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1709/1997

カナンビスの影響を改めて聞きました



 書物に関して、検閲が不十分なのはある程度仕方のない事だと、ユートさんが言っていて納得したけど……そもそもカナンビスが何か、という事に関しての記述は残さないようにしているらしいし、偶然そうなっているとかみたいだ。

 危険な植物であるという認識はなく、ただ単純に調合をしてできる薬の研究としての成果などが、調べた本に書かれている事が多かったとか。

 まぁその辺りは古い本があったり、この国で発行された本以外も混じっているようなので仕方ないとして……。


「問題は、フェンリルにも効いてしまう程強い薬ができてしまう事だな」

「カナンビスの成分というか、効果もわかりましたけど……それだけ強い効能の物が使われたって事は、狙ってやっている可能性が高い、ですよね?」


 しかめっ面のエッケンハルトさんに、頷きながら答える。


「そもそも、人が作る薬がフェンリルに対してどこまで効果があるのか……そこらの魔物ならまだしも、フェンリルだからのう。ハルトもその辺りを危惧しているのだろう」

「そうね。フェンリルはレオ様のようなシルバーフェンリルという、全ての頂点とは言わないまでも、魔物の中でもかなりの強者。それを害する程の効果の薬を作れるのは、恐ろしいわ」


 エルケリッヒさんとマリエッタさんが言いたいのはつまり、強い魔物であるからこそ強い効果を示す薬が作れるのは脅威だという事だろう。

 魔物は、種族的な強さによって魔力の多さとかその他色々な強さにも繋がっているらしい。

 それこそフェンリル相手なら人間には劇薬となる物でも、意味をなさないとか。

 魔物の中でも身体的にも魔力的にも強いフェンリルが、あれだけ体調を悪くするんだから、使われたカナンビスの薬の強さは推して知るべしってところだろう。


 偶然どういう物か知らず、カナンビスを入手して調合してできた物ではなく、狙って作った物だというのもそこからわかる。

 そもそも、カナンビスが偶然手に入るかどうかも怪しいしな……禁止されている植物を、街中で知らず知らずに入手するなんてあり得ないだろうし。

 どこか自然に植生した群生地を見つけた可能性、とかならあり得なくはないか? まぁなんにせよ、目的はともかく狙って作ったのだろうというのは想像に難くない。


「まずはおさらいしようか。カナンビスの怖さを、皆にも共有しとかないとね」

「わかった。えっと……」


 いつもとは違い真面目な……それこそ俺とクレアが厩舎から戻って来た時、からかおうとしていたような雰囲気が一切ないユートさん。

 そのユートさんに促されて、カナンビスその物の確認をしつつこの場にいる人達と共有。

 念のため、ここで話した事に関しては同じ屋敷にいる人達であっても、口外禁止となっている。

 禁止されている植物、言ってみれば違法薬物という強いワードの出て来る物だからな、仕方ない。


 カナンビスは、森の奥などに群生している事があり、この国では発見次第焼き払うなどの対処をする程危険視されている植物。

 基本的に、調合をして薬にしなければ人間にしか影響を及ぼさず、さらに食べるなどで体内に入れない限りは意味をなさないらしい。

 焼き払う時に毒が発生する事はないらしい……ここから考えるに、カナンビスその物は取り扱いを間違えなければ対処は簡単って事だろう。

 触るだけで危険な植物、という程じゃないから。


 その辺りは、俺が知っている日本での物とそう大差はないみたいだな。

 あれも、意外と自然に群生している事がある地域、なんてのもあるらしいし……当然所持は禁止だし、見つけたら行政に連絡を入れる事前提だが。


「カナンビスの毒性は、魔力を乱す事。フェンリル達は昨日見た通りだけど、表面上に現れる症状としては人間もそう大きく変わらないね」

「魔力が乱れる事で、体内の不調を来すって事かな」

「うん、そうだね。そもそも魔力っていうのは……」


 と、ユートさんが魔力に関して、カナンビスの毒性によって引き起こされる症状について話す。

 半分以上確認事項ではあるけど、魔力に関してという部分は知らない人も多かったらしく、部屋にいる人達も驚いていた。

 俺はユートさんの魔法講座である程度聞いていたけど、そこまで体の調子と魔力が密接に関わるとまではあまり知られていないらしい。

 ぼんやりとは、感覚やら何やらで知っていたりはするみたいだけども。


 ともあれ、カナンビスの毒性。

 魔力を乱し、嘔吐や胸やけを強くしたような不調にさせる……ただし、摂取してすぐは高揚感があるとか。


「まぁ高揚感があるからといって、安易に手を出す人はそう多くないよね。絶対に不調になる物なんだから。致死毒のある物じゃないし。ただ問題はその依存性。精神的にも肉体的にも、一度摂取したらその高い依存性でどうしても求めてしまう事を止められない。僕は人間での場合しか知らないけど……」


 その依存性は、意識しているか無意識なのかに関わらず、とにかく求めてしまうものなのだそうだ。

 一度や二度摂取しただけで、その先ずっと体が変調を起こしたままというわけではなく、当然人間の体は排出しようとして徐々に浄化されていく。

 だから、見つけたらすぐにこれ以上摂取しないようにすれば、助かる人も多いようだけど……。


「気付いたら摂取しようとしていた、もしくは摂取していた。なんて話もあるね。だから、拘束して絶対に自由にさせない事が重要だ。それでも、強い依存性に負ければ暴れるし、色々と自傷行為をし始めたりと……まぁ要は、欲求が強くなりすぎて自我が崩壊するみたいなものだね」

「……そこまで、恐ろしい物だったんですね」

「厳しく取り締まっているのもあって、私ですら摂取した者を見た事はありませんが……」


 ユートさんの話を聞いて、多くの人が絶句する。

 カナンビス自体は知っている人が多くても、そこまでの物というのは知らなかったという事もあるようだ。

 暴れるとか、自我が崩壊か……さすがに想像する事しかできないし、それでも足りているかどうかはわからないけど、だからこそ昨日ユートさんは壊れるって表現を使ったんだろう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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