君は能力でなんとかなるけど、植え替えて栽培しようにも上手くいかない、そんな不思議な植物だね。わかっているのはその効果と、魔力を多く含んでいるというくらいかな。幸い、この国では群生しているのを見つけられる事が多いから、珍しくはあっても探せば見つかるかも? くらいの物になっているけどね」
「そりゃ……確かに高価にもなる、のかな」
この国と他の国で、見つかる頻度などがどう違うのかまではわからないけど、ロエ自体がそこまで解明されている植物でもないってわけか。
根付かないのなら数を増やせないし、探すか偶然見つけるかしかない。
そりゃまぁ、家が建つくらいの値段で市場に出るのも当然かな……この国以上に珍しい扱いになっている場所なら、もっと高価な値段で取引されるんだろうけど。
「ロエは割と最初の方に作ったし、貴重だとは聞いていたけど……それこそ、ロエが世界樹の葉とかそれに類する物でも不思議じゃないくらいのように見えてしまうかも」
「せかい、じゅ?」
「ワフゥ」
リーザがよくわからない様子で、世界樹と口にして首を傾げ、レオが溜め息を吐く。
いやまぁゲームとかの話になっちゃうけど、世界樹の葉やそれに近い物といえば、どんな病気や傷でも治すとかで、ものすごく貴重な物だ。
ロエの効果だけを考えると、そこまでじゃなくても近いのを感じてしまう。
……シェリーが負った瀕死の重傷すら治した、俺の作った新種の薬草の方が近いか。
「お、タクミ君もわかる口かな? そりゃそうだよねぇ、国民的な日本で代表されるゲームの一つだし。まぁ正確には世界樹の葉じゃなくてしずくの方だろうけどね」
「いや、ゲームの話は今はいいんだけど……」
もちろん俺も、やった事があるし当然知っている国民的ゲーム。
日本人ならやった事はなくとも、名前を知らない人を探す方が難しいだろう。
ともかく、今はゲームの話をしているんじゃなくて……。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。