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1716/1997

フェンリル達から感謝されました



 ――あれから、多少の打ち合わせなどを経て会議を終わろうとした時、俺やレオのお腹が鳴って完全に空気が弛緩。

 よく考えたら、俺もクレアもレオも、厩舎で夜を明かしてからすぐに休んでからの会議だったため、食事をしていないからお腹が空いて当然だ。

 クレアが、レオの大きなお腹の音を聞いた後赤くなって自分のお腹を押さえていたので、もしかしたら同時になっていたのかもしれない……ちょっと可愛かったけど。

 それはともかく、夕食の準備を急がせるというライラさん達を部屋から見送り、各々が執務室を出て完全に解散。


 まぁこれから先、ちょくちょく会議をしなければいけない可能性はあるけど、とりあえず今日の所は終わりだ。

 念のため、夕食を待たず休むらしいセバスチャンさんとヴォルターさんには、疲労回復の薬草と安眠薬草を渡しておいた。

 エッケンハルトさんが、安眠薬草をねだっても来たけど……不眠症とかではない限り、あまり頼るのは良くないと言って断ったりもした。

 エルケリッヒさんも興味がありそうだったけど、疲れていないのに薬草を使うのはちょっとな。


「はぁ、さっきは凄かったなぁ」

「そうですね……まさかユート閣下があそこまでお怒りとは……」


 気分転換に、クレアやレオと一緒に裏庭へと向かっている途中、大きく息を吐きながら呟く。

 クレアも似たような様子だ。

 ユートさんの事を教えたのもあって、さらに怖い思いをしてしまったのかもしれない。

 行ってみれば、現国王様より偉い人とも言えるからなぁ……普段はちょっと困った人くらいなんだけど。


「ワフ? ワッフワフ」


 そんな俺達に、レオが首を傾げた後しっかりしろと言うように鳴く。


「レオは平気だったみたいだけど、俺達はさすがに……堪えたよ。初めてに近いし」

「ワフゥ」


 怒られる事なんて、これまでの人生でいくらでもあったが、あれはそれとは違うからな。

 激しくはなく、静かな怒気……いや殺気かな?

 無意識に体が震えて、意識しても止められないなんて初めてだから仕方ないだろう。

 そんな風に、ぐっすり寝て休んだはずなのに疲れてしまった体を引きずるようにして、クレア達と裏庭に出た。


「あ、パパとママだ! パパー、ママー!」

「姉様ー!」

「おっと。ははは……リーザ、ティルラちゃんと楽しくやってたか?」

「ティルラの笑顔が、ちょっと羨ましいですね」


 屋敷の庭に出た途端、すぐ俺達に気付いたリーザが耳と尻尾を動かし、全力でこちらに駆けて抱き着いて来る……足音とかで出て来たってわかったんだろうか。

 それに少し遅れて、ティルラちゃんも俺達の方へと駆けて来ている。

 それを見るクレアは、先程の執務室での事を引きずっているんだろう、少し苦笑して迎えていた。

 まぁ、あのユートさんの醸し出した雰囲気は、触れないでいられるなら触れない方がいいからなぁ。


「フェリー達がね、一緒にいてくれたんだよ。それでね、パパ?」

「うん、どうしたんだ?」


 レオが俺と一緒にいたため、代わりにフェリー達がリーザといてくれたんだろう……近くにラーレやコッカー達もいるから、一緒に遊んでいたんだろうな。

 そんなリーザは、抱き着いていた俺から離れると何か言いたげに上目遣い。

 うん、可愛い……じゃなくて、どうしたんだろうか?


「あのね、フェリー達がね、パパにお礼を言いたいんだって」

「フェリー達が?」

「うん。昨日のね、パパとママ、それからクレアお姉ちゃんにお世話になったからって」


 要は、群れの長としてフェンリル達の事でお礼を言いたいんだろう。

 そう言えば今朝は、元気になったフェンリル達を見た後すぐ、屋敷に戻って休んだからな。

 フェリー達と話す機会も持たなかったし。


「あー、成る程」

「私はタクミさんやレオ様と一緒にいただけで、何もしていないんですけどね……」


 納得する俺の横で、クレアは苦笑いだ。


「でも、クレアも一緒にいて俺は助かったから。だからクレアもって事でいいんじゃないかな?」

「そうなのでしょうか……?」

「ワフ、ワッフワフ!」


 俺もクレアと一緒にいられて、話もできたし助かったと思っている。

 クレアもフェンリル達を優しく撫でていたし、それで心が安らいだフェンリルもいるんじゃないだろうか。

 という事で、レオの後押しもあってフェリーの前に俺とクレアが立ち、すぐ横にレオがお座りをする。


「グルゥ、グルルゥ。グルァオォォォォォォン――!!」

「「「「ガウォォォォォォォン――!!」」」」

「キャウゥゥゥゥゥゥ――!!」


 立っているフェリーが合図を送るように鳴き、俺達に頭を下げた後空に向かって大きく遠吠えをする。

 それと同時に、フェリーの後ろに集まったフェンリル達……昨日体調が悪くなって完治したフェンリルだな。

 それらフェンリルがフェリーと同じく空に顔を上げて遠吠えをすると、さらに屋敷の外壁の外から複数のフェンリル達が遠吠えを開始した……まさしく、遠吠えの合唱みたいなものだな。

 遅れて、フェリーの背中に乗っていたシェリも吠えたけど、次は合わせられるように頑張ろうな。


「ふふ、人とは違いますけど、こういう感謝の伝え方もあるのですね」

「そうだね。遠吠えは狼や犬にとっては、コミュニケーションみたいなところもあるから。多分フェンリルや近い魔物もそうなんだろうと思う。前にもあったからね」


 以前レオと一緒に、俺とクレアが心を通わせたお祝いに、と遠吠えをして祝福してくれた事もあったっけ。

 ともあれこれがフェンリル式の感謝なんだろう、ちょっと近くで大きな遠吠えを聞いて、少しだけ耳が痛かったりもしたけど。

 それでも、俺がレオの鳴き声で、クレアがシェリーの声で、何を言っているのかわかるのとは違って単なる吠え声ではあったけど、フェリー達が感謝をしたいという気持ちは伝わった。

 示し合わせていたのかもしれないが、基本的にフェンリル達は穏やかに過ごしていたら吠える事もほとんどないからな……鳴き声を上げるくらいはしょっちゅうだけど。


「うん、フェンリル達が元気になってよかったよ。フェリーも心配していたもんな?」

「グル? グルゥ……」


 感謝を受け取り、手を伸ばしてガシガシと撫でつつ、フェンリル達が戻したりしていた時の様子を口に出すと、プイッとそっぽを向くフェリー。

 照れたのかもしれないな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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