発光丸薬の効果が断定されました
「……異世界からなのと、ギフトを持っている。なら、ティルラちゃんは……」
「クレアちゃん達と同じように緑色の葉っぱに見えるだろうね。ギフトは関係ないけど、妖精のフェヤリネッテにもそう見えているはずだよ。遺伝とかでギフトを持っているだけじゃ駄目なのは、僕が確かめてる。だから、異世界から来てギフトを持っている人物ってね。わざわざギフトを理由にしているけど、実際は異世界から来たっていう部分なだけかもしれないけども」
「まぁ、ギフトがあっても異世界というのがなければ駄目なら、単純に異世界からってだけの可能性の方が高い気はするけど」
異世界からこの世界に来た場合、必ず何かしらのギフトを持っているのだから、どちらでもいい事ではあるけど。
とにかく、ただギフトを持っているというだけではカナンビスの葉が青く見えたりはしないって事だけは、間違いないらしい。
一瞬、色がどう見えるかで、異世界から来ている人なのかどうかを判別するのに利用できそうだ、と思い浮かんだけど、そもそも異世界からという人その物が少ないうえ、カナンビス自体が禁止されている物だ。
持ち歩くわけにはいかないので、絶対使えない方法だった。
「僕は本当に危険な物を見分けるために備わっているというか、そういう条件になっていると思うんだ。地球から見たらこちらが異世界だけど、色々と違うからね」
「見方としたら、ギフトがこちらの世界でもやっていけるための能力と考えると、カナンビスの葉の色が違うように見えるのは、危険感知のためってところかな」
ラモギやロエのように、見た目が近くても違う効果の物があるからな。
カナンビスは大麻を知っていれば、そうそう手を出したりはしないと思うが……それでも、危険感知のためにそう見えると思えば納得はできるかもしれない。
ギフトの内容に関しては、以前自分でも考えていたように本人の願望みたいなのが影響している気はするけど。
「ただ、さっきみたいにはっきりと色の違いで見える事は本当に稀な事でね、ちょっと体に悪影響がある物では何もわからなかったりとかもするんだ。それこそ、致死性のある物でもわからなかったり……万能ではないというか、何をもって危険だと判断しているかとかわからないし、それを信用しすぎるのは止めた方がいいと思うよ」
「……違いを意識していれば絶対安全ってわけじゃないんだ。わかった。とりあえずはそういう事もある、くらいに考えておくよ」
「そうだね、それがいいと思う」
全ての危険な物がわかるとかじゃないって事だろう。
体に悪いだけじゃなく、本当に危険な物でもクレア達との見方が変わらない物もあるらしいから、信用しすぎないように注意しよう。
とりあえず、わからない物などは誰かに聞いたり調べたりして、不用意に摂取したりはしないってところかな。
気を付けて今までそんな事はないけど、『雑草栽培』で変な物ができる可能性はこれからもずっとあるんだから……役に立ってくれたけど、疲労回復薬草とかも偶然できた物だし、同じように作れてしまった物で毒になるようなのができないとは限らないから……。
「タクミさん、ユート様は何を……?」
「いやまぁ、ちょっとね。後で話すよ」
「そうですか……わかりました」
ユートさんとの内緒話を終えて元の場所に戻ると、気になったのかクレアから質問されたけど、とりあえず誤魔化しておく。
まぁここで話したら内緒話の意味がないし、それはクレアもわかっているのか、すぐに納得してくれた。
それは他の人達もそうで、マリエッタさんは詳しい事を知らされていないけど、なんとなく色々と察している節があるし昔からユートさんと知り合いなら当然ともいえるだろう……ずっと見た目とかも変わらないんだし。
エッケンハルトさんやエルケリッヒさん、テオ君は事情を知っているしなんとなく話せない事もあるんだろう、とか思っていそうだ。
「さて、話が逸れちゃったけど……そろそろわかったかな、フェヤリネッテ?」
話を元に戻すためでもあるんだろう、そう言ってユートさんがフワフワと浮かんで皆の頭上を行ったり来たりしているフェアリネッテに、話しを振った。
「んー……あ、丸薬の効果が切れたのよう。ふむふむ……これは、うーん……成る程なのよう!」
うんうん唸りつつ、独り言を呟いていたフェヤリネッテが目を大きく開いて、俺やユートさんの方へと飛んで来る。
様子から察するに、何かわかったみたいだけど……。
「はっきりと、カナンビスに対してサニターティムの丸薬が効果を打ち消しているのが、体の中でわかったのよう!」
「おぉ……」
嬉しそうに俺の顔の前でそう報告してくれるフェヤリネッテに、俺だけでなくエッケンハルトさん達、部屋にいる皆が湧き立つ。
これまで効果があるかどうか、推測も混じった言葉しかなかったのに断言までしたのだから、それも当然か。
カナンビスで何か問題が起こっても、これで対処は可能になるという事だからな……一番は何も問題を起こさせない事だけど。
「はぁ……タクミ殿に頼んで、こうして実際に作ってもらった甲斐があったな」
「そうですね。ありがとうございます、タクミさん」
「まぁ、最終的にはフェヤリネッテに判断してもらいましたけど……でも、わかって良かったです。まだほかにも調べないといけない事はありますけど、提案を受けた甲斐がありましたね」
エッケンハルトさんやクレアを始め、皆から感謝される。
以前なら謙遜するだけにしておいたけど、自分に自信が持てるように……というクレアとの話があったから、それだけでは終わらないように気を付ける。
こういう事から、少しずつだな。
「フェヤリネッテの体の中かぁ。そのモコモコした毛の中ってどうなっているんだろう?」
「変なところに興味を持つんじゃないのよう!」
そんな中、ユートさんがフェヤリネッテに不思議そうな目を向けて手を伸ばしているけど、フェヤリネッテは飛んで逃げている……何をしているんだか。
扱っている物が物だから、自然と皆重い雰囲気になってしまうけど、空気が軽くなるのはありがたくはあるけども……。
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