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葉の色の見え方で意見が分かれました



「小さい頃によく食べたのよう」


 完成したカナンビスをみてそう言うフェヤリネッテ。

 幼い頃って意味なんだろうけど小さい頃と言われても、俺達からすると今でも十分小さいぞ。

 十数センチくらいの毛玉みたいなものだし……と、今はそんな事はいいか。


「それで次に……」


 カナンビスに釘付けになっている皆の様子を窺いつつも、別の植木鉢に手を伸ばし、今度はサニターティムを作る。

 この場は、カナンビスを作る事が目的ではなく、その効果やサニタ―ティムが実際どう作用するのかなどを調べるためだからな。


「じゃあ、フェヤリネッテ」

「承ったのよう!」


 手早くサニターティムの花弁を摘み取って、『雑草栽培』で状態変化。

 ここにはフェヤリネッテを除いて人間しかいないため、発光丸薬を作るのは状態変化で発光させられる俺だけだ。

 そうして、カナンビスの葉も摘み取り、発光丸薬と一緒にフェヤリネッテへと渡す。

 ちなみに、なんとなくカナンビスを素手で触るのが躊躇われたため、用意していた手袋……畑作業などで使った軍手に近い物を装着してからだ。


 なんというか、ズモモモモ……というのか、カナンビスからは触れちゃいけない物だという迫力というか、オーラのような物が見える気がするからな。

 目の錯覚かもしれないが、もしかするとこれがエルケリッヒさんの言うような異様さで、マリエッタさんが言う触れてはいけない絶対的な存在感、なのかもしれない。


「んぐ、んぐ……こっちは甘くて、あっちはスッキリサッパリ、美味なのよう!」

「甘いのか……」


 カナンビスの葉と、サニターティムの発光丸薬を順番に口へと含むフェヤリネッテ。

 こっちと言ったのはカナンビスで甘いらしい……発光丸薬のスッキリサッパリもよくわからないけど、魔力が整うのだからそう言う事もあるのかもしれない。

 ただ甘いらしいカナンビス、言われてみれば仄かに甘い香りが漂ってきている気がしなくもないかな。

 部屋に充満するという程ではないし、本当に微かになんだけど……その香りで誘って、強烈な依存性をもたらすとかだろうか。


「どうだ、フェヤリネッテ?」

「もぐもぐ、なのよう。もう少し待ってなのよう。じっくり体内で調べるのよう」


 感想というか味ではなく効果を聞いてみるが、すぐにわかるものでもないらしい。

 体内で調べるという感覚は俺にはわからないが、特有の何かがあるんだろう……俺だけでなく、エッケンハルトさん達も早く結果が聞きたいようで、落ち着かない様子だけどここは待つしかないか。


「……はぁ。フェヤリネッテが食べてくれたから、カナンビスに見えていたオーラというか、可視化されかかっている雰囲気? みたいなのがなくなってちょっと安心、かな」


 とりあえず、待つ間ずっと緊張していても疲れるだけなので、胸に溜まった空気を押し出すように溜め息を吐いて呟く。

 茎と土の内部にある根だけになったカナンビスからは、完成してから感じていた触れてはいけない感覚というものはなくなっていた。

 俺が警戒しすぎだったから、そう感じていただけなのかもしれないが……と思っていたんだけど。


「やっぱり、タクミ君にもあれが見えていたんだね。あんなのが見えちゃうと、僕らは絶対手を出さないと思うんだけど……まぁ他の人には薄っすら見える? 感じる? くらいだから、仕方ないのかもねぇ」

「ん? 見えてるって……もしかして、カナンビスの葉を覆っていた嫌な雰囲気とか感覚とか……」

「んむ? ユート閣下もタクミ殿も、何を言っているのだ?」

「カナンビスを覆う、とは何でしょう?」

「え……?」


 ユートさんの言葉に首を傾げていると、エッケンハルトさんやクレア達が、俺を見て首を傾げた。

 ほとんどの人が首を傾げているこの状況、結構シュールだな……というのはともかくだ。


「えっと、青いカナンビスの葉を覆うようにこう……なんというか嫌な気配みたいなのが渦巻いて、触りたくないなぁって感じといえばいいのかな? マリエッタさんが言っていたように、触れてはいけない絶対的な存在感みたいな?」


 説明が難しいけど、感覚的にはそうだとしか言えないような、なんとも言えない嫌な感覚と見た目だった。

 あれなら、毒々しいサニターティムの花弁をそのまま口に入れる方が、全然マシだと思うくらいだ。

 両方の効果を知らないとしても。


「タクミさん……何を? カナンビスの葉は、緑でしたよ?」

「え……緑? いや、青い葉だったはずだけど……」


 キョトンとしたクレアの言葉に、こちらこそキョトンとしてしまう……見れば、エッケンハルトさん達も何を言っているんだ? と言わんばかりの表情で俺を見ていた。

 でもさすがに、俺の目がおかしくなったとかではない限り、カナンビスの葉は青いと断言できる。

 それくらいはっきりした青だった。

 それこそ、青い空とか青い海よりも濃い青で、絵の具のようでもあったくらいだ。


「あー、うん。タクミ君、僕にも青に見えていたんだけどね、他の人には緑に見えるみたいなんだ。どちらが正しいのかはわからないけど、人によって見え方が違う……というか、特定の条件に当てはまる人だけ違うように見えるみたいなんだ」

「それじゃ、俺が青く見えたのって……」

「その条件に当てはまったからだね。サニターティムの丸薬のように、発光する物は珍しいって言ったけど、それ以上に珍しい物があるんだ……それこそ天然記念物みたいに」

「あれが天然記念物って言うのもなんか嫌だけど、成る程」


 例えはともかく、とにかくかなり珍しい物の中にはそういった人によって見え方が違う物があるって事か。

 しかしその特定の条件って一体……と思ったら、何やら俺の服の袖を引っ張られる感覚。


「ちょいちょい……」

「ん……?」


 口で言いながら、俺を皆から離れた場所に袖を引っ張ったまま誘導するユートさん。

 内緒話がしたいって事みたいだ。

 って事は、もしかして……。


「……特定の条件っていうのは、ギフトを持っている事だと僕は思ってる。正確には、異世界から来てギフトを得た人物、かな」


 やっぱり、ギフト関係の話だった。

 この場にはカナンビスの事も含めて、口外するような人はいないけど……一応マリエッタさんには明かしていない事でもあるから、離れて内緒話にしたんだろう。

 クレアには許可を取ってユートさんの事を話したし、エッケンハルトさんやエルケリッヒさんとテオ君は元々知っているから。

 一応、ユートさんも明かす条件は最低限守っているんだなぁ、なんて感心している場合じゃないか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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