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ついでにゼンマイも作ってみました



「ほら、ユートさん。せっかくフェヤリネッテのおかげでわかった事があるのに、嫌がる事をやらない」


 飛び回って逃げるフェヤリネッテを、追いかけようとしているユートさんの肩に手を乗せて止める。


「えー。でもタクミ君も気になるでしょ? 僕らだと、なんとなくの感覚があってもカナンビスの効果を打ち消したなんて、すぐにわからないよ」

「それはそうだけど……」


 詳細を検査して、経過も観察してやっとはっきりわかるくらいかな、やったとしても。

 それなりに時間がかかるのは当然だし、そもそもそんな設備がない場所で調べるのは不可能だからなぁ。

 確かに俺も、フェヤリネッテの体を包むモコモコ……もしかしたらそれすら体なのかもしれないけど、その内側というのが気にならなくはない。

 けどこれだけ調べてくれているのに、本人が嫌がっている事をするのはな。


 むしろ、褒めたりご褒美をあげないといけないくらいだ。

 ……フェヤリネッテにとっては、ユートさんの作りだす魔力球がご褒美になりそうだけど。


「とにかく、調べたい気持ちがあってもそれはフェヤリネッテと相談して、話し合って聞けばいいだろうから、それで」

「ちぇ、仕方ないかぁ」


 飛び回っているフェヤリネッテに手を伸ばしているユートさんを引き剥がす。

 残念そうにはしているけど、すぐに納得した様子を見ると半分くらいは冗談だったんだろう。


「はぁ、はぁ、助かったのよう……」


 ユートさんの手から逃れて、俺の頭の後ろにくっつくようにして隠れたフェヤリネッテは、息を切らしている。

 飛び回るのって結構体力を使うのかな? まぁ人間で言うと走り回っているみたいなものかもしれない。

 ともあれ、そんなちょっとした余談の時間がありつつ……。


「愚問かもしれんが、サニターティムを多く作る事は可能かタクミ殿?」

「はい。まぁ他の薬草を作らないといけないので、ある程度数は制限されるでしょうけど……薬草畑を使って、数を増やす事もできると思います。調整もできると思うのですぐに」

「うむ、よろしく頼む。もちろん、備えになるのだから報酬なども用意せねばな……」


 と、サニターティムを生産する話をしたりした。

 サニターティムは、効果はともかく疲労回復薬草とかと違って特殊な植物ではないため、『雑草栽培』で作っても他のラモギなどと同じように多くの力を使わないはず。

 まぁ販売用というわけではないし、そもそも丸薬にして発光していなければいけないから、多く作らなくてもいいだろうし、どれくらい作るかはアルフレットさん達と相談して決めればいいだろう。

 薬草畑の方では、畑その物の準備が終わって今はどこにどんな薬草を作って増やすか、などの予定を決める最終段階ってところだ。


 そこにねじ込む事になるけど、畑にも余裕はあるし、俺が無理をする程じゃないなら大丈夫だろう。

 もちろん、以前考えていた休耕期というか複数の畑を順番に使って、場合によっては土も入れ替えて草木の生えないような事になるのは防ぐつもりだけども。


「あ、そうだ。ついでなのであれも試してみておいた方がいいかな……」

「あれ、とはなんでしょうタクミさん?」

「フェンリル達のために作った、ゼンマイだよ。あぁ、ゼンマイっていうのは、俺が勝手にそう呼んでいるだけだけど」


 他にも、サニターティムの丸薬が発光していない場合や、特に欲しい効果である予防に関して調べる段階に話が進み、その中でゼンマイの事を思い出した。

 ついでなので、そちらも作って試してみようってわけだな。

 あれもカナンビスに対して、少しは効果があるみたいだったからこの機会に調べておいて損はないだろう。


「フェンリル達に飲ませた薬の元になった薬草ですね。ゼンマイですか……不思議な響きですが、他に呼称がない植物であればそのままでいいかもしれませんね。せっかくタクミさんが決めたのですから」

「いやまぁ、俺が決めたっていうのはちょっと微妙な気がするけど……まぁいいか」


 ゼンマイという植物自体は日本にあったからなぁ。

 山菜として知られているけど……俺が考えて付けた呼称ってわけでもない。

 まぁ知らないクレア達からすると、俺が作りだして名前を決めたように見えるんだろうけどな。

 何はともあれ、追加でカナンビスとサニターティム、それからゼンマイを鉢植えで作っていく。

 数を増やすため、そのままにしていなければ土の栄養は一度で完全に失われないため、作った物を根っこから引き抜いておけばまた使えた。


「とりあえずサニターティムの丸薬を……っと。――すみません、マリエッタさん達にも手伝ってもらって」

「いいのよこれくらい。タクミさんに色々と負担をかけてしまっているのだし。本格的ではないけれど、こういうのも楽しいものよ」

「そうだな。日頃土を直接触る事などそうない事だ。ふむ、少しだけ暖かいのだな」


 サニターティムの花を摘み取り、根っこなども引き抜いて別々にした後、花弁を状態変化させて丸薬にする作業の傍ら、マリエッタさんやエルケリッヒさんが率先して、植木鉢に作ったゼンマイを摘んでくれている。

 マリエッタさん達だけではなく、クレアやテオ君、それにエッケンハルトさんも妙に楽しそうだけど……貴族ともなると、むしろこういう事が楽しく感じたりするのかもな。

 公爵家の人達だから、というのもあるかもしれないが。

 ユートさんは、フェヤリネッテと話しながら手袋をして慎重過ぎるくらいに、ゆっくりとカナンビスを摘み取っている。


 別に爆発物でもないから慎重にし過ぎる必要はないんだろうけど、物が物だからそうなってしまうのも仕方ない。

 ぞんざいに扱って、変な事になってもいけないしな。

 特に俺とユートさんは、カナンビスから圧のようなものまで感じるくらい、嫌な物に見えているし。

 あとエルケリッヒさんが言っているように、ゼンマイを作った植木鉢の土は少しだけ暖かくなる。


 もしかすると、『雑草栽培』で作る時ゼンマイの時だけは、少し光を発しているからかもしれないな、理由は全くわからないが。

 光る事自体は、シェリーを助けるためにロエを参考にして作った植物の時にもあったけど、でもあの時のような眩しいくらいの光じゃない。

 ともかく、特殊な物なのは間違いないんだろうな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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