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1726/1997

エッケンハルトさん達は何かを相談していたようでした



「でも、光っているのも少しの間ですし、少し扱いが難しいですね……作って保管ができないわけですから」

「それは確かにそうだね。うーん、丸薬自体はただ花を丸めてこねればいいだけだし、すぐできるから保管自体は花のままか、それとも発光する直前くらいにしたような物の状態でってのが良さそうだね」


 長期間保管できないかもしれないという事はつまり、販売などもできないという事だ。

 これまで作って観察した丸薬は、長くても数分程度しか発光していなかったし、それじゃランジ村内ですら売れない……村の人達に売るつもりはないとしてもだ。

 まぁランジ村の中だけなら、作っておいたサニターティムを処方する際に丸薬にし、すぐ使ってもらうとかくらいはできるだろうけど、他の場所ではできない。

 商品にする話は今のところないが、禁止されていてもカナンビスが使われる可能性を考えれば、少数でも出回らせておいた方が保険にはなるかもしれないのになぁ。


 とりあえず、花の状態などでどれくらい保存できるのかなど、まだまだ調べて行かないといけないことは多いな。

 人間が発光させる事ができない時点で、作り終えた物以外を保存しておく意味は小さいかもしれないが。


「だがそれだけではなく、予防だったか? そちらの方の効果もあるのかを調べねばならんな」

「あー、そうですね……」


 そう言えば、そちらも重要な事だった。

 前もってサニターティムの発光丸薬の効果を受けておけば、カナンビスの影響を受けないかどうか……。

 こちらは特に、森の調査をやってくれているフェンリル達が再び参加できるかどうか、という判断にも関わるから保存とかよりも先に調べないといけないな。

 ちなみに今日もルグレアさん達による調査隊は森に行っているし、昨日……じゃなくてもう一昨日か、完徹したのもあってちょっとあやふやになっているけど。


 その事もあってさらに気を引き締めていたようだけど、フェンリル達は調査に参加していない。

 またカナンビスの薬がばら撒かれていて、調子が悪くなったらいけないからな。

 ルグリアさんやパプティストさん、それにフィリップさん達調査隊は、フェンリルがいないとさらに地道で広範囲を調査するのは時間がかかりそうと難しい顔をしていたけど。

 とはいえ皆納得してくれているし、むしろフェンリル達がまた戻してしまうくらい調子を悪くしないためだから、と言ってくれてもいた。


「予防は確かにできれば望みたいところですけど……そちらはさすがに調べる方法がないんですよね。――フェヤリネッテも、それはわからないか?」

「予防っていうのは今日教えてもらったあれの事なのよう? 魔力を整える効果がある以上、多少なりともあるとは言えるけど……どれくらい続くかとか、あれを受け付けなくするかどうかまではわからないのよう。今わかるのは……」


 一応フェヤリネッテに聞いたけど、さすがに予防効果までは詳しくわからないみたいだ。

 最低でもサニターティムの発光丸薬、それによる魔力を整える効果……魔力調整効果ってとこかな、それが続く限りはカナンビスの影響は受けないだろうって事くらいか。

 体内に取り込んだフェヤリネッテ曰く、魔力調整効果は発光丸薬が光っている時間ほぼそのままくらいしか続かなかったらしい。

 その程度の時間だったら、予防効果とは言えないため、魔力調整効果が切れても予防するための何かがあるのかどうかを、なんとか調べてみないといけないか。


「ふむ……仕方ないか。クレア」

「そうですね、お父様。タクミさんなら、問題ないと私が保証します」

「それは私も同じ意見だし、私も保証したいところだな」

「ん?」


 何やら、エッケンハルトさんが腕を組み、険しい表情をしていると思ったら、急にクレアと示し合わせたように話をしていた。

 どうしたんだろう? と思い首を傾げていたら、二人が同時に俺へと顔を向ける。


「今朝方、父上や母上、そしてクレア。ユート閣下とも話していた事なのだが……タクミ殿、これはあくまで提案であり、タクミ殿が嫌がるようなら断ってくれて構わない。だが、色々な側面から調べるため、この方法が手っ取り早いのだろうとなってな……もちろん、タクミ殿が断るのであれば他の方法を模索するし、これしか選択肢がないわけではないというのだけは知っていて欲しい」


 そう前置きをするエッケンハルトさん。

 何か提案というか、俺に頼みたい事があるっぽいけど……二人の真剣な表情を見るに、ただ事ではなさそうだ。

 エッケンハルトさんを始めとした五人で話し合ったって事か。

 ……だから今日は、朝に弱いエッケンハルトさんが朝食にいたのかもしれないな。


「私は、どちらかというと反対なのですが……せっかく、タクミさんが自身の力について前向きに考えて下さっているのに。ですが、ゆっくり調べるよりも今は早く結果を求めた方が良い、というのもわかります。なのでタクミさん、この提案はあくまで一案であり、断って下さっても構いません」

「えーと……?」


 さらにクレアまで真剣な表情でそう言ってくる。

 エッケンハルトさん達の雰囲気が変わったからか、エルケリッヒさんやマリエッタさんもこちらに真剣な表情を向けていた。

 ユートさんだけは、リーザやティルラちゃん、それにレオがラーレやコッカー達と丸薬作りに挑戦しているところを楽しそうに眺めているようだけど。


「少し耳を借りるぞ……クレアの言った提案と言うは……」

「……ふんふん。って、えぇ!?」


 あまり周囲にいる人達には聞かせたくないんだろう、俺に対し小さく耳打ちするエッケンハルトさんから、提案の内容を聞いて前置きされていたにも関わらず大きく驚いた。

 まさかエッケンハルトさん達からこんな提案が来るとは思わなかった……それだけ、今回の事が重大な問題だと認識しているからだろうし、俺もそうだけど。

 ただそれは……いやでも、為政者側である人達からの提案であり、日本人としての俺に近い感性もほんの少しくらいは残っているユートさんからでもあるらしいから、問題はないのかもしれない。

 エッケンハルトさんから提案された事によって、俺の脳内はしばらく驚きと共にでもだってという言葉が浮かんでは消え続けていた――。 




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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