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1706/1996

リーザのおかげでたっぷり寝られました



「そうだ! 眠い時はねぇ、えっと……ママはこっち! それで、んしょ。パパはここ!」

「え、あ、うん」

「ワフ……?」


 何かを思いついたリーザは、俺とレオを誘導。

 レオはベッドのすぐ横、俺はベッドへ横になるよう促した。

 休めって事かな……なぜか俺が横になるよう示された場所は、ベッドの端に近い、つまりレオとも近い場所だけど。


「それでね、えっとね……んー! ふぉうふぁな、ふぁふぁ、ひゃひゃ!」

「おおう、これはなんとも……」

「ワ、ワフ……」


 そしてリーザが俺の横でうつぶせになり、二本の尻尾の片方を俺に、もう片方をレオの顔に被せた。

 うつぶせになって顔もベッドに押し付けているから、ちゃんと喋れていないけどそれはともかく。

 ふわふわしたリーザの尻尾の毛が、俺の顔を包んでなんとも言えない安らぎを感じる……レオの毛を枕にしたのとはまた別の感覚だ。

 レオの方は、俺と違ってちょっと困ったような声音の鳴き声が聞こえるけど。


「ふはぁ! えっとね、いつも皆がリーザの尻尾とか耳とか、嬉しそうに触るから。こうしたらパパもママも喜んでくれるかなって。ちょっとくすぐったいけど……にゃふ」

「気遣ってくれたんだな、ありがとうリーザ」

「ワフ……ワフワフ」

「えへへ~」


 リーザの尻尾や耳は、レオやフェンリル達とはまた違った感触なのもあって、使用人さん達に大人気だ。

 まぁ俺も、リーザを撫でる時は耳も一緒に撫でていたりもするからな。

 ともあれそれを覚えていたリーザは、俺達が疲れているのを察してこうしたら元気になる、見たいに考えてくれたんだろう。

 その気持ちが嬉しく、またリーザの尻尾が気持ちよくて、先まで悪い大人達によってもたらされた疲れが全て浄化されていくような気分で、リーザにお礼を伝える。

 レオはさすがにそうではなくちょっと困っていたようだけど、それでも気持ちが嬉しかったんだろう、リーザにお礼を伝えるように鳴いた。


 そうして、リーザの気遣いと尻尾という他に類する物が決してない枕……と言っていいのかわからないものに包まれて、頭の中を覆う眠気にあらがう事ができなくなる。

 意識が薄れ、体が沈みこむような感覚と共に、就寝した。

 尻尾の感触だけでなくリーザの気持ちが嬉しくて、もしかしたら安眠薬草より良く眠れるかもな……なんて考えながら――。



「んに……んにゃ……」


 耳元で何かの声がして、意識が浮上していく。


「ん……? リーザか。あれから寝ちゃったんだな」


 目を開けてみると、すぐ隣にリーザの顔があり気持ち良さそうな表情と共に、声を漏らしていた。

 寝る時に顔のほとんどを覆っていた尻尾は既に離れている。

 俺とレオが寝た後、リーザも寝てしまったんだろう……それから、寝返りというか寝ているうちに動いてこうなったってわけだ。


「ふわぁ……んーと……」


 リーザを起こしてしまわないよう、ゆっくりと体を起こしてベッドを降りる。

 ベッドのすぐ横でレオが足を投げ出して横になったまま寝ていたので、ちょっと踏みそうになったが……今のレオを踏んでも、起こしてしまうだけで痛がったりしないのかな?

 いや、シルバーフェンリルになってからも、くつろいでいるレオの尻尾を踏んでしまった時は痛がっていたから、そうでもないか。

 まぁ尻尾は特に敏感な部分だからってのもあるだろうけど。


「昼過ぎ……夕方に近いくらいだから、結構寝ちゃってたんだな」


 置いてある時計を確認すると、短い針が三時を過ぎたあたりだった。

 地球だと、四時から五時くらいだろうか。

 寝る前に時間は確認していなかったが、朝食前には寝ていたはずだから……大体七時間から八時間くらい寝ていたと思われる。

 普段とそう変わらない睡眠時間だし、リーザのおかげもあって体の疲れは感じないくらい熟睡できたようだ。


 途中で起こされていないという事は、フェンリル達の体調なども大丈夫で特に何か問題が起こっているわけではないだろうしな。

 起こしても起きなかったって事ではないはずだと思う。

 俺はともかく、レオはすぐ起きそうだし。


「んにー。んにゃんにゃ」

「ワム……ムニャムニャ」

「はは、夢で何か食べているのかな? レオもリーザも同じ夢を見ているとか? さすがにそれはないか」


 ベッドで寝ているリーザと、そのベッドの横で寝ているレオがほぼ同時に、口をモゴモゴと動かしながら小さい寝言のような声を発する。

 どちらも、何か食べているように見えてちょっと面白い。

 夢がリンクとか、同じ夢を見ている……という事はないとは思うけど、似たような夢を見ているのかもしれない。


「寝る子は育つ……かな」


 お昼寝を通り越して、随分ねているけど……健やかに寝息を立てつつ、時折むにゃむにゃしているリーザを見て、そう呟く。

 起こすのを躊躇ってしまうな。

 とはいえ、このまま寝かせ続けていると夜寝られなくなるかもしれない、既に手遅れかもしれないが。

 最終手段は安眠薬草という手があるけど、できれば頼りたくないしなぁ。


 というか、今日はデリアさんの家庭教師の日だったと思うけど、そちらは良かったのだろうか……。

 場合によっては、俺もデリアさんに怒られよう……怒るような人でもないとは思うけど。


「まぁ、俺が身支度を整える間くらいは、寝かせていてもいいかな。っと、さすがに朝と違ってお湯の用意はされていないよな」


 とりあえず起こすのはもう少し後にするとして、寝起きの身支度を済ませようとして部屋の外を見てみたけど、さすがにお湯の用意などはされていなかった。

 いつ起きるかわからないのに、冷めてしまうお湯の用意がされているわけもないか……冷めたら都度用意するなんてのも手間だし。


「えーと、伝声管の使い方は……」

「ワウ……?」


 起きた事を伝えるのも兼ねて、あまり使う機会のない部屋にある伝声管を使おうとしていると、レオがのっそりと起き上がった。

 俺が独り言を呟いていたり、部屋の中を移動する気配や音で起きてしまったようだ。


「あ、レオ。起こしちゃったか。おはよう……でいいかな?」

「ワファ~ウ。スンスン……ワッフ」


 起き上がったレオは大きな欠伸をしながら、前足を突っ張って伸びをした後、ベッドで寝散るリーザを確認……というか臭いを嗅いだ後、俺に顔を向けて小さな声で鳴いた。

 起きた挨拶のつもりだろう、小さい声なのはリーザを起こさないようにか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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