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1720/1997

自由な妄想は世界を問わないようでした



「日々それらを相手にするうちに、私に注目している女性達……婦人方が多かったのですが、ある日その方達が罪人を捕まえている場面を見て、ひそひそと話している内容が聞こえてしまったんです。それがその……」

「あー、えっと……それはなんと言ったらいいのか……」


 パプティストさんが教えてくれた、婦人達が話していたのは根も葉もない噂。

 まぁ要は、ゴツイ荒くれ者を鍛錬に打ち込んだ実力で抑え込んだパプティストさんだけど、それを見た女性の妄想が爆発したわけだ。

 曰く、捕まえたならず者を手籠めにだのなんだの……パプティストさんが責めだとか、誘い受けだとか、俺にもよくわからない言葉が出てきた。

 さらにそれだけじゃなく、同僚の兵士といるのを見られたり、街の人と話しているのを見られても妄想や噂されたり等々……相手が男女問わずそう言った噂の的になってしまったのだとか。


 もちろん、全ての女性がそうというわけではなく、一部で数自体は多くないみたいではあるけど。

 一度知ってしまえば再び気になる人の視線や噂話ってわけだ。

 なんというか……少しは俺も感じているんだけど、ユートさんとかフィリップさんと距離が近い時、一部の女性が盛り上がったりしていたり、視線が気になる時がある。

 それをパプティストさんは多くの婦人達から受けていた、というわけだ。


 日本では、腐女子、貴腐人と呼ばれている部類の人達から……。

 俺も話には聞いた事があるし、まぁ人の趣味をどうこう言うつもりはないんだけど、いざ標的にされるとどうしたらいいのかわからなくなるもんだ。

 これはさすがに、どう声をかけていいのか迷ってしまうな……気の持ちようではあるとは思うけど、噂自体はパプティストさんがどうにかできる事でもなさそうだし。

 というか、この世界にもそういった趣味の世界ってあるんだなぁ。


 いやまぁ、趣味とは限らず男性が男性を、女性が女性を好きになる事だってあるだろうし、それを否定する気は全くないが。

 ……趣味の方で言えば、もしかしたら誰か地球から来た人が持ち込んだとか、広めた考えなのかもしれない。

 ユートさん……は、特殊な趣味をお持ちではあるけど、女性と結婚していたらしいし違うとは思うけどな。


「……えーっと、それで結局はあまり変わる事はできなかった、と」

「はい、そうなります。結局人の目が気になり、不安になってしまうので目も合わせられず、さらにそれに対して自己嫌悪して……の繰り返しで悪循環です」

「それはまた……」


 女性達を責めるわけにはいかない……というか、責められない。

 根も葉もない噂を注意する事はできるかもしれないが、実際に何かをやったわけでもないし、そもそもどこの誰がそういった妄想をしているのかもわからないし。

 誰かわからないし、考えるだけなら犯罪というわけでもないからってだけだけど。

 いや、相手によっては不敬罪とかあるのかもしれないが……。


「まぁなんというか、そういうわけで……私は一人でいるか、顔を隠している時が一番落ち着くようになったんです」

「成る程。それじゃあ、これからもできるだけパプティストさんの精神衛生上、できるだけ兜を被っている事は気にしないようにした方が良さそうですね」


 できれば改善した方がパプティストさんのためになるのかもしれないが、無理強いしてさらに悪化したらいけないしな。

 俺にできるのは、場に合わないのに兜や鎧を身に着けていても、気にしないようにするくらいだ。

 あと、顔を見せている時のパプティストさんに近付いて、妄想するタイプの女性に見られたりしないようにするとかくらいか。


「……っ!」

「ガァゥ?」

「タクミ様、どうかされましたか……?」

「ホッ……いえ、なんでもありません」


 考えて、ふとキョロキョロと周囲を見回し、ホッと一息ついて不思議そうにするフェンリルやパプティストさんに首を振って誤魔化す。

 遠くではしゃいでいるリーザやティルラちゃん、レオやフェンリル達を見守るクレアや使用人さん、それに従業員さん達がいるくらいで、誰も俺やパプティストさんに注目している人はいなかった。

 今の場面を見られたら、何か変な勘違いをされるかも? と思ったからだけど、どうやら大丈夫だったみたいだ。


「そうですか? はぁ……でも、ユート閣下ではありませんが、ここは本当にいい所ですね。私にあまり注意が向きませんし、こうしてフェンリル達に癒される事ができますから」

「ガゥ」


 フェンリルに抱き着いて、その柔らかい毛に包まれて癒されているパプティストさんからは、本当に安らいでいるという雰囲気が伝わってくる。

 まぁ注目をあまり集めないのは、使用人さんが多く、それらの人は俺やクレア、それからエッケンハルトさん達公爵家の人等々、使用人としてみていなければならない人が多いからかもしれない。

 騎士はともかく、護衛兵のフィリップさん達もいるから、鎧を着た人にも慣れている人達が多いし。

 あと、レオやフェンリルといった、他にはいないような存在が多くいるのも大きいか。


 こう言うのもなんだが、早い話が美形というだけでは目立てないって事だな。

 ある意味、パプティストさんにとってはいい環境なのかもしれない……疲れたり、落ち込む事があってもフェンリルに癒される事もできるし。


「あぁ、そう言えばユートさんの事ですけど」

「うぅ、一度お話して謝っておかねばなりませんよね、やはり」

「あーいえ、そういう事ではなくて。ユートさんはパプティストさんには全く怒っていないと思いますよ。俺が言っても納得できないのなら……」

「タクミ様のお言葉ですから、納得できないわけではありませんが……」

「そうですか? でもまぁとにかく、今そうしてフェンリルに抱き着いている姿のままでいいので、ユートさんと話してみるといいと思います。怒られたりはしませんし、きっと笑顔で話してくれますから」


 いやむしろ、大爆笑しながら話すかもしれないな……ユートさんの事だ、フェンリルに抱き着いているパプティストさんを見て、怒るなんて事は絶対にないはず。

 からかわれたり、パプティストさんがさらに落ち込むような事を言わないか、というのは心配になるが、その辺りはルグレッタさんに任せればいいと思う。


 姉のルグリアさんの副官とも言える人だし、そういった気遣いはできる人だ。

 ……後で、俺からも言ってお願いしておこう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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