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1721/1997

サニターティム作りを開始しました



 パプティストさんと話していると、屋敷の方から夕食の準備ができたと呼びかける使用人さんの声が聞こえた。


「あ、そろそろ夕食みたいですね。それじゃ、パプティストさん」

「はい、私の話を聞いて下さって、ありがとうございます。フェンリルとは別に、心が少し軽くなった気がします」

「それなら、聞いた甲斐がありましたね、良かったですよ」


 そう言って、もう少しフェンリルといるらしいパプティストさんに笑いかけてから、離れた。

 俺を呼ぶためだろう、リーザ達がこちらに向かっているからな。

 話しを聞いたばかりだから、フェンリルに抱き着いているパプティストさんには、あまり注目を集めない方がいいだろうし。

 何はともあれ、具体的な解決策とかを俺がだせるわけもなく、ほとんど話を聞くだけに終始したけど……別れ際のパプティストさんの声は、最初と違って明るかったから、少しは元気になってくれたんだろうと、安心した。


 夕食の方は滞りなく進み、一部の人がフェンリル達の様子を窺ったりと、馴染んできているのを実感。

 パプティストさんはいつの間にか兜を被って顔を隠していたけど、それを気にする人はほとんどいないので、多少は気楽に過ごせているようだったな。

 ユートさんの方をチラチラと見ていたので、いずれ話しをするんだと思う。

 とりあえずルグレッタさんには、ルグリアさんとも一緒にパプティストさんの事を伝え、もしユートさんが変な事を言いそう、もしくはやりそうになったら注意して欲しいとは伝えておいた。


 ちなみに、ルグリアさんの方は隊長をしているだけあってか、副官のパプティストさんの事情をよく知っているみたいで、そちらでも気にかけておくとの事。

 ただ、余計な事を考えないよう走り込みをさせるべきか……とも呟いていたのは、パプティストさんの予想通りで俺は余計な事を言ったかもしれない。

 夕食後は、すっかり元気になったフェンリル達やレオに見守られながら、ティルラちゃんやエッケンハルトさんと素振りなどの鍛錬の日課。

 庭を外壁に沿ってパプティストさんがフィリップさん達と、重そうな鎧を身に着けたまま走っていたのは……気にしないでおこう。


 しかし、なんでフィリップさん達も一緒だったのか。

 もしかすると、ルグリアさんから話しを聞いてエッケンハルトさんも協力しているのかもな。

 そうして、昼にぐっすり寝てしまったので思うように寝られるか不安だったため、クレアと安眠薬草のお世話になった翌日……。


「ワクワク……さてどんな薬草ができるのかなー?」

「見た事のない植物みたいだから、楽しみなのよう。ワクワクなのよう」

「……すっかり、仲良くなったなぁ。いや、餌付けされたのもあるんだろうけど」


 朝食後に、今の屋敷に住み始めてからは遠のいていた、鍛錬と同じ日課だったはずの薬草作りを再開させ、それが終わってからの事。

 ユートさんやフェヤリネッテが仲良くワクワクと口にするのを聞きながら、サニターティムを作る試みだ。

 すっかり仲良くなったユートさんとフェヤリネッテは、魔力球で餌付けされたからだろうか……イタズラに近い事が好きな妖精らしさと、同じくイタズラが好きそうなユートさんで波長が合ったのかもしれない。


「さて、と……」


 他にも、クレアやエッケンハルトさん達が見守っているんだけど……まぁカナンビスに対抗できるかもしれない薬草だし、重要度も高いから気になるのも当然だろうな。

 レオやリーザ、ティルラちゃんなども、今だけはフェンリル達とじゃれ合う事なく、庭の真ん中にいる俺に注目しているし、多くの使用人さん達、従業員さん達も同様だ。

 サニターティムという薬草を作ろうとしているというのは皆に伝えてあるが、さすがにカナンビスに対処できる薬草だというのは秘密にしてあるけどな。


「……パプティストさんじゃないけど、さすがにこれだけ注目されると緊張するなぁ」


 なんて、ちょっとだけパプティストさんの気持ちを理解できた感じになり、呟きながらセバスチャンさんとヴォルターさんが調べてくれたサニタ―ティムに関する資料をもう一度読み返す。

 とはいえ、絵がある事以外はあまり情報が多くなく、紙一枚にも満たない内容は数分とかからず読めた。

 それらを頭に叩き込みつつ、描かれている絵を頭の中で思い浮かべながら、地面に手を突く。


「……」


 『雑草栽培』で頭に思い浮かべたサニターティムを作れるよう、無言で集中。


「……ゴクリ」


 誰かが喉を鳴らす音が響くくらいの静寂の後、ゆっくりと顔を出す植物の芽。

 それが大きくなり、伸びて花を咲かせた。

 絵の通り、少しだけ菜の花に似たような形の花が咲いたが、色は紫に黒い斑点模様という毒々しい物だった。


「なんというか、サニターティム自体が毒草と言われても不思議じゃない見た目だ」


 とりあえず『雑草栽培』の結果に「おぉ……」と少しだけ湧くエッケンハルトさん達を尻目に、作られたサニタ―ティムを見ての感想。

 葉や茎は平均的な植物と変わらないんだけど、花の毒々しさはとてもじゃないけど薬草と言えないように見える。


「これを、薬草と言われても口にするのはなるべく避けたいような、そんな見た目ですね……でも、身を守るためなのか、そういう見た目でも実は食べられる物とかもありますから」

「そうだね。確かにキノコとかでもそういった話は聞いた事があるし」


 素人判断はダメだし、キノコなどにそういった意志があるのかは謎だけど、毒々しい見た目でも食べられる物だってある。

 逆に見た目そのまま毒があったり、綺麗で食べられそうな見た目でも毒があったりもするから、結局は見た目に騙されないようちゃんと判断する必要があるってだけの事かもしれないが。


「へぇ~、これがサニターティムかぁ。昨日会議で資料の絵を見た時からだけど、なんだか見た事がある気がする……どこでだったかな?」


 ふんふんと声を漏らしながら、観察しているフェヤリネッテと一緒にサニターティムを見ながら首を傾げるユートさん。


「もしかしたら、菜の花の事じゃないかな? 形はそっくりとまでは言わないけど、ちょっと似ているから」

「あぁ、多分それだね。そうかぁ、菜の花かぁ……あれはもうちょっと可愛い感じだったのに、こっちは毒々しいね」

「別物って事なんだろうと思う。それに似ているだけで、菜の花と同じってわけでもないようだから」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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