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1713/1997

ユートさんも真剣な様子でした



「まぁこちらの思惑もあるから、ついでに利用させてもらおうってわけでもあるんだよ。それに、国として禁止しているはずの物を、どう入手したのか……しかも実際に薬にして使っている。薬にするというのは僕には知らなかった。そちらの知識を求めていなかったからだけど、そんな知識を犯人はどうやって得たのか、というのも引っかかっているんだよね」

「……ユート閣下、それはつまりどこかの貴族が関わっている可能性がある……と?」


 エッケンハルトさんが片目を閉じ、口に手を当てながら問いかける。

 また、貴族が関わっている可能性……か。

 アンネリーゼさんの父親、バースラー元伯爵がオークやら病やらを公爵領にけしかけ、ちょっかいどころか人的被害すら出そうとしてお金を儲けようとしていた事件。

 どうしてもあれを思い出す。


 ユートさんはともかくとして、エッケンハルトさん達公爵家の人達と関わっていると忘れそうになるけど、貴族も千差万別で、善人もいれば悪人もいる。

 だから何かしらの目的を持って、悪事を働くような貴族だっていておかしくない……というか、日本で触れる物語ではそういう貴族が出る事の方が多かった気がするくらいだ。

 公爵家だけでなく、公爵領の人達も優しい人が多いし、つい善人ばかりに思えてしまったりもするんだけど。


 ……スラムを牛耳っていたディームや、ヴォルグラウに酷い仕打ちをしていたデウルゴ、それ以外にもウルフを利用しようとしていた集団もいたみたいだし、悪人だってちゃんといるんだ。

 心情としてちゃんとはいて欲しくないけども。


「可能性としてあり得なくはないよ。どこに群生しているか、それこそ禁止されている以上情報も出回らないようになっている植物。その入手方法なんて、一般の民よりも貴族の方があり得るだろうからね。まぁ、絶対ではないけど……だから貴族達に協力させる事で、こちらからおかしな動きをしないか見てやるんだよ」


 もしどこかの貴族が今回の事に加担していたら、協力してもらう動きの中で不審な事をしでかす可能性がある……とかそんなところだろう。

 どうも、俺は人の裏を探るとかは苦手なのでこういった話はよくわからないというか、あまり乗り気にはなれないけど。

 でも、わからないようならわかるように仕向ければいい……という考えも理解できるので、止める事はしない。

 というか俺が言っても止められないだろうし。


「……ですがそれは、さすがにやり過ぎではないでしょうか? いくら大公爵……貴族の爵位最上位の閣下でも、王家の方々や陛下がなんと言うか」


 そう言うのはパプティストさん。

 相変わらずというか、皆の注目を集める可能性があるため、今もフルフェイスのヘルメットを装着して表情は見えないけど……なんとなく声の感じから諫めよう、止めようとしているんだろう。

 王家、つまり王族は貴族の頂点だけど、特別枠というかトップに君臨するとして王家を貴族とは別の扱い、とする考え方もある。

 どちらにせよ王族、そして王様は国のトップである事には変わりないんだけど……ともかくパプティストさんは、そういう意味で大公爵は貴族のトップと言っているんだろう。


「そちらはなんとでもなるから、大丈夫だよ。まぁあまり大きな声では言えないけど、それができるだけのコネがあると思ってくれていいよ」

「コネ、ですか……王家の方々が納得されるのなら、私に言える事はありません」

「ふぅ……」

「はぁ……」

「まぁ、コネとも言えるか」


 完全に納得したわけじゃないけど、半分くらい誤魔化しの入ったようなユートさんの言葉に引き下がったパプティストさん。

 近くで、ルグリアさんやエッケンハルトさんが溜め息を吐き、エルケリッヒさんは息を吐きながら小さく呟いて納得している。

 まぁユートさんの詳細を知っていたら、大公爵と言うだけでなく王家にも言う事を聞かせられるというのは理解できてしまうんだろうな。

 エルケリッヒさんが呟いたように、確かにコネと言えなくもないかも?


 ちなみに、ルグリアさんは第二とはいえ近衛騎士の隊長だからか、ユートさんの事……初代国王で建国者、ギフト所持者である事などを知っているらしい。

 ただ、パプティストさんは副隊長という立場だからか知らないんだとか。

 だから、今もパプティストさんが苦言を呈……したのかな? まぁ止めようとしたのもわからなくもない。

 前貴族、しかも王家も含めて一斉に協力させるなんて、命令するように言われたら、知らないと止めようとするのも当然だろうな。


「……ここでは例外として、客ではなく本来のテオドールとして発言する事をお許し下さい」

「うん、本当にここだけなら、いいよ」

「ありがとうございます、おおてて……じゃない、ユート様」


 立ち上がり、ユートさんに恭しく礼をするテオ君ことテオドール君。

 頷いて許可を出すユートさんに、深く頭を下げた……途中で間違えて大父様おおててさまと言いかけたのは、ちょっと失敗したみたいだけど。

 そうして、顔を上げた頃にはいつもオーリエちゃんやレオ達と遊んで、俺とお風呂で一緒になった時には自信なさそうにしていたテオ君の顔ではなく、為政者としての表情、雰囲気を纏わせていた。

 これが本当のテオ君……君というのはいささか不敬かもしれないから、テオドール様、テオドール殿下、かな?


 別に、レオ達と遊んでいる時の顔が、繕ったりした物ってわけじゃないけど。

 あれも子供らしい、年相応のテオ君としての顔ってところだろう。

 ともかく、テオドール殿下……口に出すと色々と察しつつも隠している意味がなくなるから、実際にはテオ君と呼んでおく事にするけど……あんな表情や雰囲気も出せるんだなぁ。

 俺とは違うどころか、それこそ育ちが違うという意味をはっきりと目の当たりにしている感じだ……先祖にあたるユートさんとはまた違うけど。


「パプティスト、国や民を害する可能性のある事だ。余がここにいる以上誰にも文句は言わせん。何も心配する事はないぞ」

「は……はっ! 承知いたしました! 差し出がましい事を、申し訳ございません!」


 テオ君の豹変とも取れる、急な殿下モードに一瞬だけ戸惑ったパプティストさんだが、鎧のガシャガシャという音と共に跪いて謝罪した――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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