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1741/1997

フェンリル達は調査に参加したいようでした



「はぁ、まだユート様の仕事が終わっていないのですが、仕方ありませんね。申し訳ありません、タクミ様。私を気遣って下さったために余計な作業を……」

「いえ、ルグレッタさんには元気でユートさんを管理して欲しいですからね。必要あるかはともかく、これまで謎だった部分がわかるなら、余計な事とは思いません」


 抱えているユートさんを降ろしながら謝るルグレッタさんにそう言って、畑から少し離れた場所へと移動した。

 ……自分の能力にも関わる事だし、疲労回復薬草とかが実際にあり得るのかどうかを探るのも、悪い事じゃないはずだ。


「んー、この辺ならいいかな」


 畑から離れ、区分け代わりに植えられている人の背より高いくらい木々からも離れて、何もない土地。

 そこで、『雑草栽培』を試すために立ち止まる。


「ワクワク、ワクワク」

「口に出さなくても……ちゃんと見てて。まずはさっきと同じように疲労回復薬草を……っと?」


 表情などだけでなく、口でもワクワクと言って興味深い様子を隠さないユートさんに溜め息が出そうになるのを抑え、地面にしゃがみ込んだ。

 地面に手を突こうとしたその時、屋敷の外壁の方から何やら声が聞こえる。


「ワウー!」

「パパー!!」


 声と共に、レオがリーザを乗せて走って来る。

 どうやらあっちは、頼んでおいたのが終わったみたいだな。


「ワッフ、ワフワフ!」

「ははは、わかったわかった。偉かったなぁレオ! リーザも!」

「きゃふー! うん、皆頼んだらすんなり飲んでくれたよー!」

「そうかそうかぁ」


 俺の前まで来て急ブレーキをかけて止まるレオ、その背中から降りるリーザ。

 レオは尻尾を振りながら俺の顔を舐めて来るのを留めつつガシガシと撫で、もう片方の手でリーザの頭を撫でて褒める。

 レオ達には、フェンリルにサニターティムの丸薬、発光しなくなった物を食べてもらうようお願いしていたからな。

 フェヤリネッテは美味しいみたいな事を言っていたけど、フェンリルだけでなく人にとってもあまり美味しい物じゃなく、口にするのを躊躇していたんだよなぁ。


 それを、ゼンマイの薬を飲ませた時の事を思い出し、レオに頼んで食べるようにするのとリーザもそれを手伝うと意気込んでいた。

 食べさせたのは、ある程度の数の花弁をまとめて丸薬にすれば予防効果の時間が延びると、フェヤリネッテのおかげでわかった事が大きいが、それだけじゃない。


「レオ、リーザ。フェンリル達はどうしてる?」

「ワフ、ワーウワフワウ!」

「隊長のお姉さん? 達と一緒に、森に行く準備してるみたいー」

「そうかぁ、やる気だなぁ」

「フェンリル達も、やり返したいんだろうねぇ」


 ユートさんが言うように、やり返す……森の中で偶然なのかはともかく、嗅がされたカナンビスの薬の香り。

 それに対する調査など、フェリーがフェンリル達の意見としてどうしても調べて突き止めたいと、申し出て来たんだ。

 復讐という程物騒な感じではなかったし、そんな事をフェンリル達にさせたくはないが、被害を被った側としては黙っていられないと言ったところだろうか。

 ともかく、だからといって何も対策をせずに森に入るのは危険で、またカナンビスの薬がないとも限らない。


 だからこそ、サニターティムの丸薬を食べてもらったってわけだな……まだ余る程量産できていないから、調査隊と一緒に森へと行くフェンリル数体分くらいだけど。

 ちなみに、一つの丸薬は花弁五つ分でフェヤリネッテが調べてくれた現状で最長になる、十六時間のやつを食べてもらった。

 それなりの大きさの丸薬になったからこそ、味が嫌いとフェンリル達が躊躇してしまうのもわかる……噛まずにそのままだと、喉につっかえるだろうし。

 ちょっと長めで、数分程度は誤差が出るみたいだけど、とにかく十六時間もあれば森の調査には過分なくらい予防効果に余裕があるからな、念のためだ。


 で、今はレオとリーザが言っているように、フェンリル達は早速ルグリアさん達と調査に行く準備をしているのか。

 準備と言っても、丸薬さえ食べればフェンリル達には特に準備する事は多くないが、参加できるようになったのでルグリアさん達の方が色々とやる事があるんだろう。

 調べる範囲も広がるし、持って行くものや装備もフェンリル達が運んでくれるおかげで、多くなるからな。


「ねぇねぇ、それよりも薬草作り、しようよー!」

「それよりもって、森の調査も大事な事だと思うけど……まぁいいか」

「ワウ?」

「ここで、薬草作りするの、パパ?」

「あぁそうだよ。レオとリーザには話したけど……」


 ユートさんのねだるような言葉に、レオやリーザから手を離しもう一度しゃがみ込む。

 隠し事をしたくないとまでは言わないけど、レオとリーザには俺の『雑草栽培』については既に話してある。

 新種の薬草、つまり本来存在していない物を作る能力があるのかもしれないっていう部分だな。

 とりあえずユートさんから急かされるので、疲労回復薬草など、これまで俺が作った本に載っていない物を一部を除いて作りながらレオ達に話す。


 除いた一部の薬草はゼンマイと、シェリーの怪我を治した薬草だ。

 ゼンマイは基本的に作るのを禁止、というわけではないけどどうしてもの状況ではない限り、内密にする事になっているため。

 シェリーの怪我を治した薬草は、力の消費が激しいから念のため除外ってわけだ。

 こんな明るいうちから、リーザの目の前でお酒を持ってきてもらうとか、グビグビと飲む姿を見せたくない……大丈夫だとは思うが、飲んだくれだとリーザに思われたら立ち直れそうにないし。


「っと。こんなところかな。これまで作った薬草、本でも見かけなかった物を全部作ってみたけど……」

「ふーむ……成る程、成る程」

「スンスン、ワフゥ?」

「食べちゃだめだぞ、レオ。お腹空いてるのかー?」

「リーザもお腹空いたー!」


 何やら考えている様子のユートさんはともかく、俺が作った薬草に鼻を近づけるレオには一応注意。

 というか、リーザもお腹空いたのか……まぁ元気に動き回っているから、消費が激しいんだろうな。

 俺もそれなりにお腹が減っているし、昼食の時間が近いのもあるんだろう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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