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とんでもない薬草を作っていたようでした



 予防効果がどれだけ続くのか……こちらはじっくりと調べる必要があるけど、何度も丸薬を食べたフェヤリネッテが予防効果らしきものが切れると感覚的にわかるらしいので、いちいちカナンビスを作って試さなくてもいいのは安心だ。

 できれば、これっきりにしたいからな。


 たとえ俺自身の精神的ハードルが下がったとしても……あと、クレアの心労的にも。

 心配する事も嬉しい事だと言ってくれたけど、できるだけ心配させないに越した事はないからなぁ。

 ところで……。


「さっきから静かだけど、ユートさんは何を……?」


 サニターティムがカナンビスに効果的だとはっきりわかり、エッケンハルトさん達は沸いている状況だというのに、一人だけ……ユートさんだけは妙に静かだ。

 いつもならこういう時、真っ先に騒ぐのに。

 騒ぐ、というのも言い方として正しいかわからないけど、カナンビスを敵視すらしているように思えるユートさんは、喜んでもおかしくないはずなのに。


「これ、前フェンリル達に飲ませたのと同じものだよね、タクミ君?」

「え、あ、うん。ゼンマイを作って、それを状態変化させて液体になったものだけど……」


 どうしているのかと思ったら、ゼンマイの薬効成分を抽出したと思われる、状態変化した液体の入った器を凝視していたユートさん。

 器と言っても、少し大きめでちょっとしたサラダボウルくらいはあるだろうか。

 それになみなみとは言わないまでも、半分くらいはゼンマイの液体が注がれている……何やらユートさんは、それを凝視してわなわなと震えていた。

 道理で静かだと思ったけど、何故ゼンマイの方に関心が?


「断言はできないけど、多分こっちの薬の方がカナンビスに対処するサニターティムより、大きな発見だと僕は思うんだ」

「え? それはどういう……」


 確かゼンマイを作る時、毒素のような物を体内から少しでもなくなれば……みたいな事を考えて作ったはず。

 その毒素がカナンビスの事だけど、それで劇的にフェンリルの体調がよくなったかと言われればそうではなく、多少治りが早くなるという程度だったし、ユートさんが震えつつ大きな発見だと言う程ではない気がするんだけど。


「カナンビスに対処するために作ったはずだけど、これは多分どんな病気にも効果があるはずだよ」

「どんな病気にも……?」

「ちょっと言い過ぎたかもしれないけど、とにかく体内に入り込んだ、本来体にあっちゃいけない物をゆっくりと消し去る。そんな効果があるはず」

「えーっと……」


 体の中の異物というか、病原とかを取り除くとかそういう事かな?

 体内のみであれば、全ての病気とは言い難いのかもしれず、そのためにユートさんは言い過ぎたと口にしたんだろうけど。


「例えば、特効薬のない病気でもこれがあれば劇的に改善とまではいわないまでも、ゆっくりと快癒に向かうはずなんだ。それこそ、不治の病だったとしてもね」

「そ、そんなに凄い薬草だったの!?」

「む?」

「どうしました、タクミさん?」


 思わず大きな声を出した俺に、サニターティムの効果などについて話していたエッケンハルトさんやクレアが気付き、注目される。

 ただそんな事よりも、不治の病すら治す可能性がある薬草……いや、状態変化させているからもう薬と呼んでもいいかもしれないが、ゼンマイの薬にはそんな効果があったなんて……。


「ど、ど、どうしてそんなことがユートさんにわかるんだ? フェンリル達のために作った時は、そんなこと言っていなかったと思うんだけど……」


 不思議そうにこちらを見るクレア達に説明する余裕はなく、ユートさんに疑問をぶつける。


「あの時は、あまり詳しく見ていなかったからね。でも、とんでもない物を作ったんじゃ? みたいなことは言ったと思うよ」

「そ、そうだったっけ……?」


 最近の出来事ながら、ゼンマイを作った時の事は覚えているけど、何を言われたかまでは覚えていない。

 あの時はフェンリルを助けないとという気持ちでいっぱいだったし、状態変化で液体になってそれを受け止める器を用意してもらうとか、別の事を考えていたから、というのは言い訳かもしれないが。


「とにかく、サニターティムの丸薬と同じになっちゃうけど、効能に関して絶対とは言えないまでも、さっき言ったような効果があるだろうというのはほぼ間違いないと思う。実際に、フェンリル達がこれのおかげで早く治ったんだし」

「それは、確かに……」

「ユート閣下、それにタクミさん? そのゼンマイの薬がどうされたのですか……?」

「えっと、これが大発見というかとんでもない物を作っていた……って事になるみたいなんだけど……」


 俺達の話を全部聞いていなかっただろうから、よくわからずキョトンとするくらいしかできないクレアに聞かれて、部屋にいる皆にユートさんから聞いた事を説明する。

 すぐにではなくとも、不治の病まで快癒に向かうと聞いてリーベルト家の皆だけでなく、テオ君までもが驚いていた。

 そりゃそうだよな。

 特にマリエッタさんやエルケリッヒさんなどは、病に詳しいとかではないけど年齢的に縁があると言って、ユートさんと同じようにゼンマイの液体が入った器を凝視するようになった。


 本人達が病気を、とかではなく同年代の近しい人や昔馴染みの人達が、病気になってという意味での縁があるって事なんだろうけど……。

 そりゃ、年を取れば取る程病気にもかかりやすくなるし、その中には何らかの理由で完治しない病気にかかってしまう人だっているよな。


「……これはまた、安易に世に出すわけにもいかない物ができたな」

「広まれば、タクミさんを狙う者が当然のように増えるでしょうね」


 ユートさんと違い、エッケンハルトさんやクレア達は喜んだりはせず、どちらかというと難しい表情。

 それもそうか……薬だけでなく毒だって作れる、というかその素材になる薬草が作れるわけで。

 ロエみたいな高級な薬草もさる事ながら、不治の病すら治す可能性のある薬草を、それもいくらでも作る事ができるんだから。

 正直、自分で言うのもなんだが俺の重要性が一気に跳ね上がった気がしてしまう。


 いやまぁ、これまでもレオの事を含めて重要性という意味では高かったのかもしれないが。

 だからこそ、公爵家で手厚く歓迎されてお世話になっているというのもあるかな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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