使用人さん達によってレオ達のお世話が開始されました
「あぁ、ちょっと待っててなレオ。えっと……アルフレットさんか、ライラさん。もしくは他の誰かいますかー?」
立ち上がってのっそりと動き、こちらに来ようとするレオを手で制してお座りしてもらい、伝声管を使って使用人さんを呼ぶ。
ほとんど使う事がない、というか大体はこちらから呼ばなくても誰かがいてくれる事が多くて慣れないけど、なんとか同じ階にある使用人さんの待機室に繋げた。
魔法具が組み込まれているらしく、一応特定の部屋に繋げて相互で声を届ける事ができる、電話で言うと内線みたいなものだな。
まぁ、完全に声を遮断できるわけではないので、大きな声を出せば以前にマリエッタさんが怒った時のように、伝声管が繋がっている別の部屋にも聞こえたりするんだけど。
リーザを起こさないように、小さめの声で呼びかけたから、今回は大丈夫だろうけども。
「失礼します」
「早いですね、アルフレットさん。って、チタさん達も?」
「はい。リーザ様やレオ様のお世話が必要かと思いまして」
一分立つか経たないかというくらいで、伝声管に応えてくれたアルフレットさんが、桶にお湯やタオルなどを持って入室。
さらにその後ろには、チタさんやジェーンさんなど数人の使用人さんを従えていた。
……早いのはいいけど、起きたレオを撫でる余裕もなかったな。
「ありがとうございます。――それじゃ、皆来てくれたしリーザを起こそうか」
来てくれた人達にお礼を言いつつ、リーザを起こすためにベッドへと近づく。
こんなに人が増えた部屋の中でも、よく寝ているのを起こすのはちょっと気が引けるけど、時間が時間だから仕方ない。
「ワフ。ワフワフ?」
「レオが起こすのか? まぁ、チタさん達がいてくれるし、いいか。じゃあお願いしよう」
「ワッフ」
レオが起こしたいと主張したので、任せる事にする。
まだマルチーズだった頃、俺もよくやられていたけど……レオが起こす方法ってあれだよなぁ。
レオは多少夜通し起きていたり、寝ている時に絡まった毛を梳かすくらいだろうけど、リーザの方は顔を洗ったりする必要があるだろうし、それはチタさん達がやってくれるようだし、いいかと思って許可を出す。
「ワフ~ワウ! ワーウ、アーウ……」
「にゃふ、にゃふふ……んー?」
俺が思っていた通り、レオが意気込んで鳴いた後リーザの顔に鼻先を近づけて口を開け……大きな舌で顔を舐め始めた。
途端に見ていてわかるくらいべたべたになるリーザの顔。
リーザの方は、眠りが深いのかくすぐったそうに笑い声のようなのを漏らした後、耳をピクピクっと動かしてうっすらと目を開ける。
うん、まぁレオが人を起こすならこうだよな……俺もよくやられた。
仕事の疲れで爆睡していたら、散歩に連れて行って欲しいとか構って欲しいとかで、舐めて起こすんだ。
深い眠りである程に、生暖かいあの感触などなどで驚いて起きるんだ。
リーザは俺みたいに驚いてはいないけど……。
「おはよう、リーザ。目が覚めたかい」
「んー、おあよう……パパ、ママ。ふわぁ」
「ワフ!」
目を開けてぱちくり、さらに猫が顔を洗うような動きをした後目をこするリーザに挨拶。
むこうも、寝起きで少し舌っ足らずになりながらもちゃんと挨拶を返してくる。
ちゃんと目が覚めたみたいだな。
「おはようございます、リーザお嬢様。では旦那様、ここからは私達が」
「はい、お願いします」
チタさん達が、俺のとは別のお湯が入った桶や櫛などを手に持ち、颯爽とリーザやレオへと向かう。
これから、毛を梳かしたり髪を梳かしたりなどなど、色々と身支度を整えてくれるんだろう……いつもは部屋の外に出て移動してからだけど、今回はこのままやるみたいだ。
「さて俺は……と」
それなりの人数になった部屋でというのは、ちょっとだけ恥ずかしいけど、そうも言っていられない。
というか、お世話してくれる使用人さんだし、気にする必要もないだろうとアルフレットさんからお湯の入った桶を受け取って、俺も身支度を開始。
そうしながら……。
「アルフレットさん、あれから何かあったりはしましたか?」
「いえ、一度デリア様が様子を窺いにきたくらいで、それ以外は特に。クレア様もまだ起きられておりません。あと、ライラさんは図書室の方に行っております」
「図書室に?」
身支度をしながら、寝ている間の事を聞いたんだけど……まぁデリアさんはリーザの家庭教師に付いてだな。
すっかりさぼってしまった形だから、後でリーザと一緒に謝ろう、怒っているとかではないようなのは助かった。
それから、クレアはまだ寝ているのか……まぁ、俺と違って慣れない徹夜だったろうし、仕方ないだろう。
それはともかく、何故ライラさんが図書室に行っているんだろうか? いや、いけないわけじゃないし、ライラさんだって本を読む事もあるだろうけど。
「ヴォルターさんとセバスチャンさんが、こもりっきりですので無理をし過ぎないためですね」
「ヴォルターさんはわかりますけど、セバスチャンさんもですか? いてっ」
アルフレットさんと話していると、髭剃りにちょっとだけ失敗して顎に鋭い痛みが走った。
T字のカミソリがないから仕方ないし、あれでも起こらないわけじゃないけど、この痛みにもずいぶん慣れたもんだ。
「はい。昨夜、旦那様方がフェンリル厩舎に入った後ですが……」
痛みと傷を鏡で確かめる俺に、アルフレットさんが厩舎に俺達がこもった後の事を教えてくれる。
なんでも、ユートさんやエッケンハルトさん、それからエルケリッヒさんとマリエッタさんも、カナンビスが関わっている事で顔を突き合わせて何やら相談していたらしい。
多分、取り締まりとか今後の事に関する話だと思うけど……それなのに、ユートさん達は早朝に俺達をからかいに来たのか……ある意味、気分転換というか真剣な話をしていたからこそなのかもしれないが
ともかく、その後エルケリッヒさん達からできるだけこの屋敷にある書物からだけでも、カナンビスに関する情報を洗い出すよう伝達されたとか。
それで、セバスチャンさんがヴォルターさんと一緒に図書室にこもっているのか、納得した。
ヴォルターさんの方は、昨日フェンリル達の所に駆けつける前に、俺から調べるよう頼んでいたからっていうのもあるだろうけど――。
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