発光しなくなった丸薬も試しました
「さて、それじゃフェヤリネッテ。何度も申し訳ないけど頼むよ」
作った植物を全部摘み取り、一部のサニターティムを状態変化で発光丸薬にした後、少しだけ待ってひかりが収まるのを見届けてから、フェヤリネッテにお願いする。
今度は、発光していない状態で本当に効果があるのかと、予防効果についてだ。
「了解したのよう。これも魔力球のためだし、あまーいカナンビスを食べられるのだから悪い事じゃないのよう……んぐ」
光がなくなった毒々しい色の丸薬を、躊躇なく口に入れるフェヤリネッテ。
それはいいんだけど、カナンビスって妖精にとって好物になるのかな? さすがに作るのは今回だけで、食べたいからって用意する事はできないんだけど。
……その時は、ユートさんに代わりの魔力球を出してもらえばいいかな。
結構魔力を消費するらしいけど、元気が有り余っているようでもあるし……。
「ん、タクミ君。今何か僕の事考えていなかった?」
「……気のせいだよ」
特に目を向けていたわけでもないのに……ユートさんは勘が鋭いのかもしれない。
ともあれ、ユートさんは誤魔化しておいてフェヤリネッテの方だ。
「んー、んぐんぐ……やっぱり甘いのよう。甘い物は元気の源なのよう」
丸薬に続いて、カナンビスを口に入れるフェヤリネッテは、咀嚼して顔を綻ばせる。
そんなに甘いと言っていたら、味の方で興味を持ってしまう人が出ないか不安だ……。
ここにいる人達は危険性をわかっているのでともかくとして、カナンビスの効果を知らない人達とかがなぁ。
「……どうだ、フェヤリネッテ?」
「ちょっだけ待つのよう。焦るとよくわからなくなるのよう」
「あぁ、ごめん」
ついつい、気持ちが急いてしまって聞いてしまった。
発光丸薬の効果がはっきりしたけど、光が失われた丸薬に何か効果があれば……と。
ともあれ、フェヤリネッテの言う通り焦ってもなんにもならないので、クレア達と話ながら気持ちを抑えてしばらく待つ事にした。
「うん、わかったのよう」
「お」
数分程度だろうか、話しをしている俺達の頭上をフワフワと飛んでいたフェヤリネッテからの言葉に、俺だけでなく皆が反応する。
「どうだった?」
「結論から言うと、カナンビスの効果が打ち消されているようだったのよう」
「それじゃあ!」
「おそらくだけど、発光していない丸薬でもカナンビスに効果があるのよう。これが予防? に繋がるかはまだはっきりとは言えないのだけどよう」
丸薬を先に食べておき、カナンビスを後に摂取した場合はカナンビスの効果が打ち消される……フェヤリネッテの言葉通りなら、それはつまり予防効果と言えると思うんだけど。
でもまぁ、まだ色々と確かめてみないとな……。
そうしてしばらくの間、俺がカナンビスやサニターティムの丸薬を作り、ちょっとした条件を変えて効果を確かめる作業が続いた。
『雑草栽培』でカナンビスを作る度に、クレアから心配そうな視線を感じるけど……これはギフトの過剰使用ではなく、カナンビスを作る事に関しての心配をしているようだ。
サニターティムを作る時などは、そんな視線を感じないからな。
心配させて申し訳ない……と思うのは、フェンリル厩舎で夜を明かす際に話した事で、多少抑えられるようになったし、むしろありがたいと感じる。
最初は作る事に抵抗があったけど、何度も作っているうちに慣れて来てしまったから、おそらくそれに対する心配もあるのかもしれない。
俺自身も心配していたように、本来作ってはいけない植物を作る事に対しての精神的なハードルはかなり下がったように思うけど、逆にカナンビスの事をよく知る事ができた感覚があって、これから先間違って作るなんて事もないだろうとも思う。
必要であれば躊躇せずに作れるようになったとも言うけど……それは裏を返せば、意識すれば簡単に作れるという事でもある。
これからは、今まで以上に気を付けてハードルが下がったからといっても、安易に作るなんて考えを持たないように意識的に考えるようにしないとな。
「成る程、成る程なのよう。これは大発見なのよう! でも……うぷ。ちょっと食べ過ぎたのよう」
「ありがとうフェヤリネッテ。おかげで色々とわかったよ」
「美味しかったから、気にしないでいいのよう」
順番を変えたり、量を変えてみたりと色々と試してほぼ確定と言える結果が出た。
その代わり、丸薬とカナンビスを食べ続けたフェヤリネッテは、お腹……なのかモコモコの毛に隠れてよくわからないけど、心なしかポッコリといつもより大きくなった部分をさすっている。
この分だと、フェヤリネッテはしばらく食事できそうにないな。
まぁ味の方は好みらしく、フェヤリネッテ自身も満足そうだからいいけど。
「えーとつまり、こういう事ですね……発光している丸薬は、カナンビスの効果が出た対処として有効。だけど、先に摂取していたら後から入って来たカナンビスには効果を出さない。代わりに、発光していない丸薬の方は、先にカナンビスの効果が出ていた場合には効果は出ない。逆に丸薬を先に食べていればカナンビスが効果を出す事はない……と」
「発光しなくなった丸薬こそが予防効果のある薬というわけだな」
「そのようです」
俺のまとめに返すエッケンハルトさんに頷く。
発光している丸薬は、すでに発揮されたカナンビスの効果に対して。
発光しなくなった丸薬は、カナンビスの効果を出さない。
ちなみに、ミリナちゃんが発見した保存法を試すため、今日こうして試す前に作って乾燥させていた花弁と根を合わせて『雑草栽培』の状態変化で作った丸薬でも、同じ効果だった。
「量は、発光さえしていれば効果を打ち消すのに問題なく、予防も一つのサニターティムからできる丸薬以上があればと……」
「それと、丸薬に含まれるサニターティムの花が多ければ多い程、予防する時間が増える。という事でよさそうだの」
「その辺りは、本当にそうなのか時間をかけて調べる必要がありそうだわ」
続いて、クレア、エルケリッヒさん、マリエッタさんが効果の確認。
さすがに予防効果がどれくらい続くかなどは、フェヤリネッテにもすぐわかる事ではないらしく、経過を見つつ調べる必要があるようだ。
とりあえず、花弁一つで大体数十分の予防効果。
これが、花の個数を増やすほど加算されるのか……それとも、乗算されるのかなども調べないとな。
あと、上限というか最大の予防日数などもあるのかなどもだ。
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