『雑草栽培』だけ他のギフトと違うようでした
「タクミ君、君は一体何者なんだい?」
「いや何者って……ユートさんと……じゃなかった、こことは別の世界から来て、ギフトを授かったってだけの人間だけど。というか、それはユートさんも知っているでしょ?」
「そうだけどね……んー……面倒だから、いいか。――マリエッタちゃん、今から僕が言う事などは口外しないように。ハルト達は知っているし、多分ある程度は察しているんだろうけどね」
「は……はい?」
マリエッタさんにあぁ言ったって事は、ギフトとかの話をするってところか?
面倒だからって……さっき俺を部屋の隅に連れて行って、内緒話をした意味がなくなるじゃないか。
とはおもうけど、ユートさんの様子を見るにそんな事まで構っていられる余裕みたいな、いつも飄々としている雰囲気が消えているので、突っ込むような感じでもないか。
後で、ルグレッタさんに怒られなきゃいいけど……いや、それもまたユートさんにとってはご褒美か。
「とにかくタクミ君、ギフトっていうのはね? この世界にある何かしか使う事はできないんだよ」
戸惑っているマリエッタさんはそのままに、話し始めるユートさん。
聞き返すような返事だったと思うけど、ユートさんからすると承諾のように聞こえたのかもしれない。
エルケリッヒさんが真剣な表情でマリエッタさんの肩に手を置き、頷いて見せているから後で何かしら話をするんだろうな。
「この世界にある物……? でもゼンマイとかはこの世界にもないって……」
「まぁ僕も、世界全ての植物を把握しているわけじゃないから、確実とは言えないんだけどね。でも、シェリーの怪我を治したのもそう、ゼンマイもそう。それだけの効能がありながら、無名で誰にも知られていないっていうのは、ほとんどない事だと思うんだ」
「まぁ、それは確かに……」
効果が確かなのだから、そんな薬草が誰にも知られていないというのはおかしな話だ。
ユートさんも言っている通り、絶対この世界にないとは言えないのかもしれないが、効果が強い物、高い物だからこそどれだけ珍しくても知られていてもいいかなとは思う。
まだ誰も解明できていないだけ、という可能性もあるけど。
「で、ゼンマイとかがこの世界にない物だったとしたら……それは『雑草栽培』なんて力じゃ説明できないんだよ。それこそ創造に近い。さっきも言ったように、ギフトの力はこの世界にある物を利用する力。僕の『魔導制御』で言えば、この世界であり得る範囲の魔法を使う事ができる。そしてこの世界にある魔力をいくらでも利用できるってわけだ」
「創造……」
何もない場所に、植物を生やすのだからこれまでも創造的な力だなぁ、くらいには考えた事がある。
それが、本来ないはずの物を作り出す……それはラモギなどの既存の薬草を作り出す事よりよっぽど、創造という言葉が合っているように思う。
「タクミ君の『雑草栽培』って、本当にそうなのかな? って疑問はあるけど……」
「と言われても……名称とかは、イザベルさん。えっと、魔法具商店の人に調べてもらったから」
「魔法具って事は、あれかぁ。水晶に見えるけど違う、魔力とか調べる物の事だね。あれは結構前にギフトであれやこれやをやって作ったものだったけど……」
そう言えば、以前セバスチャンさんにギフトの有無や魔力を調べる道具が、ギフトを持つ人が作ったって言われた覚えがある。
確か、この世界に来てすぐの頃、俺にギフトがあるかという疑問が湧いてその時の事だったと思うけど……。
その言葉通り、本当にギフトを持った人が作った物らしいな。
あれやこれやというのはよくわからなかったけど、ともかくユートさんが明言しなかったのでこの世界で遺伝なりでギフトを受け継いだ人か、それとも異世界から来た人なのかはわからない。
ともかく、その魔法具……見た目が水晶玉だったから材質はその物、もしくはガラスなどだと思ったけど、そうではないらしい。
ティルラちゃんを調べる時、俺やリーザが使った物は壊れてしまったため、大きな物をイザベルさんが持ってきていたけど……あの様子を思い返すに、水晶っぽくてもそれより軽い材質なんだろう。
そしてあの魔法具、現在の用途としては魔力を調べるために使われているわけだけど、本来はギフトを調べるための物だったらしい。
ギフトの詳細がわかれば、こちらの世界に来た人や受け継いだ人なども気付きやすく、ちゃんと使えるようになるだろうから。
俺も調べてもらうまでは、ラモギを作ったり乾燥させたりなど、不思議な出来事で自分の能力だなんて思っていなかったからなぁ。
知って使うのと、知らずに使うのでは随分と違うはずだ。
そもそも、『雑草栽培』自体も意識して使うのと、無意識に使うのでは多少違いが出たりもするから。
具体的には、状態変化をかける時にちゃんと薬効成分を抽出した状態になるか、それとも最初のラモギのように乾燥するだけかなど。
もちろん、前者の方がちゃんと意識して使った場合だ。
「ギフトを使える人が困らないように、その力を使えるようにって作ったわけだけど、実際にはギフトを持っている人が少なすぎるからね。本当は魔力を調べる機能の方がおまけだったんだけど、今ではそちらがメインとして使われているよ」
「魔法具の用途目的としては、むしろ逆だったんだ……」
セバスチャンさんも知らないんだろうな、言い方としてはギフトがわかるのがおまけみたいな感じだったし。
ギフトを持てる条件を考えたら、本来おまけであるはずの魔力測定が主目的で使われるのも仕方ないんだろう。
ユートさんを除けば、現在この国でギフトを持っている人物は俺しかいないみたいだし、世界全体で見てもかなり少ないと思うから。
遺伝というのもあるみたいだけど、必ずじゃないのはエッケンハルトさんを見ていてもわかるし、異世界からこの世界になんてもっと少ないはずだ。
「それで、あの魔法具を使ったのなら、『雑草栽培』で間違いないかぁ。でももしかしたら、あれでも調べられない何かがあった、とか……? あ、そうだタクミ君。『雑草栽培』を使う時に何か変化とかってなかった? えーと、ゼンマイを作る時とか、いつもと違う感覚だったとか」
ユートさんに言われて、腕を組みながらフェンリルの時も今回も、ゼンマイを作った時と他の植物を作った時の感覚を思い出してみた――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。